131 どうやって動かすの?
サンドイーターが溶岩に沈み自滅したことで、ようやく砂漠に平和が訪れた。
騎竜戦艦に戻った私達を待っていたのは満面の笑みのアリアだった。
「アンタらよーやってくれたやん!」
「は、はは……ただいまです」
アリアは私にギュッと抱き着いてきた。
あの、それやられると間違いなく呪いで痛いの確定なのでやめてください。
だが、今はそれを言えるような雰囲気ではなかった。
「ワシのおかげなのだー。もっともーっとワシを誉めてもいいのだー」
「……おいチンチクリン、アンタには言いたいことが山ほどあるからな、後できっちり覚悟しいや」
アリアの目が笑っていない。
彼女はパラケルススにひどい目にあわされた張本人なので、怒り心頭と言っていいのだろう。
「アリィ!」
「ダァアアー!」
デザートアントの戦士モハメドと、ゴーレムのアントニオががっちりと握手を交わしていた。
この二体は激しい戦いの中で親友になったようだ。
これでようやく砂漠が落ち着いたといえる。
この後することは……移動手段がない。
「パラケルススさん、どうするんですか。こんな砂漠の中で動きが取れないんですが」
「大丈夫だ、問題ないのだ」
確かにサンドイーターを倒したことでパラケルススの信用はマイナスから少し上がったマイナスになったが、それでも彼女のやることなすこと全てに不安しか感じない。
「何が問題ないのでしょうか」
「戦闘巨人ゴライアスからまた騎竜戦艦に戻せばいいだけなのだ」
なんだか斜め上の回答が返ってきた。
でもそれでどうにかできるなら問題はないのかと。
「それではやってみてもらえますか?」
「わかったのだ! それでは動かしてみるのだー! ゴーレムくん十号、起動なのだ!」
だが、戦闘巨人ゴライアスはうんともすんとも言わず、全く動かなかった。
「しまったぁああー! エネルギー切れなのだー!!」
ほら。言わんこっちゃない。
「エネルギー切れ? それは何が足りないのでしょうか?」
「魔導エンジンにオリハルコンパワーが足りないのだー。電気がもっと必要なのだー」
「なんやねんそれ、それじゃウチらここでずっと動けんって事かいな」
「いや、方法はあるのだ。だがそれには膨大なパワーが必要なのだー」
パラケルススが説明を始めた。
「つまりは普段なら魔導エンジンは自己的に動く永久機関状態なので、動き続ける限りは止まらずエネルギーを蓄積できるのだ。だがあのサンドイーターとの戦いで、動力炉が外れてしまったことで、エネルギーの循環が切れてしまい、永久機関が止まってしまったのだー」
いまいちコイツの説明が理解できない。
コイツの中では説明になっているのだろうが、そういう分野を知らない相手にする説明の仕方ではない。
「つまりや、お腹すいた状態で何も食べれずに動けなくなってそのままっちゅーことかいな?」
「少し違うけどその解釈でも間違っていないのだ。動きに必要なエネルギーが循環できないので動けなくなっているのだ」
では、その動きを復活させるエネルギーをどうにか確保すれば、動けるようになるってことなのか。
「ほんで、どうやったらそのエネルギーとやらもっかい手に入れれるんや?」
「アリを貸してほしいのだ」
「は? ウチの兵隊かいな」
パラケルススはいったい何をしたいのだろうか。
私は様子を見てみることにした。
「そりゃあ、ウチが命令出したら何でもやる奴らや。ウチが死ね言ったら喜んで死ぬやろ」
アリアはかなりの暴君なのだろうか。
「まあウチの家族にそんなことせーへんけどな。家族大事にせんで何が女王や、他のデザートアントとか真っ黒なとこもあるみたいやけど、ウチはそんなことせーへんで」
どうやら聞いた話、アリアは暴君ではなさそうだ。
「まあウチの兵隊いじめへんっちゅーなら貸したるでー」
「ありがとうなのだ。では早速作戦を始めるのだー」
パラケルススは騎竜戦艦中央部に怪しげな機械を設置した。