135 二度漬けは許さへんで
出来上がった料理は、なんとも不思議な料理だった。
「これは……ウーマイさんなら何か知ってるかもしれませんね」
「誰やねん、そのウーマイとかいうん」
アリアがウーマイさんのことを聞いてきた。
「ウーマイさんは私の国にいる料理の天才です。どんな食材でも美味しく食べさせてくれるんですよ」
「ほー、そりゃあ聞き捨てならへんなー。ウチの串カツに勝てるっちゅーんか」
アリアさんが敵対心を剥きだしてきた。
だからといってここに今ウーマイがいるわけではない。
「も、もし気になるようでしたら一度庁舎に来ていただけますか? デザートアント族の住民台帳も作りたいですし」
「わかったわ、ほな明日そっちにちょっくら行かせてもらうわ。あの空飛ぶ船乗せてや」
これで砂漠地区の住民についての情報も入力することが出来そうだ。
サンドイーターに追いかけ回されたりして散々だったが、まあそれも終わったことだ。
「ほなウチの串カツ食ってきや。たくさんあるからなー」
そういうとアリアは何故か緑の葉っぱを持ってきた。
「あれ? これは何ですか?」
「コレはな、串カツと一緒に食うとめっちゃ美味いんやでー。たくさんあるからいくらでもおかわりしてってーや」
「ではワシはお腹ペコペコなので食べさせてもらうのだー」
「串カツはそのソースにつけて喰うんやでー」
そういうとアリアは兵隊アリに何かの器に入った黒とも茶色ともつかない液体を持ってきた。
「コレがソースや。これに串カツつけて食うんや。アーン」
アリアが見本とばかりに串カツにソースをつけて食べた。
「やっぱごっつ美味いわー。コレが最高やねん!」
そう言うとアリアはどんどん串カツをソースにつけて食べだした。
「美味そうなのだ、ではワシもいただくのだ」
パラケルススはアリアを見よう見まねで串カツにソースを漬けて食べた。
「これは美味いのだー! もっと食べるのだー」
そしてパラケルススはソースに再びかじった串カツを漬けた。
その時、アリアの表情が急変した。
「ちょい待ち……チンチクリン。おどれ一体何をしよった……」
アリアの顔がメチャクチャ怒っている。
パラケルススは一体何をしたのだろうか。
「何って……アリアの見よう見まねでソースを漬けて食べたのだ……」
「おどれの目ぇは節穴かー! 誰がソース二度漬けして食っとるんや。おどれをカツにしてソース付けて食ったろか!?」
「ふえええー、知らなかったのだー。許して欲しいのだー」
「まあ一度目やから許したろ、でも次はあらへんからなー!!」
私が先に食べなくて良かった。
どうやらこのソースは一度かじった後はソースを漬けるのがタブーらしい。
「でもー、ダーリンだったら二度漬けでも許すでー。ほら、アーン」
アリアは食べかけた串カツを私に差し出してきた。
いや、流石に食べかけを渡さないで下さい。
ぺしッ
パラケルススが大きな葉っぱでアリアをはたいた。
「何してくれとんねんこのチンチクリン!!」
「お前が汚い食べかけをテンテンテルスに食べさせようとしたからなのだ!」
「なんやて、アンタとは一回ガチでしばき合わないかん思うとるんや。表でーや」
「望むところなのだ! けちょんけちょんにのしてやるのだ!!」
あの、今食事するところだったんじゃないんですか?
「貴女達、いい加減にしてください……!」
私は触手を伸ばしてこのポンコツ二人を縛り上げた。
「しばらくそこで反省していてください」
「後生やー、堪忍してくれー」
「ワシが悪かったのだー、だから下ろして欲しいのだー」
私は触手でブランブランに吊り下げた二人を目の前にして見せしめに食事をした。
「謝るからウチにも食べさせてー!」
威厳も無い女王の失態に働きアリ達は終始無言だった。
アリア達が解放されたのは全員の食事が終わった後だった。