153 なにがいけないのか
ちゃぶ台返し。
つまり、今まで作ったもの全部がテーブルごとひっくり返された状態である。
私も詳しくは知らなかったが、ヤマトクニ出身のトモエが教えてくれた言葉だ。
「そんなー、ひどいのだー!!」
「ひどい目にあったのは私の方です!!」
じっさいこのパラケルスス達のポンコツスマートハウスのせいで私は全身ガタガタのひどい目にあった。
まだ耐久度の高い私なので大問題にはならなかったが、もしこれが耐久度の低い魔族なら下手すれば病院送り、再起不能になりかねない欠陥だった。
まあセンスの悪い音楽や、調度品、システムは目をつむったとして、それでも見過ごせないのはポンコツの欠陥だらけのシステムだ。
せり出すテーブルとか倒れてくるベッドなんてものは、使い方とシステムの安全性を確保できれば便利に収納、利用できるが……これがもし安全性が無い状態で使うと、ペチャンコになったり大怪我したりしてしまう危険性がある。
このシステムが確実に使えるためには、安全性の完全確保が必須案件となる。
つまり、倒れてくるベッドやせり出してくるテーブルのスピードのスロー化、角の丸く削った無害化などを考えなくてはいけない。
「パラケルススさん、倒れてくるベッドやせり出してくるテーブルのスピードをもっとゆっくりできませんか?」
「えー、仕方ないのだ。ではもっとスプリングやロープとチェーンを安全設定して使いやすくするのだ」
この設定を作り直すだけで安全基準はかなり高くなる。
「アリアさん、角のある家具やテーブルを安全に使うために角を面取りできますか?」
「メンドリ? コカトリスのメスが何や? から揚げでも作るんかいな?」
「違います、面取り。角を取ってぶつかっても怪我しないように作り直すんです」
私の説明でアリアが納得できたようだ。
「なるほどなー。タンスの角に頭をぶつけて死んだりくたばるって事がなくなるっちゅーこったな」
結構物騒なことを言っているが、まあその通りだ。
「わかったで、ウチが家具とか作る際にその角を全部ケガしないようにメンドリすればええんやな。まかせとき。他の連中にも言っとくからな」
「それではおねがいします」
私はアリアにスマートハウスの作り直しを依頼した。
今度こそはきちんと便利な家が作れると良いのだが……。
しかしそのスマートハウスとは一体どういう意味なのだろうか?
「すみません、パラケルススさん。そもそもオートマチックスマートハウスとは一体どういう意味なのでしょうか?」
「えー? テンタンクルス、ひょっとして名前の意味も分からずにこの計画進めていたのか? アホなのだ」
アホの子にアホ呼ばわりされる筋合いはないのだが……。
「わかりましたから意味を教えてもらえますか?」
「わかったのだ。オートマチックとは自動、自分が自ら動かなくても勝手に何かをしてくれる。スマートハウスとはエネルギーを家で勝手に作ってくれて、そのエネルギーを元に家の暖房冷房や灯り、風呂等を沸かしてくれたりする便利な家って意味なのだ」
なるほど、つまりは何でも自動的にやってくれる便利な家という意味なのか。
「それではベッドやテーブルが出てくる仕組みも勝手にやってくれるわけですか?」
「そうなのだ。だから家の屋根の上に魔素を取り込む大型パネルが必要なのだ」
そういうことか、それで家の上に巨大なパネルが大量に置かれていたわけだったのか。
まあ疲れた時だと、何もせずに家が何かをしてくれるシステムは便利かもしれない。
「大体わかりました。ではもう少しかっちりと計画を煮詰めてから良い物を作ってください」
「わかったのだ」
本当にわかっているのかどうかは不安だが、一応は方向性が見えたので私はこの工事計画の予算を見直すことにした。




