148 自動センサー完備の凄い家
アリアとパラケルスス、それに土木班達が協力したことで、宿舎の試作部屋が完成した。
「見た感じは普通の家とそんなに変わらないですね」
「フッフッフー、だが中身はもっとも~っと凄いのだ!」
パラケルススが自信ありげに威張っていた。
「まあ実際凄い思うで。なんせウチが手がけた家や」
アリアもパラケルススに負けず劣らずの自信家だ。
まあこのオートマチックスマートハウスってのがどんなものか実際に体験してみることにしよう。
「ではまず部屋に入るのだ」
「では、失礼しますよ」
私は部屋に入ろうとした。
だが、いくら押しても引いても扉はビクともしない。
今の私の力でも本気を出せばこの扉くらいは簡単に壊せるが、それでは意味がない。
「あ、すまんすまん。動力入れ忘れてたのだ」
どうやら家に動力が必要で、それがないとビクともしないらしい。
私は幸先に不安を感じた。
動力を入れると家の中からはグオングオンと謎の異音が聞こえてきた。
本当に大丈夫なのだろうか??
「あの、パラケルススさん? この音は一体何なのですか?」
「これは動力が入ったことで家の中で勝手に掃除機能が働き出したという音なのだ」
こんなすごい音を立てて掃除したら近所迷惑ではないのだろうか……。
しかもこの家は集合住宅になる予定だ。
そうなると全部の部屋から同じような時間にこの音が響き渡る空間になる
何というカオス空間だ!
そんなもの周りの影響的に非常に悪影響なので間違いなく没だ。
これは試作品でよかったと思う。
どうにか修正案を考えなくては。
「テンタンタヌスー。早く中に入るのだー」
「わ、わかりました」
部屋に入った私は入った瞬間床ですっ転んだ。
「ぐべぇ!!」
掃除が行き届いていると言えばそうなのかもしれないが、この部屋は入り口からワックスでピカピカに磨かれていて、足元が滑る部屋だった。
「掃除しすぎでしょ、ワックスがツルツルですよ」
「あ、すまんすまん。どうやら掃除機能に力を入れすぎたのだ」
もう少し加減を考えて欲しいものだ。
そう思いながら私が家の椅子に座ると、椅子から何やら巨大な手が出てきた。
「な、なんですかこれは??」
「コレは自動式マッサージ椅子なのだ。疲れた体をもみほぐしてくれる最高の癒しアイテムなのだ」
椅子から伸びてきた手が私の身体を掴んだ。
そしてその手は思いっきり強力な力で、私の身体をベキバキと激しい音を立ててひねったり叩いたりしてきた。
「グゲェ! ベホッ!! ドグァアアッッ!!」
私はマッサージ椅子の手に全身をバキバキにされた。
「パ……パラケルススー!! これは一体何なんだー!?」
「コレは最高の癒しアイテムなのだ、どうだ、しっかり癒されたと思うのだ」
「どこが癒しアイテムですか!! 痛しアイテムですよコレ!!」
パラケルススが怒っている私を見て不思議そうな顔をしていた。
「えー、なんでなのだ? 最高級おもてなしモードのマッサージにしてたのに」
「あの……パラケルススさん? ひょっとしてレベル調整間違ってませんか?」
「そんなはずないのだ……きちんと標準モードで……あっ」
あって何だ??? どうせまたロクでもないミスをしたのだろう。
「すまなかったのだ、これモードが大型モンスター対応モードになっていたのだ」
「は??? 何ですかそれは?」
「すまなかったのだ、マッサージのモードがオークやトロル、サイクロプスやミノタウロスといった大型モンスター対応モードになっていたのだ」
そりゃあどう考えても中型クラスのサイズの私にはオーバーキルな攻撃力になるわけだ。
「パラケルススさん、モードを切ってください、このままでは私の体が持ちません!!」
「わかったのだ、少し待つのだ」
パラケルススはマッサージチェアの自動モードをオフにした。
最初からこれだとオートマチックスマートハウスに期待できない。
私は巨大な不安感に襲われた。