121 とりあえず、まあ
文字を並べなおすと B級パニック映画
私達は走って走ってアリの巣を脱出した。
目の前には騎竜戦艦があった。
「みんなアレに乗ってください!」
「あわわわわあ、来るー! グラグラボイスがそこまで来とるー!!」
アリアがパニックを起こしている。
とても慌てた様子だったが、それでも働きアリや兵隊アリを先に戦艦に避難させていた。
「ウチは女王や。女王が最初に尻尾を巻いて逃げるわけにはいかんのやー!」
アリアはあんなのでも一応女王のプライドがあるらしい。
それぞれが幼虫やさなぎを抱えたデザートアント達は、アリアの指示に従って次々に騎竜戦艦に避難した。
その数は多く見て千近くいるようだ。
「幼虫やさなぎも全部連れて来れたみたいですね」
「当然や、全員ウチの家族やねん。全員見殺しに出来るわけないやろ!!」
そして全員が避難し終わったのを確認して、最後にアリアが船に乗ろうとした。
「アリアさん、手を伸ばして」
「おおきに、これで助かるわぁ」
その時! 地面を割って巨大なサンドイーターが出現した。
「出たー! グラグラボイスやぁー!!」
驚いてしまったアリアはビックリしてつい、私とつないだ手を離してしまった。
「しまったっ!」
「あああぁー、やってもーたぁー!!」
アリアがどんどん引き離される。
騎竜戦艦はサンドイーターから逃げる為にどんどん上昇しようとしていた。
「触手よ伸びろぉー!」
私は目いっぱいに触手を伸ばし、アリアをがんじがらめにした。
アリアの真下には大きく四つの口を開けたサンドイーターが落ちてくる獲物を待ち構えている。
ここでアリアを助けないと……私達が助けたはずのデザートアントにボコにされて殺されてしまう。
触手に絡め取られたアリアは真下のサンドイーターの口を見て大泣きしていた。
「イヤやー、ウチあんなののウンコになりたくないー!!」
「アリアさん、暴れないで下さい。落ちてしまいますよ!!」
「落ちるんなんてイヤやー。喰われたくないー!!」
半狂乱のアリアはジタバタと暴れている、このままではせっかく絡め取った触手がほどけてしまう。
しかし運の悪い事に、サンドイーターは口の中から触手を伸ばしてきた。
アリアの身体を二つの触手が絡め取った状態になった。
このままでは上下から引っ張られたアリアが引きちぎられてしまう。
そんな中、騎竜戦艦から飛び下りた影が見えた。
「アリィィィィッ!!」
満身創痍のモハメドがアリアを助けるために彼女の元に飛び降りたのだ。
「アンタ……なんでこんなこと。ホンマもんのアホや……」
「アリィ!!」
モハメドはアリアに絡みついたサンドイーターの触手を殴っては引きはがしていった。
思わぬ伏兵にサンドイーターは怯み、アリアを絡めていた触手は緩んだ。
「今だ!」
私はアリアを引っ張り上げた。
モハメドもその触手を握っていたが、力尽きてしまい、その手を離してしまった。
「アンタァー!!」
「アリィ……」
女王を守った勇敢な戦士は死に場所を決め、落ちていった。
私が勇敢な戦士に敬意を称し、目を閉じようとした時……。
「最強砲台ソルカノン、発射なのだー!!」
ズドォオオオオン!!!
騎竜戦艦の竜の形の船首から巨大な光の柱が撃ち出された。
「な……何ですか。これは?」
「フッフッフー、これぞワシの錬金術で作った超古代兵器ソルカノンなのだー!!」
光の柱の直撃を食らったサンドイーターは泡を吹いて横たわっていた。
その口の近くには満身創痍のモハメドが倒れている。
「パラケルススさん、戦艦を少し低くできますか?」
「わかったのだ、低空航行モードなのだ」
私は少し低く飛んだ騎竜戦艦の甲板からいっぱいいっぱいに触手を伸ばした。
そしてモハメドを拾い上げると、サンドイーターが再度目を覚ます前に再浮上した。
「あああー、ウチの巣が。ウチの王国がワヤになってしもたー」
アリアが崩れ去ったアリの大穴を見て大泣きしていた。




