120 地底の悪魔
サンドイーターとは一体何者なのだろうか?
「アカーン、グラグラボイスやー、ウチらオシマイやー!!」
「何ですか? そのグラグラボイスってのは?」
アリアが涙目で私に話してきた。
「地面グラグラ揺らしてめっちゃ大きい声で叫ぶバケモンやー、だからウチはサンドイーターのことをグラグラボイスと呼んどるんやー」
「そうなんですね」
私達を取り囲んでいたはずのアリ達は右往左往するばかりで何もできていない。
そんな中でモハメドが立ち上がった。
「アリィイイ!」
全身ボコボコで動くのもやっとなはずのモハメドは、アリアの前に足を引きずりながら歩いていた。
「アンタ……そんな体でウチを」
「アリィ!」
アリアが大きな声で泣きだした。
「堪忍やぁ。堪忍してやぁー。アンタもう動かんとき、そのままやと死んでまうわぁー」
「アリィ……」
なんという戦士だ、モハメドはこの身体でなおアリアを守ろうとしているのだ。
「ダァアア!」
「アントニオくん、どうしたのだ?」
なんと、ゴーレムのアントニオもモハメドの横に歩いて行った。
一緒に戦おうというのか。
アントニオはヨロヨロの身体でファイティングポーズを取っていた。
「おまいら……ウチのために戦ってくれるんかいな、おおきにな」
「イヤ……実は、あのサンドイーターが起きてしまったの、ワシのせいかもしれないのだ」
「なんやて!?」
「スーパーギガンテックドリル・アントニオくんにここに来てもらうために、馬鹿でっかいドリルでアントニオくんが砂漠の地面を掘りまくったのだ……その振動でサンドイーターが目を覚ましたのかもしれないのだ」
アリアが一瞬唖然としてから憤怒の表情に変わった。
「ふざけんなぁー! 全部アンタの仕業やっちゅーんやな! ぶっ殺したる、いてもたる!!」
「ひええええー、助けて欲しいのだー」
しかし兵隊アリはどいつもこいつも混乱していてアリアが私達を殺せと言っても今は何もできないだろう。
それにこんな所で殺されるのも、サンドイーターにやられて死ぬのも勘弁だ。
私にはポリコールを見返してやるという大きな目標がある、こんな所で死ぬわけにはいかない。
「アリアさん、すこし落ち着きましょう」
「やかましい! アンタを殺してウチも死ぬー!!」
「ちょっと黙ってもらいましょうか!」
私は触手を伸ばし、アリアをがんじがらめにした。
「何すんねん、動けんやないかい」
「話を聞いてもらう間だけ大人しくさせてもらいました」
私は触手でアリアを縛ったまま、話を続けた。
「いいですか、このままいがみ合っててもどちらもがサンドイーターの餌になるか、このアリの巣の崩壊で全員死亡です」
「そ、そりゃりそうやが」
「ならどうにか力を合わせてあのサンドイーターを倒しませんか」
「アホ、サンドイーターはウチらの天敵や。勝てるわけないやろが!」
まあ天敵が相手となると、そうもなるな。
「なので私達が協力しようというのです。一旦手を組みませんか?」
「ま。まあそれで命が助かるならしゃーない。ウチはコレでも女王や、兵隊アリ見殺しにしたらウチが宿無しになってもうたら誰も助けてくれん」
アリアは私の話で少し落ち着いたようだ。
「では一旦この巣穴から全員で脱出しましょう!」
「待ってや! ウチこのバカでかい図体やと動けんから」
「ではどうするんですか、もう時間はありませんよ」
「せっかちなやっちゃな、ちょい待ちーな」
そう言うとアリアの巨体が溶けだした、見ているとなかなかグロい光景だ。
そして巨大な下半身が解け、その中からは人間と同じくらいの大きさの少女が出てきた。
「どや、これがウチの擬態や。中々の別嬪はんやろ」
「そんなことどうでもいいからさっさと逃げますよ!」
「そんなんて。ウチ傷つくわー」
私達はアリアや兵隊アリ達と一緒にアリの巣を走り、どうにか巣の外に脱出した。