129 元気があれば何でもできる
ゴーレムの大きさとサンドイーターの大きさの差は、アリとギガンテスくらいの差がある。
もし攻撃を喰らえば一撃でスクラップの鉄くず確定だ。
「オゲンキデスカー!!」
アントニオが吠えた。
サンドイーターを挑発しているのだろうか。
「テンタンクルス、ワシらもゴーレムの所に行くのだ」
「え? 危険ですよ。一体何をしに行くんですか?」
「あのゴーレムくん8号スーパーギガンテックドリルアントニオくんは遠隔操作が出来ないタイプなのだ。そばに居て命令を出さないと動かないのだ」
なんだそれは。
これもとんだ欠陥兵器でないか!
「え……マジですか」
「そうなのだ、だがワシ一人だけでは不安なのだ。だからついてきて欲しいのだ」
もう、マジで勘弁してください。
パラケルススに付き合わされると毎回毎回ロクなことが無い。
私は仕方なくパラケルススに付き合って騎竜戦艦・戦闘巨人ゴライアスから降りた。
「でも一体どうするんですか?」
「ワシがそばで命令を出すのでそれに合わせてどんどん進むのだ。行け、アントニオくん、地面をどんどん掘るのだー」
「ダァアアー!」
アントニオは腕のドリルを下に向け、すごい勢いで地面を掘りだした。
私達はその後ろについて行く形になった。
「凄いのだ、この調子で10000メートルでも掘り進むと間違いなく溶岩にぶち当たるのだ」
「あの、垂直に掘ったとして、どうやって私達は外に出るんですか?」
「……しまったのだぁー! アントニオくん、方向転換なのだ。向きを斜め下に変更するのだー」
「ダアアー!」
このポンコツホムンクルスは私が指摘しなければ溶岩まで垂直に掘り当て、その直撃で私もろとも骨まで溶けるところだった。
まだ100メートルも掘り進んでいなかったので、ここから斜めにすればどうにか山に登るくらいの斜面で地上に戻れる。
私達はアントニオの後ろについて行く形でどんどん地底に潜っていった。
その後ろから大きな地響きが聞こえる。
あれは……サンドイーター!
サンドイーターは私達を捕食するためにアントニオの掘った穴をどんどん広げ、後ろから追いかけてきた。
幸いスピードはさほど速くなかったものの、あまりの巨体に圧倒される。
「どうするんですか、どんどん後ろから迫って来てますよ!」
「わかっているのだ。ワシも焦っているのだ」
焦っているわりにはマイペースである。
まあそれが性格なのだろうかもしれないが、どうも緊迫感に欠けているようだ。
穴を掘っているアントニオに異変が起きた。
「アントニオくん、どうしたのだ!?」
「……」
どうやら機械がトラブルを起こしたらしい。
しかしこのまま動かなければ私達は全員サンドイーターのエサだ。
「パラケルススさん、どうにかならないんですか!?」
「わかっているのだ、少し待つのだ」
そういうとパラケルススは動かなくなったアントニオのそばに行き、強烈な平手打ちをした。
「元気があれば、何でもできるのだー!」
パラケルススの平手打ちを食らったアントニオは、再び動き出した。
「1・2・3ダァー!!」
そして動き出したアントニオは、再び地面を掘り進め、辺りがだんだん様子が変わってきた。
「よーし、地面がどんどん熱くなってきているのだ、そろそろ気をつけないとマグマだまりにドボーンなのだ」
何かパラケルススがものすごく物騒な事を言っている。
パラケルススはアントニオに掘るスピードを緩めるように指示していた。
アントニオはそれを聞き、角度をさらに緩やかな傾斜に変更し、地面を掘り進んだ。
「岩の音が変わってきたのだ、そろそろ大空洞があってもおかしくないのだ!」
ボゴッ!
パラケルススがそう言った直後、アントニオは空洞の溶岩の溜まった池を掘り当て、そのまま落下してしまった。
「ダアアアァァァー」
空洞を掘り当ててしまったアントニオは溶岩の池にどんどん落下していった。