104 コメとショーユとコカトリスの玉子
パラケルススのクラスターXは、コメとダイズの大量生産を成功させる事に大いに役立った。
「フッフッフー、どーだ、ワシのおかげで美味しい物がきちんと食べれるようになったのだー」
「そうですね、それはきちんと褒めてあげますよ」
私達は大量生産に成功したコメとダイズを持ってバッカスの住処に向かった。
「よう来たの―、まあ酒飲んでけ」
「いや、今は仕事で来ましたので、お気持ちだけで」
「そうかい、しゃーないのう」
私達はゴーレムくんに運ばせた大量のコメとダイズを魔神バッカスに渡した。
「ではこれでまたショーユと酒をお願いします」
「おう、任せとけ。オイが美味いのを作ったるわい」
このショーユが大量生産できるようになれば料理のバリエーションが増えるようだ。
そうなるとこのバーレンヘイムの食糧事情も、だいぶん改善されるようになるだろう。
魔神バッカスは最近飲むよりも酒やショーユを作る方が楽しいようだ。
その顔は顔は赤らんだ感じではなかった。
「ワシにも何か手伝わせてくれーなのだ」
いや、パラケルスス。
貴女が張り切ると大体ロクでもない結果にしかなりませんから。
「おう、手伝ってくれるなら助かるわい」
「では何をすればいいのだ?」
「そこにある大鍋の中身をよーく混ぜてくれると助かるんだが」
「わかったのだ、ゴーレムくんの出番なのだ」
パラケルススはゴーレムを呼びつけると、その大鍋の中に入らせた。
「なにやっとるんじゃーおどれはー!!」
「問題無いのだ、きちんと消毒はしているのだ」
「それより何をやっとんじゃと聞いとんじゃい!!?」
パラケルススはいつものドヤ顔で指を指してきた。
「ゴーレムくんは耐熱も耐久も優れているのだ。なのでゴーレムくんに中に入らせて中から均等に攪拌させているのだー」
「かくはん? なんじゃいそりゃ?」
「攪拌とはよーくかき混ぜる事なのだ。ゴーレムくんならそれを均等に出来るのだ」
魔神バッカスがどうも納得いかない雰囲気だった。
「それで味がどれだけ変わるんじゃい」
「全体にムラなくかき混ぜる事でこのコメやダイズが全体的に味にバラツキがなくなるのだ」
「ふむ、確かに言っとることに一理あるわな。まあ好きにやってみい」
「わかったのだ。ゴーレムくん、任せるのだ」
パラケルススのゴーレムは熱い鍋の中で体と腕を回転させ続けていた。
辺りにはいい匂いが漂っている。
「これでもう少しで全体が茹で上がるのだ。それから後は魔神バッカスに任せるのだ」
「おう、後は任せい。美味いの造ったるわい」
魔神バッカスが上機嫌で蒸しあがったコメとダイズをかじっていた。
「おう、確かにこれは良い火加減じゃい! これは美味いの造れるからまた来いや」
私達はバッカスさんに出来上がったショーユとコメの酒、それにブドウで出来た酒を受け取り、庁舎に戻った。
庁舎の食堂は今日も大盛況だった。
どうやらコメをショーユとコカトリスの玉子で食べるのがシンプルで美味いという話が広まっているらしい。
私達もそれを試してみる事にした。
「アイヤー、ご飯とコカトリスの玉子のショーユがけアルね」
このコメというのはどうやら焼いたり生で食べるよりも炊いて食べるのがいいとウー・マイが言っていたので、私達はその食べ方で食べてみる事にした。
「確かに! これは美味しいです」
「これならいくらでも食べれるのだー」
「この食べ方、ヤマトクニに手紙で伝えてみましょう。これはとても美味しいです」
この食事もかなりの好評のようだ。
ウー・マイは料理の天才だ。
今や彼女はこの食堂に必須な存在になっていた。
「ウー・マイさん。貴女の料理の作り方って、人に教えて実践できるものなのでしょうか?」
「多分大丈夫アル。よほど才能の無い奴でない限りは問題無いアル」
私は次はやる気のない軍務省の食料問題に、取り組む事にした。
「ウー・マイさん。今度少し時間付き合ってもらえますか?」
「ふぇっ?? ワタシ仕事忙しいアルけど……どうしてもというなら付き合ってもいいアル」
どうやらウー・マイが顔を赤らめてもじもじしていたが、何か勘違いしているのだろうか?