149 スマートハウスの恐怖
マッサージチェアに痛めつけられた私はヘロヘロの状態で椅子から解放された。
「すまないのだ、今度は風呂なのだ。この風呂はきちんとできているのだ」
「本当ですね、少しは期待して良いんですね!」
私はもうパラケルススの言うことを何一つ信用できなかった。
前回少しだけ回復した信頼はマイナスの底を突き切り、更に底が深くなっている。
「風呂はオートで錬金術の技術でお湯が入れられているのだ。風呂温度は快適なはずなのだ」
私は信用できないまま、風呂場に向かった。
「それでは服を脱がすのだー、ワクワクするのだー」
パラケルススの目がすわってる、いや。服くらい自分で脱げますから。
「だ、大丈夫ですよ。服くらい自分でどうにかできますから」
「それだと困るのだー。コレはあくまでも自分で身動きできなくなってるヤツが使う前提のシステムなのだ。仕方ない、テンタクルルスを動けなくするのだ」
そう言うとパラケルススは私を何かの機械の手で縛り付けながら妙な液体を飲ませた。
「コレはビリビリシビレールというシビレエイのエキスを濃縮して作った液体なのだー、これを飲むとビリビリと体が痺れて動けなくなるのだー」
やめてくださいやめてください。私は今毒耐性無いんですから。
薬を強引に飲まされた私は、その直後体がビリビリと痺れて動けなくなってしまった。
「ガガ……あ、っが……い……」
私は声も出せなくなっていた。
痺れ薬は効果てきめん、私は何一つできず、風呂の脱衣場に座らされた。
「それでは服を脱がすのだー!」
「やーん、エッチやー」
アリアが手で目を隠すふりをしながら指の間からこちらを見ている。
コイツひょっとしてむっつりスケベなのか??
私はスマートハウスの風呂場に生えた機械の腕で服を掴まれた。
ビリバリビリビリッ!!!
私の着ていた服が激しい音と共にただの布切れにされてしまった。
これ結構高かったんですが……。
「あれ? 服を脱がすパワーが強すぎたのだ」
パラケルスス、この服の代金は後でしっかりと弁償してもらいます。
「がが……ぐわぁ……」
声を出したくても出せない。
私は怒りを伝えるにも伝える方法が無く、やるせない思いをしていた。
「仕方ない、風呂できれいさっぱりに洗ってリフレッシュして機嫌よくなってもらうのだ」
パラケルススが何やらよくわからないボタンを押してレバーを引いた。
ゴウンゴウンと不気味な音を立てて、風呂場の腕が動き出した。
腕は私の体の隅々を動き回った。
これがかなりくすぐったい、まるで拷問である。
「!!! んー! ヴゥーん!!」
声にならない声で私はこのくすぐり地獄をやめてくれといいたかった。
だが体を洗う音がうるさく、その声はかき消された。
ゴシゴシゴシゴシとブラシが私の全身を洗ったが、今度は息が出来ない。
このスマートハウス計画は根本から見直す必要がありそうだ。
全身を洗い終わった腕は上から何度も何度もお湯をひっくり返してかけてきた。
このお湯の無駄遣いも見直し対象だ。
そして体を洗い終わった腕はそのまま私をつまんでお湯の中に放り込んだ。
ドボーン!!
当然ながら今の私は麻痺状態で動けない。
そんな状態でお湯に沈めたらどうなるかなんて子供ですらわかる。
しかし、機械はそんなことをわかるわけがない。
「テンタンタンタスー、どうだー。風呂の温度はワシが計算して最高のコンディションにしているので気持ちいいはずだぞー。どうだー?」
私は返事すらできなかった。
もう意識が薄れてそのまま私は風呂の中で気を失った。
「あれ? おかしいのだ??」
ようやく異変に気が付いたパラケルススは風呂にプカーとうつぶせで浮かんできた私を見て気を失っているのにようやく気が付いた。
「大変なのだー! テンタクルスが息をしていないのだー!!」
私が湯船から救出されたのはその後だった。