103 炊いたコメで作ったチャーハン
パラケルススの作った巨大コメと巨大ダイズは、中を割ると中に少し大きなコメとダイズが入っていた。
「さらにそれを割ってみるのだー」
「こう、ですか?」
私はさらにそのコメとダイズを割ってみた。
すると、中にはそれよりも少し小さいコメとダイズが入っていた。
「まさか……もう一度割るのではないでしょうね?」
「その通りなのだ、もう一度割ってみるのだ」
私は仕方なく、もう一度コメとダイズを割ってみた。
すると、中にはそれよりもさらに小さい、普通のサイズのコメとダイズが入っていた。
「フッフッフー、どうなのだー、これがワシの大発明、クラスターXなのだー」
「あの……これはどういう事ですか?」
パラケルススがいつもの指を指したドヤ顔をした。
「これぞワシの大発明、クラスターXなのだ。これはかけられた対象の植物が巨大化して、中にそれよりも小さい実を貯える、そしてそれがさらに成長するとその実の中にさらにたくさんの実を貯える優れモノなのだー」
まあ、やり方は面倒くさいが、大量に作るという点では課題は及第点と考えておこう。
「素晴らしいですね、褒めてあげますよ」
「わーい、テンタンタクルスに褒められたのだー」
ニコニコしているのは良いけど、いつになったら貴女は私の名前をきちんと呼んでくれるのでしょうか?
私達は取れたばかりのコメとダイズを持ってウー・マイの元に向かった。
「アイヤー、米と大豆持ってきたアルか。ウン、これなら間違いなく良い物作れるアル」
ウー・マイさんはコメを鍋に入れると絶妙の火加減でそれを炊いた。
「はじめチョロチョロ中パッパ、赤子が泣いても蓋取るなアル」
「何ですか? その謎の呪詛は……」
「あー、コレは父さんに昔教えてもらった東方の米の炊き方アル。このやり方で炊くとふっくらと美味しいご飯できるアル」
ウー・マイはしばらく鍋と向き合い、そして最後に火を止めた。
「完成アル、これで炊きたての美味しいご飯が食べれるアル」
「これがそんなに美味しいんですか?」
私の見た物は、真っ白な粒が鍋の中で縦に立っている様子だった。
パサパサだった実はふっくらつやつやとした白い小さな宝石のような輝きを放っていた。
「完成アル、最高のご飯が炊けたアルね。これを食べてみるアルね」
「では、いただいてみましょう」
私は炊けたご飯を少し口に入れてみた。
「!! 何だこの食べ物は。ふっくらとしていて少し甘みがある。そしてこれはいくらでも食べれそうな味だ。これはパンとはまるで違う次元の食べ物だ」
「どうアルか? 美味しいアル??」
「姐さん。どうもオレっち、これ味が無さ過ぎてよくわからないっす」
ブブカにはイマイチ不服みたいだ。
「わかってるアル。そういう人もいるからとっておきの炒飯にするアル」
「チャーハン? 何ですかそれ」
「まあ黙って見てるアル」
そういうとウー・マイは鍋に油と卵を入れた。
「炒飯は火力が勝負アル! 時間との戦いアルね」
卵がフワフワになっている、そこに先程炊けたコメを入れているようだ。
「炒飯は火に躍らせる事がパラッと美味しく仕上げるコツアルね!」
ウー・マイが手を振ると、鍋の中の米が躍るように空を何度も舞い上がった。
それはまるで一種の魔法を見ているようだった。
「完成アル、ウー・マイ特製炒飯アルよ」
皿の上に小さな山の様に盛られたコメは油と卵と他の具材と混ざり、黄色い綺麗な色をしていた。
「さあ、冷めないうちに食べるアル」
「では……」
私達は試食用のチャーハンを口にした。
何だこれは、先程の炊いたコメとは全く別の食べ物になっている!
「姐さん、コレメチャ美味いっす! これならいくらでも食べれるっす」
ブブカが凄い勢いでチャーハンを食べだした。
これも売れる商品になるだろう。
案の定、今日の食堂で新メニューとしてコメの料理を出したところ、またいつものような争奪戦があちこちで繰り広げられる事になっていた。




