138 アリアの就職戦線異状アリ
エリザベータに氷漬けにされたアリアとリオーネは起きたファーフニルに運ばれて風呂場で溶かされた。
「ううー、寒いの嫌、寒いの嫌なんやー」
アリアは砂漠の地下にずっといたので冷気を感じたことがなかったようだ。
どうやら寒さは彼女のトラウマになったらしい。
「うー、ひどい目にあったぜー」
リオーネは一応ライオンの獣人なので凍り付いたとしても血が流れだすと元の体温に戻った。
「ご主人様の命令だからオマエらを解凍してやったのですわ。感謝するのですわ」
ファーフニルが風呂場で解凍したアリアとリオーネに服とバスタオルを渡した。
二人は着替えを終わらせて、再び私の部屋に戻ってきた。
「テンタクルスー、とりあえずもう朝だぜ。そろそろ仕事に出る準備した方が良いんじゃねーか?」
「そうですね、ではアリアも一緒に出掛けますか」
「え? ウチ? どこ行くねん」
私達はアリアを連れてバーレンヘイムの庁舎に向かった。
リオーネはウー・マイと一緒に食堂に向かった。
ファーフニルとエリザベータは私と一緒に住民課に向かった。
「え。ウチがこれ書くのかいな。でもウチあいつらに追い出されたんやで。あの恩知らず共のことなんて書きたくないわな」
アリアがへそを曲げている。
そりゃあ女王アリだったのにクーデターで巣を追い出されたデザートアントの女王なんて前代未聞の笑い種でしかない。
「とりあえず、人数はどれくらいいましたか。それくらいは教えてもらえませんか?」
「うーん、ダーリンのお願いならしゃーないわ。ウチの巣におったんはガキ共合わせて大体1200匹ってとこや。そのうち兵隊アリ400m、働きアリ300サボりアリ100にガキ共400ってとこや」
とりあえずアリアのおかげでデザートアント族の巣の人数が把握は出来た。
大体他のデザートアントの巣も同じくらいと考えていいだろう。
想定の人数がある程度に計算できれば、後は実際に砂漠でデザートアントの女王に会って国勢調査に協力させればいい。
「で、次はアリアさんの所属です」
「え? ウチ? ウチって働いた事ないロイヤルニートの女王やで。そんなウチに何やれっていうねん?」
アリアが焦っていた。
デザートアントの女王、レベル的には60近くあるので戦闘特化としても強いとは思われる。
だが、今は別にそれといった戦闘があるわけでもない。
だからといって料理が得意というわけでもないだろうし、下手に料理をさせればあの串カツが毎日続く事になりそうなのでこれもパス。
さて、このアリアにピッタリの仕事は何なのだろうか。
「アリア、貴女はロイヤルニートって言ってるけど、本当に今まで働いた事ないのですか?」
「えーと……大昔、ウチがまだガキやったころ……旦那はんと一緒に飛んだなー。それでたどり着いた場所で旦那はんの子供こしらえて、それからはロイヤルニートの毎日や。たどり着いた場所に巣を作るまでは毎日辛かったでー。でも旦那はんがいたから続けられたんやな」
アリアが遠い目をしていた。
まだデザートアント族の女王になる前に新婚で雄アリと一緒にいた時には働いた事もあるということらしい。
「では、決まりました。アリアさんには住宅課の土木班に就いてもらいます」
「ダーリン……ウチ、どうしても働かなアカン?」
「そうですね。あの宿舎に部屋を用意しますので、その上では公務員という扱いになります。そうなると役所の仕事に携わってもらう必要があるということです」
そしてアリアは住宅課の土木班で工事主任という立場に就くことになった。
「みんな、ウチが新しく現場監督になったアリアや。よろしゅうな!」
現場の連中は美人な現場主任が就任したことでボルテージが上がっていた。
こうしてアリアは土木班主任として働くことになった。




