望迷編11
「不可思議第002を使う……だと?」
「はい、不可思議第002"煌めきを貴方に"正式な名前ではありませんが……今は不可思議第002と呼びます」
「一桁ナンバーの不可思議については知らないんだが……どんな物なんだ?」
ナオの説明では
執念の大きさに応じて自分の願いが叶えられる不可思議らしい
「そんな夢のような不可思議があったなんて……」
「もちろん都合のいい話だけではありません」
副作用とも呼べるソレは
「執念を持てなくなります、何があっても執着や執念といった人間らしさを失う事になります」
……らしい
「執念や執着って……いいイメージないけど」
「感じ方は人それぞれですから、ご主人がそう感じるのであればそれで良いかと」
「ちなみにソレは……どんな不可思議なんだ?」
不可思議にも色々な形がある
動物型、人型、武具型、不形型……他にもあったけどあまり覚えていない。
「錠剤型だったと記憶してますが……加工されている可能性もありますので……今の形については断言できません」
成程な、ソレを使えば何とかなると
不可思議に対抗するには不可思議か
不可思議からそれを提案されるとはね
「おっけ、んじゃソレを取りに行きますか!んでそれは何処にあるんだ?遺跡か?カルト教団の秘宝か?」
「ご主人の組織の博物館ですよ」
博物館か……
「どうされますか」
「行くよ、行かなきゃ……世界を元に戻さなきゃ……俺だけがまともでも世界が狂ってたら、俺が狂ってる事になっちまう」
そうだよ、皆を、世界を救うんだ
「んで、博物館に行く為のルートはあんのか?」
「あるにはあります……が、一つだけ問題があります」
問題とは……俺を救出する為に開放した不可思議の事だった。
「あの人型は、不可思議第010"ブルー・ブラッド"と人間達は呼んでますね」
ブルー・ブラッド?
何だ?貴族みたいな不可思議か?
「ヌペルッツイヤ・オリジナル」
「なんだよそれ」
「本名です、その不可思議は人間です」
人間が……不可思議だと?
いや、それはどうでもいい
「そのヌペ……いや何でもいい、それの何が問題なんだよ」
人間が不可思議なら……話し合えば何とかなるんじゃないか?
「彼女はとても人間を憎んでいます、そして不可思議を開放して回っているんです」
「不可思議を開放してる……だと?」
「はい、ご主人を開放した場所、そこにあった不可思議を殆ど開放し、真縅は壊滅的なダメージを受けています」
不可思議の反乱、それで混乱して……対処に追われているのか
「なら警備が緩く」
「今は掃討部隊、つまり英雄と呼ばれた四人を主軸とし、東縅や南縅といった主力中の主力が集中している状態で……警備は緩いかもしれませんが、彼らに遭遇すれば戦闘は必須、そして不可思議に見つかっても戦闘」
「お前なら……勝てるんじゃないのか?」
ナオは首を横に振った
「不可思議には勝てません、私は不可思議によって作られた……副産物みたいな物で、不可思議とやりあえば勝てる見込みはありません」
ですが、と続ける
「人間相手なら負けません」
「真縅の英雄や東縅が相手でもか?」
「所詮人間ですから」
なんともまぁ頼りになる
「不可思議は俺が……何とかするよ」
出来る気はしないが、それでも何とかするしかない
「では人間は私が……いえ私ではありませんよ?」
「私ですよ、私と」
「私が、同行します」
両肩に手が置かれる
左右には同じ顔のメイドがいた
「私は戦闘特化の私です」
「私は隠密特化の私です」
区別がつかん!ええい!
「戦闘特化のナオは黒いメイド服!隠密特化は白いメイド服を着ること!」
ナオ達の表情は変わらないが、何を言おうとしているのかはわかった
「やっぱりメイド服が好きなんですね、か?」
「悪いか?ええ?」
「素直なご主人は素敵です」
「ええ、本当に、僕ちゃん素敵でちゅよ〜?」
何にせよ、不可思議を奪いに行く事は決定された。
「一応さ、脱出特化のお前も再生したら来るように言っといてくれ」
前回はそれで助かったんだから
二人のナオは俺の腕をガッチリと掴むと
「それは自分で伝えて下さい」
そう言い、俺を居住室に連れていった
「おいまて!これから奪いに行くんだろ!?今がチャンスなんだろ!?」
これから行くって話じゃないのか?どうなって……
あっ
「支払いが済んでません、支払いも終えてないのに次の注文は受けられませんので……4ヶ月ほどここで大人しくして下さい」
「支払いはする!だけど急がないと!」
「ご主人は今、借金をしている状態です。借金は自分がどうなろうと、自分の周りがどうなろうと優先で支払わなければなりません」
「違いますか?……文句ありますか?」
……ッ!!クッソ!クッソ!
こんな時でも支払いかよッ!
「地球の皆を救うんだぞ!?今回は特例だ!特例にしろ!」
「私は人間ではありません、地球の皆が救われようと殺されようと……私にプラスにはなりませんので……」
「何にせよ新しい命令は受け付けません、支払いが終わってませんから……ね?」
自分の事しか考えないのかよ!くっそ!
「……薬を使って血液量を増やしてくれ、それで早く支払いを終わらせたい……この命令は受付けてくれるんだろ?」
ナオは二人揃って頭を下げ「かしこまりました」と、言った。
「薬……本当に俺ここで死ぬんじゃないの?」
増血剤は服作用がヤバい、分量を間違えたら死ぬ。
「間違えませんよ、私はご主人が望んだパーフェクトメイドです、ご主人の性癖からご主人の要望まで全てを形にしたのが今の私……ミスするドジっ娘メイドは望まれてませんでした。」
……こいつを作る時に、優しいメイドってのも追加しとくんだったな……




