15 エッチな事はいけないと思います
書類の山、山、山。いつまでたっても底が見えないほどの書類である。
私はこの書類の山を片付けるためにある方法を使う事にした。
今は猫の手すら借りたい程の人手不足なのだ。
「わが力よ、今こそこの部屋に満ち足りよ!」
そう言うと、私は腕を大きく広げ、指先を伸ばした。
すると、私の指からニュルニュルと何本もの触手が伸び始めた。
「ヒエエエエッ!!」
オクタヴィアが私の出した触手を見て怯えだした。
どうやら、不感症だったとしてもこの触手による拷問はトラウマとして残っていたようだ。
彼女は普段の毅然とした態度とは全く違った女の子のような黄色い悲鳴を上げていた。
「安心しろ、今ここでお前を襲う為の触手ではない」
「そんな事言っても安心できませんっ」
オクタヴィアは涙目だった、鉄の女に見えた彼女もやはり普通の女の子だったのだ。
「触手よ、さらに枝分かれしろ!」
私の触手は四本だった、それがさらに枝分かれすることで12本程の触手が辺りをぬるぬるさせながらうようよしていた。
「キャアアアー! どこ触るのよ!? このスケベー!!」
! しまった! 私の触手は普段のように目の前の女性、今回はオクタヴィアを何本もの絡みつきで拘束してしまっていた!! 形のいい胸が触手によってくっきりわかる形でスーツの上から食い込んでいた。
「さっさと離しなさいよこの変態魔族!!」
「す、すまない。こんなつもりではなかったのだが!」
失敗した、私の触手は私の意思とは無関係に条件反射のように目の前の女性に襲い掛かってしまったのだ!
「こ……これはまずい事になってしまった!!」
「?」
私は、魔王アブソリュート様の呪いで女の子にスケベな事をすると酷い目にあうことになっていたのだ。
今回は不可抗力とはいえ、私の触手の暴走でオクタヴィアを触手プレイ一歩手前のおっぱい拘束までやってしまったのだ!
これはかなりマズイ事になる!!
「え……エエエ! アイェエエエ!!!」
私の体を呪いが蝕んだ!
全身に針を刺したような痛みがいきなり襲ってきたのだ、それも特に下半身に剣山を刺されたような痛みがマックスパワーで襲い掛かった!!
「アギャッガガギャーーガグワー!!」
声にならない拷問が私を襲う、これがアブソリュート様の呪いだったのか!?
「まあ、自業自得ね」
オクタヴィアがとても冷たい目で七転八倒する私を見下していた。
それだけならまだしも、彼女は転がる私を更に足で何度も蹴飛ばしたのだ! この女確実にドSだ!!
「お前には情けというものがないのか!?」
「ありませんよ、女の敵にそんな事するわけないじゃないですか」
そういいながら彼女はさらに書類の山に向かって私を蹴り飛ばした。
「こんな……事……していたらいつまでたっても仕……事終わらんぞー!!!」
「あら、仕事するつもりありましたの、私てっきり仕事を投げ出していきなりアタシを襲おうとしていたのかと思いましたわ」
「そんな事するカー!!」
「するでしょ、アンタ最低変態触手魔族なんだから」
もう開いた口が塞がらない。
彼女の私に対する態度は明らかに敵意むき出しである。
いやもうすでに敵とすら見ずストレス解消用サンドバッグ扱いなのかもしれない。
「私が触手を出したのは仕事に使うためだ!!」
「あらそうでしたの。いきなりアタシを襲うから仕事から現実逃避しようとしていたと思いましたわ」
「あのなぁ……私だっていろいろと考える事あるのよ」
「ヘーソウデスカ」
棒読みで塩対応、私のことなんでまるで興味がありませんという態度むき出しである。
「この触手はそれぞれに今は意思を持たせている。つまりは自我がある状態だ」
「何それ。キモッ!!」
「だからな、この触手を使えば……数人分の仕事はこなせるってわけだよ!」
「あらそうですか、ではさっさとこの書類の山片付けてくださいね」