112 住民課の立て直し
次の日、ウー・マイはどうにか仕事に出て来れたようだった。
「今日はもう包丁持たせないアル、ずっと皿洗いと野菜の下ごしらえしているアル」
「はーい、わかりましたー」
オイオリュカはウー・マイの言った通りに、食肉野菜をバラバラに砕いていた。
今度は野菜炒めではないが、バラバラに砕かれた野菜はウー・マイに手渡され、皮を剝いて今日の料理に加工されている。
今日の料理は何か変わった臭いの茶色い食べ物だった。
言ったら何だが……その見た目は、まるで蠅系モンスターの好む汚物のような色だった。
「な、何ですか? コレ??」
「コレは異国の料理、カレーイアル」
「カレーイ??」
ウー・マイの作っているのはなんというか、見た事の無いような料理だった。
臭いも独特の臭いだ。
「ウー・マイちゃーん、コレってどんなのなのー?」
「コレはとても辛―い料理アル」
鍋の中にあったのはグツグツと煮える謎の料理だった。
しかし私はいつまでもこの食堂にばかりいるわけにはいかない。
そろそろ別の仕事に取り掛からないと、オクタヴィアに嫌味を言われる。
私は食堂から移動し、執政室に向かった。
この数週間で、バーレンヘイムの状況は大きく変わった。
軍部はアイガイオンがやる気を出し、魔神バッカスは酒造りの産業をスタート、金食い虫の騎竜戦艦は大幅に改良され、今は輸送に軍事にどちらにも大活躍できるようになった。
この流れでバーレンヘイムを立て直す事が出来れば、この地域や軍団は最強になるだろう。
次に取り組むべき問題は住居の問題だ。
宿舎はあるので国に属する魔族達は生活を保障されているが、それ以外の野良魔族やモンスターはどこに何が住んでいるのかがまるで把握できていない。
この問題を解消するのが次の課題になるだろう。
私は住民課に向かった。
住民課の連中は相変わらず、終わらないカードゲームを続けている。
「皆さん、仕事ですよ!」
私の呼びかけにも答えず、連中はカードゲームを続けている。
流石にこのままこれを放っておくわけにもいかない。
「触手よ、伸びろ!」
私は触手で住民関連中全員を縛り上げた。
「そろそろ真面目に仕事しないと怒りますよ」
「仕事しろと言っても毎日やる事が無いんじゃ座ってるだけだろう!!」
まあこの連中のいう事ももっともではある。
仕事が無いからただ座っている。
みんなで座っているなら暇なら誰かと時間を共有した方がマシ。
なので毎日カードゲームをしている。
コレが悪循環のスパイラルになっているのだ。
この状況を改善しないで怒鳴っても、この連中の仕事にはならない。
彼らがきちんと仕事をできる、やる気の出る環境を出さないといけないのだ。
住民課に仕事を作る、その為にはまずは住民の把握という事になる。
住民の把握のためには、それぞれの環境に適した魔族に調査に行かせるべきだろう。
「皆さん、空の飛べる方はどれだけいますか?」
ハーピィ種の職員とドラゴニュートの職員の二人が、渋々手を挙げた。
「わかりました、特別手当をお出ししますし、この仕事の後は数日有給のお休みを上げますので、高山系のモンスターや魔族がどれだけ住んでいるか調査をお願いします」
次に私はエレメント系の魔族に声をかけた。
「この中で水の中や氷の中、炎の中でも平気な方はどれだけいますか?」
サラマンダーの職員と、サハギン系の職員、それに堕落した精霊系の職員が手を挙げた。
「あなた方にも同じように特別手当と有給を出しますので、住人の把握のための調査をお願いします」
こうして私はバーレンヘイムにどれだけの未登録系住人がいるかを確認開始した。
これらの前人未到の未登録系住人を登録し、バーレンヘイムに必要な人材ならスカウトしようと考えたのだ。




