122 久々の呪い
からくもサンドイーターの襲撃から逃げた私達は、騎竜戦艦に全員乗る事が出来た。
「あああー、ウチの巣が、ウチの王国がー」
アリアはずっと泣き続けている。
兵隊アリや働きアリ達は、そんなアリアを見て何も言えずにつっ立っているだけだった。
「これからどーすりゃえーねん、ウチら全員宿無しやー」
デザートアントは大所帯だ。幼虫まで入れると数百数千の大家族になる。
幸い、この騎竜戦艦の収容可能人数は三千くらいまでといったところだ。
デザートアントのサイズは等身大の人間と同じくらいだと言えるので、馬鹿みたいにデカい奴でなければまあここにいるのは可能だろう。
「あの……もし行くところがないなら当面の間、ここにいてくれてもいいんですよ」
「それマジか、アンタ、おおきに。ホンマありがとうな」
アリアが嬉しそうに私にギュッとしがみついてきた。
あの、それやめてください! 貴女女性でしょ。
「か、勘弁してください!!」
「えー、なんでやねん。ウチ結構な別嬪はんやで。それに……もうガキならたくさんこしらえてるから経験もあるんやで」
尚更に勘弁してください!
女性にエッチな事をしたりされたりすると、あの呪いが襲ってくるんです!!
「ダメなのだ! テンタクルルスにエッチなことしたらぜーったいダメなのだ」
「なんやねんこのガキ、ウチの恋路の邪魔しようってのか? このチンチクリン」
「誰がチンチクリンなのだ!? そうじゃないのだ。エッチなことをするとひどーい事になるのだ」
パラケルススが代弁してくれているが、それじゃあまるで伝わっていないようです。
「ヒドイことってなんやねん? むしろエッチいことしたら気持ちいいことちゃうんか?」
ダメだ、コイツもやはり人の話を聞かないポンコツ女だった。
どうして私の周りには、こういうどーしょーもないポンコツしかいないのだ?
「見てればわかるのだ。そろそろ症状が出てくるのだ」
あの、ワクワクしたような感じで呪いが起きるのを待たないで下さい。
そう思っていた時! やはりアレが襲ってきた。
「あぎゃああああああーーっ!!!」
「あーあ、やっぱり始まってしまったのだ」
「な、なんやねん。一体なにがおきたねん??」
私は久々にアブソリュート様の呪いを受けてしまった。
今回の痛みは、全身を小さな虫に食べられているような痛みだった。
一つ一つは痛みが小さいのだが、それが大量に全身を襲っているような痛みだ。
私はのたうち回りながら騎竜戦艦の甲板を転がった。
「なんやねん、コレ。ごっつキモいわー。めっちゃ引くわー」
「コレがテンタンタルスがエッチなことをできない理由なのだ。どうやらエッチなことをしたりされたりすると全身が呪いでヒドイ目にあうみたいなのだ」
「うわー、それってマジヤバいやん」
アリアが呪いで苦しむ私を見てドン引きしていた。
私を襲った呪いの痛みが落ち着いたのは、それから少ししてからだった。
「知らんかったからとはいえ、堪忍な」
「いいえ、まあ大丈夫ですよ」
どうにか痛みの引いた私は甲板でアリアと話をしていた。
「とにかくここにいるにしても、砂漠でまた巣を作るにしてもあのサンドイーターは倒さなくてはいけないですね」
「マジでそれや! アイツだけは絶対にギタギタのボッコボコにしたる、絶対に許さんで」
アリアが憤慨している。
しかしさあどうやって、あのサンドイーターを倒せばいいやら。
「ワシも協力するのだー。この騎竜戦艦、スーパーウルトラグレート……」
「もう名前はいいですから、どうやって戦うか考えましょう」
「うううー、ワシのセリフを止められてしまったのだー」
ふてくされているパラケルススは置いておいて、さてどうやってあのサンドイーターを倒すべきか。
私達は戦艦の作戦指令室に場所を移した。