110 習うより慣れろ
オイオリュカの皿割りは次の日も続いた。
これは皿を備品として大量発注しなくてはいけなそうだ。
「あれーおかしいなー」
今日も今日とてオイオリュカは皿洗いのはずが、皿をパリンパリンと割っていた。
流石のウー・マイも顔が引きつっている。
「ま、まあ仕方ないアル。最初はそんなもんアル」
「ごめんねー、オイオリュカちゃん頑張るねー」
なんというか、無能な働き者という状態だろう。
やる気はあるんだが皿がいつまでも割れ続けていた。
どうやら力加減がまだ理解できていないようだ。
「仕方ないアル、これを使ってみるアル」
そう言うとウー・マイは二本の棒をオイオリュカに手渡した。
「これで皿をつまんでみるアル」
「はーい、やってみまーす」
ツルッ……ガシャーン!
二本の棒でつまもうとした皿はそのまま床に落ちて割れてしまった。
「あれー、おかしいなー」
「ドンマイアル、今日はこの箸で皿をつまむ練習をするアル」
「わかりましたー」
オイオリュカは言われたようにハシと呼ばれた二本の棒で皿をつまむ練習をした。
最初は持つ事もできず落として割っていたが、今度は力を入れて持ってみる事にしたようだ。
「今度こそー」
オイオリュカはハシで皿をつまめた、しかしその直後またパリンと音を立てて皿が割れた。
「あれー、おかしいなー」
もうその言葉は昨日と今日だけで聞き飽きました。
オイオリュカはどうにかつまんだ箸で今度は皿を真っ二つに押し切ってしまったようだ。
よほど力加減ができないのだろう。
「はあ、仕方ないアル。まあそれでも皿をつまめたのは進歩というべきアルか」
ウー・マイは諦めていないようだ。
彼女にもプライドがあるのだろう。
オイオリュカを何としても一人前に育てようというのだ。
「やったー、持てたよー」
何十枚と皿を割り続けてようやく、オイオリュカはハシで皿をつまむことができたようだ。
「よくやったアル、その指の力を覚えておくアル」
「わかったよー」
ウー・マイはオイオリュカに箸を使わずその力で皿を持ってみろといった。
「さあ、今度はその力加減で皿を持つアル」
「うん、やってみるねー」
オイオリュカが皿を指でつまんだ。
しかし、パリンという音は聞こえてこなかった。
「やったー! やったー! やったよー!!」
「よく頑張ったアル。その力加減で良いアルよ」
「うん、今までの分頑張るねー」
オイオリュカは触れる程度につまむことで、皿を割らずに持ち運ぶことができるようになった。
「よくやったアル、それが習うより慣れろアル。料理はそうやって覚えるものアル」
「わかったー、やってみるー」
オイオリュカはしまっていた腕を全開にすると、一気に今までのミスを取り返そうかと一瞬で100人分以上の皿を洗い終えた。
「出来たよー」
「ふぇ!? も、もう終わったアルか?」
「うん、終わったよー」
ウー・マイがオイオリュカの洗った皿を見ていた。
「完璧アル、これだけきれいに洗えていれば何の問題もないアル。オイオリュカ、続きの皿洗いと調理器具の洗浄も頼むある」
「はーい、わかりましたー」
オイオリュカは全部の手を使い、一瞬でそれらの皿と調理器具も洗い終えた。
「もう終わったよー」
「ふぇっ! もう終わったアルか」
一度ノウハウを覚えたオイオリュカはかなり優秀だった。
その次の日食堂で皿洗いをしたオイオリュカは普通2時間以上かかる皿洗いを10分程度で終わらせていた。
「お皿全部洗ったよー」
「ご苦労様アル。今度は野菜の皮むきをやってもらうアル」
「わかったよー」
そういうとオイオリュカは超巨大な食肉野菜を持ってきた。
食肉野菜はまだ息があって、オイオリュカの腕に噛みついてきた。
「いったい何をするのー!!」
オイオリュカが手で食肉野菜を殴ると、野菜が粉みじんに砕けとんだ。
「あれー、おかしいーなー」
今度は野菜の下ごしらえを教えないといけないらしい。