表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/151

視界編7

俺達は一度東海支部に戻り、対策会議に参加した。

「こちらは今回の55研究者の岡部さん」

すらっと細い、ちゃんと食べてるのか不安になりそうな女性が握手を求めてきた。

「岡部、よろしく。」

こちらこそ宜しくと、握手を交わす。


「55の病気だけど、そもそも一体何なのか。それについて解説する。」

岡部さんが資料を配った

色々難しそうな資料、その中身を説明し始めた


「人間は物質が反射した光がないと物を見る事ができないのはわかってると思う。この反射した光を見た時、光には反射した物質の固有情報となる"波長"も含まれている。固有の波長を捉えて初めて確認、つまり視認と認識ができるようになる。」

「この55の病気はこの波長を変えてしまう病気。だから普段とは違う常識ではない"なにか"が見えるようになる。」


姫川は質問をした

「でもそこに置いてある物は変わらないんですよね?」



「物も人も変わらない。だけど今まてまリンゴをリンゴだと見て認識できた物が、リンゴを見てもみかんにしか認識できなくなります。これが波長を変えるって事。」


つまり……

「見えているけど作られた波長の物しか理解できない」

…………

「この病気に視界を乗っ取られるって事」

岡部さんはお茶を飲みながら一言。


「お茶をお茶だと認識できるのは、幸せな事。」


空気が重い、それもそうだろう。

まさか視界を乗っ取られるとは。

共通した幻覚でもなく、皆がそろって夢みてるのでもなく。

感染者は当たり前を当たり前と認識できなくなるなんて。


「しかし俺と姫川が感染した時、パニックになりました。それも盛大に。何故ここまで静かなんですか?」

岡部さんはため息を吐いた後に

「多分感染者同士で新しい波長について話たり、実はコレが普通だったと認識しちゃったのかも……確信はないけど。」


「病気はわかりました、対策方法はないんですか?」

姫川が真剣な表情で質問する


「目が見える限り、これは止められない。」

最も聞きたくなかった答えが返ってきた。


ただ一つ希望があるとすれば。


"目が見えない状態でなら、感染しない"って事だ。

例えば暗闇で薬を投与する。それも感染者一人残らず。

これなら対処可能だ

不可能にしか聞こえないけれど、これしかない


「膨大な地域に暗闇を作り出す、そしてその中で私達職員が光を使わずに薬を投与する。」

不可能だ……聞こえてくる言葉に希望が見えない。


「クーパーさん……」

姫川の弱々しい声が聞こえる


「まず人員がたりません。」

「それなら大丈夫です。55対策として日本全国の支部から人を招集します。」

クーパーさんは自信まんまんに答えてる。可愛い。



「私達はずっと少人数でやってきたけど、大人数いないと対処できない不可思議なんてザラにありますし、今までがラッキーだったのよ。」


人の問題は解決できそうだな。

またみんなに会えるのは嬉しいな

後は……光が入らない空間を用意しなきゃいけない。


そこで岡部さんからとんでもない提案があった。


「目が見えなくなる化学物質をこの地方にばらまく……例えば水道に混ぜたり、空気中に散布したり。そうして実質暗闇を作り出す、これが作戦。」

それは……

「全く関係ない人まで巻き込む事になります!賛成できません!」

俺は思わず声を出した。


「先輩と同じ意見です!」

姫川も声を出してくれた

「百歩譲ってその作戦にするとしても、もちろん目はまた見えるようになるんですよね?」


長い間を置いて

「すぐに作る化学物質の為それは保証できない」と岡部さんがお茶を飲みながら答える。


「わかっています、姫川さんの意見も、あなたの意見も!ですが、他に方法がないの!」

クーパーさんも悩みに悩んだ結果なんだろう。


「わかって欲しいの、この病気が世界に広がれば、人類は今までと変わらない世界でみたこともない物に囲まれて生きる事になる。文明が退化するかもしれない、人を人と認識できなくなって種が滅ぶかもしれない。」

「私達は人類を不可思議から守る組織なの、個人を、少数を犠牲にしても人類は守らなきゃいけないの!!」


あんなに声を荒らげたクーパーさんは初めて見た。

少数を犠牲にして人類全体を守る、それは正しいけど、あまりにも過酷。


時間もアイデアもない。

だけど人手はあるし薬もある。


記憶消去剤は注射型だから打ち込まないと効果がない。

それ以外から摂取しても効果が薄いんだ


それに一人一人に対処しても

薬を投薬する間にも感染者が増えるかもしれない。

いたちごっこになる


「なるべく目が失明状態から治りやすい物質にする、そこの努力は惜しまないつもり。だけど時間がない、わかってほしい。」


岡部さんがは真面目に答えてくれてる。

クーパーさんも、姫川も。


「人を救うのいつも人です。ですが人を傷つけるのは人であってはいけないのに……」

泣くな姫川

つらいのは皆同じ……


俺は、俺達は無力なんだな……


「作戦は三日後に行います」

三重、愛知に化学物質を散布し地域の人間の視力を奪う。

前代未聞の作戦が決まった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ