134 アリアのありがとう
自分の巣に戻ってきたアリアは兵隊アリ達を使って巣をどんどん修復した。
中にはサボってるアリもいるようだったが、アリアは怒らなかった。
「どうしたのだ? どう見てもサボってるアリがいるのだ」
「あ、そいつ等はかまへんからほっとき」
「部下を甘やかすのはいけないのだ」
だがアリアは笑っている。
「だからチンチクリンはお子様やねん。生き物にはなー、必要な時があるんやで。その時に動けないといけん奴らがおるんや。アイツらは今はその時やないねん。だからサボっとっても構わへんねん」
「だったらもっと数がいればサボるやつは出てこないのではないのか? ワシはそう思うのだ」
「アカンアカン、数が増えても減っても絶対にサボるアリは出てくるんやで。むしろそいつらがいるからいざって時にウチの一族が生き残れるんやで」
パラケルススはどうも動物や獣は改造しても、その本来の生態などには対して興味が無いのか、アリアの話を聞いてもチンプンカンプンといった感じだった。
「アリアリアリ」
「アリアリ」
「アリィ! アリアリ」
何を言っているのか全く分からないが、兵隊アリ達は忙しそうに働いてデザートアントの巣を修復していた。
「よーし、今回の騒動はワシにも原因があったのだ。お詫びにアントニオくんとワシのゴーレムくん軍団で仕事を手伝ってやるのだー」
頼むから貴女は余計な手出しをしないで下さい。
それが何よりの手伝いです。
「あ、ありがとうなー。でもなー、便利なもんに頼ったらウチらデザートアントはそれが無くなったら何もできんようになってしまう。だから気持ちだけもろとくわ」
アリアの断り方はやんわりと拒否しているようで、余計な手出しをするなと言っているのと同じだった。
「仕方ないのだ、ではワシはこの辺の掃除でもするのだ」
「あ、そこの場所は!」
ガラガラガラガラ……。
積んだか積んだかになっていた荷物が、パラケルススが手を出した事で崩れ、ドミノ倒しに倒れていった。
「アリィ!」
「アリアリアリ!」
パラケルススのせいでまたデザートアント達に余計な仕事が増えていた。
「アホー! だから手を出すな言うたんじゃワレェッ!! いちびっとったら肉団子にして揚げてソースに二度漬けして食ったるぞ!!」
「ひえええー、助けて欲しいのだー」
自業自得です。
貴女は少しくらい反省を覚えてください。
「そういえば腹減ったな、そろそろメシ食うか」
「アリィ」
デザートアント達がアリアの指示で食事の用意を始めた。
どうやらデザートアント達には、独自の料理をする文化が存在するらしい。
「そや、アンタらも食べてき。ウチの特製の串カツとダシうどんや」
「え、ええ。それではいただきます」
「めっちゃ美味いんやでー。他にもミミズ焼きとかあるからなー」
あの、名前から食欲がなくなるそれは何なのでしょうか。
デザートアント達は団子にした肉を取り出し、何かの粉や何かのザラザラしたものに沈めて高温の油に沈めていた。
「ここは良質の油がとれるんや。その油を使って作った料理がウチの特製串カツや。それと団子にならん揚げたくず肉のカスを小麦の粉で作ったウドンに入れたらごっつ美味いんやでー」
アリアが料理を目の前にして目をシイタケのようにしていた。
「ほら、コレがうちらデザートアント族の名物料理の串カツとカスウドンや、後でミミズ焼きもあるでなー」
だからその食欲が失せる名前は一体何なのですか。
「パラケルススー、何やらいい匂いがしてきたのだ」
「そうですね、それでは今日はここでご馳走になりましょう」
「いっぱい食べてきやー、安心しーや。アンタら太らせて食ったりせーへんから」
ジョークにしてもそれはちょっとやめて欲しいです。
そして私達は出来上がった串カツとカスウドンをご馳走してもらうことになった。