145 二度漬けしないための工夫
「これめっちゃ美味そうやん!」
アリアが完成した串カツを見て目をシイタケにしていた。
「聞いたイメージだけで作ったので少し違ったらすまないアル」
「んなことあらへん、これほど見事な串カツは初めてやで」
アリアはソースに完成した串カツを漬けて試食してみた。
「これごっつ美味いやん! アンタ最高やー」
「そこまで褒められると照れるアル」
伝聞だけでこれ程のものを作れてしまうウー・マイはやはり料理の天才だと言える
「ではワシも食べてみるのだ」
パラケルススも串カツを試食してみた。
「ちょい待ち、チンチクリンのパラケルスス、アンタ以前二度漬けしてウチにめっちゃ怒られたん覚えとるか?」
「うううー、一応覚えているのだー。だからソースは一度だけつけるのだー」
「覚えとるならええねん」
パラケルススも串カツをソースにつけて食べてみた。
「これは美味いのだ! 何本でも食べれるのだ!!」
二人共試作品の串カツを食べて満足していた。
だが問題はその後起きた。
「あー、もうソースあらへんやん、チンチクリンが漬けすぎやねん」
「お前こそ遠慮してないからこうなったのだーここまでなったら二度漬けも仕方ないのだ」
どうやら不穏な空気が漂っている。
「うーん、コレでは確かに食堂では出せないアル」
「ウー・マイさん。それはどういうことですか?」
ウー・マイがワタシに説明した。
「串カツは作るの自体やり方覚えたら大量に作ることはできるアル。でもソースを漬けるのを全員がやるとなると壺が相当デカいの必要になるのと、どうしても二度漬け禁止を守らないのが出てくるアル。そう考えるとこれはメニューに使えないアル」
「えー、こんな美味いのに没なんかいなー」
アリアがガッカリしている。
それを見たウー・マイが何かを考え出した。
「ソースを漬けるんではなく……漬けてから揚げるのでは」
「アカンアカン、それやったら真っ黒こげになって食えたもんやあらへん」
どうやら試行錯誤の中でアリアは実際にそれをやって失敗したようだ。
「では葉っぱをスプーン代わりにしてそれでソースをかけるってのはどうや? ウチのとこでやってた方法や」
「それだと並ぶ人の待つ時間が無駄に増えてしまいアツアツを食べれないアル」
この方法も結局没だ。
この料理はお蔵入りになるしかなさそうだ。
「そんなー、どうにかしてーなー。アンタ天才料理人なんやろー、チョチョイのチョイで何かええ方法思いつかへんのー?」
「フェッ。ま。まあ考えてみるアル」
ウー・マイは串カツのソースを美味しく食べる方法を色々と考えた。
「姐さん、コレどうするっスか?」
ブブカが皿にこびりついたソースの塊をウー・マイに見せた。
「今それどころじゃないアル……って、これ! これアル!!」
ウー・マイは何かヒントを思いついたようだ。
「少し待ってるアル、今作るアル」
そしてウー・マイは串カツの試作品を再び作ってアリア達に見せた。
「これでどうアル?」
「これでどう……て言われてもなー。見た目が少し大きくなったみたいなだけやん」
「まあ食べてみるのだー」
アリアとパラケルススが串カツの試作品二号を食べてみた。
「!! コレ、中にソースが入っとる!」
「どうなってるのだ?」
ウー・マイが四角い小さいものを見せた。
「コレがソースアル」
「へ? このちんまいのがソース?」
「そうアル。ソースをゼラチンの煮凝りにしたものアル。つまりぶよぶよの塊のソースを具でくるんでころもにつけた後揚げると中の熱でソースが溶けだしてしみ込んで外に出てこないってわけアル」
「これごっつすごいやん! これならソース漬けんで喰えるわ」
どうやらウー・マイの作った串カツはそのまま採用できそうな料理に昇華したようだ。
そして数日後、ウー・マイの日替わりメニューに串カツとモツ揚げウドンが追加されていた。