13 パーティーは成り行き任せ
もうダメダメのグダグダがさらに悪化しています
そして、私の就任記念パーティーが始まった。
横にいるオクタヴィアは無表情なままである、だが冷たい目線は相変わらずだ。
「これくってもいいかな?」
「これは俺のだ! 手を離せ」
早速足料理の取り合いをしている連中がいる……お世辞にも民度が高いとは言えない。
だが、問題はそこではない!! まだ並べている最中のつまみ食いでの取り合いなのだ。
コイツらにはルールといったものが無いのか?
「あーんぐり、オラもくう」
そして、小さいのを横取りしていた手前の小鬼を無視して後ろでオーガーと思わしき奴が大きな肉の塊をごっそりと持って行ってしまった。
「コイツらは食う事以外頭にないのか?」
「仕方ありませんよ、こんな機会でもなきゃまともな食事はありませんから」
サラリと何事もないかのようにオクタヴィアが言っていたが、これは通常なら異常事態そのものである。
バーレンヘイムではこのような事が日常茶飯事なのか? と考えると私は胃が痛くなってきた。
「どうかされましたか? なんだか顔色が悪いですが」
「い……いや、大したことではない」
私はプレッシャーやピンチ等といったモノとは無縁である、それだけなんでも機転を利かせて切り抜けてきた自負があるからだ。
しかし、この異常な光景は初めて見たもので頭が混乱しそうになってきている。
「オクタヴィア、ところで私の就任式という事であるが……プログラムのレジュメやパンフ、せめて一枚の紙ですら用意していないのか?」
「そんな物ありません、資源の無駄です」
「はぁ??」
「どうせ書いても読める者はおりませんし、いたとしてもそのために貴重な資源を無駄遣いするわけにはいきません」
私は開いた口がふさがらなかった……ダメにも程があるが、ここは魔王軍末端の軍部ですらあった最低限の規律すら存在しないような場所なのか。
「では……私は就任式でどうすれば良いのだ?」
「さあ、なるようになればいいです。今までもそうなっていましたし」
「それでは主賓として出席する意味がないではないか!!」
「前任者とかそれで済ませていましたよ」
「私はタヌキの置物かなにかか!?」
「まあそれ程度じゃないですか、居ればいいだけです」
……ダメだ。まるで話にならない。
そして時間だけが無駄に過ぎていった。
◆
そして私の就任記念パーティーが執り行われた。
音楽隊が音楽を奏でる、というより不協和音の雑音をまき散らしていた。
聞いているだけで何とも微妙な気分になる、これは音楽と言えるのか?
そして、会場は総督府の中央部の中庭だったが、これがまた酷い。
椅子すらなく、みんな地面に直に座り込んでいて、テーブルも無く真ん中には巨大な軍竜であったであろう肉の塊が置かれているだけだった。付け合わせの野菜等は何もない。
「あのー、オクタヴィアさん、野菜とか付け合わせとかは?」
「そんな高価なものはありません、ここでは野菜は取れませんから」
「はぃ??」
野菜が高い? 普通なら肉の方がよほど高く、肉が食えない貧困層が野菜を食べる物だというのが人間界だけでなく魔界でも常識みたいなものである。
まあ高レベル魔族になると食事は必要とせず、魔素をエネルギーから確保も出来るのだが、やはり味気ないので食事は生きる楽しみと言えるだろう。
「では……普段はどうやって食事を?」
「さあ、なるようになるだけです」
そういうとオクタヴィアは自分用の飲み物をコップで飲んでいた。
「あの……オクタヴィアさん? それは?」
「通販です。私用の栄養ドリンクですから、あげませんよ」
ここまでダメダメだともう何も言えなくなる。
そして、メインの軍竜焼きは……塩味しかせず、しかも外は真っ黒こげで中身はべちゃべちゃの生焼けで生臭くとても食えたものではなかった。
「不味い……何だこれは……!?」
そして、私は挨拶をする間もなくお腹を壊してしまい、医務室に運ばれたまま……主賓不在でグダグダのパーティーは成り行き任せで閉会したのだった。