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平原の戦い②

 それからの戦いは俺たちに優勢なまま、むしろ一方的な展開となった。


「せいっ、はぁーーーっ!!」


「燃えて爆ぜろっ!!」


「凍てつけ、そして命尽きなさいっ!」


 クレス、レイラ、マリアの三人が派手に暴れて敵を引きつける作戦だったが、彼女らの戦闘力のおかげでおびき寄せた敵はそのまま全てを殲滅していた。


 引き寄せられずに留まっていた魔物たちも、背後から忍び寄る形でウードたちが強襲したお陰で、苦労せずに魔物たちの数を減らすことに成功した。


「これで最後ね!」


 戦い始めてからたったの2時間ほどで、平原に陣取っていた魔物たちは全て駆除されるのだった。


(・・・・・・終わったのか?)


 あまりの呆気なさに、思わず呟く。


『辺りにはもう魔物はいない。クロコの眷属が逃げようとしていた小物も逃さず仕留めたお陰で、打ち漏らしは無さそうだぞ』


 ヘルメスが察知していた魔物の数はおおよそ300体。それをたったの四人と一匹(とその眷属たち)だけで倒したことになる。


「ふぅー、疲れたねウード。君に身体を返したらすっごい筋肉痛が来ると思うけど、マリアに回復して貰えるから大丈夫だよね?」


 さらりとフェーンが恐ろしいことを言うが、覚悟する以外にできることは無い。

 ふわりと体に意識が吸い込まれる感覚に襲われ、次の瞬間には体の感覚が戻ってきた。それと同時にあちこちが軋むように動きが固くなり、どこもかしこも痛い。

 流石にこの後の作戦に支障をきたすので、この後にマリア治療してもらおう。マリアがいてくれて本当に良かった。


「お父さーん! こっちも終わったよ!」


 元気いっぱいのまま、クレスが戻ってきた。あれだけの敵を倒しておきながら、息のひとつも上がっていない。やはり常人離れしているな。



 その一方で、まだマリアとレイラは肩で息をしていた。走りながら魔法や武器で戦っていたのだから無理もない。二人ともここまでの旅でかなり鍛えられた筈だが、それでもクレスとは雲泥の差だ。もちろん、彼女たちの方が普通である。


「ぶハーッ。さすがに疲れたっ!

 魔の島のときより、滅茶苦茶数多いんじゃない?

 これで一部なら、この先何回戦闘しないといけないわけ?」


「今日ばかりはレイラの気持ちに賛同しますわ。このようなのを何回やっていたら、体がいくつあっても足りませんもの」


 流石にレイラもマリアも戦いっぱなしで疲労困憊だ。

 話をしている二人のもとに、クレスが颯爽と現れる。


「二人ともお疲れ様ー。でも魔の島の魔物よりは弱かったから、そこまで苦労せずに倒せて良かったよ」



 まだ涼しい顔をしているクレスを見て、『この子何言ってるの?!』という顔をして驚いている。

 やはりうちの子は最強だな。そして、世界一可愛い。


『何を惚けておるんだ、お主は。一先ずは一難が去ったと言うべきか。この数で先行部隊だとすれば本隊は1000体以上の魔物がいるだろうな』


「本当か?

 そんな数、今の俺たちでも厳しいな。町の冒険者が来るまで待つしかないか」


『そうだろうな。我らが力を貸したとしても、1000体ともなれば今の我らには難しいだろうな』


「今の我らって、ヘルメスたち神獣のこと言っているんだよな?

 昔のヘルメスたちなら勝てたのか?」


『今日現れた程度の魔物なら、千いようか、万いようが変わらんよ。我だけでも殲滅出来ただろうな。

 我らは遥な昔、もっと凶悪で凄まじい力を持った魔物たちと戦っていたからな』


「ふふふ、懐かしいわね。ヘルメスなんて、本当は私よりも大きくて、凶悪な顔していたのよ。翼なんて、空を覆い尽くすほどだったのだから」


『リーヴァ、顔つきは関係ないだろうが!

 お主とて、昔はもっと美しい姿だったはずだが。封印された時に随分と貧相になっものだな』


「ちょっと! レディーに向かってその発言は無いんじゃない?!

 そんな態度だから、民たちに怖がられるのよアナタは」


 内容だけ聞いていると熟練夫婦の会話だが、今会話しているのはドラゴンと羽付き蛇だ。そのギャッブが凄すぎて思わず吹き出してしまった。


「ぶふっ。あっはっはっ!

 なんだよ、結局は仲がいいんだなふたりは」


『ぐ・・・・・・、そういうことでは無い。こやつとは数千年の付き合いだということだけだ』


「あら、そんなこと言っていいのかしら?

 昔はあんなに優しかったのに、それにあの時のこととか・・・・・・」


『お、おいっ!

 あれは言わぬ約束だぞ?!』


「ふっふっふ、ちゃんと覚えているなら黙っておいてあげるわー」


 あのヘルメスがこうまで翻弄されるとか、改めてリーヴァの凄さを感じる。やはり、女性(?)に男は敵わないな。

 もう少し詳しく聞きたいところだが、町からの応援部隊がやって来たみたいだ。

 どうやら早馬で走らせて駆けつけてくれたようで、数人しかいないが先頭に見えるのはギルドマスターで、他はいかにも猛者って感じの男たち。なるほど、即戦力を先に送ってきたみたいだな。

 その熱意に感心しつつ、そして感動した。あの町の人々は思った以上に情が深い。


 そう思っていると、向こうから大声で声が掛かる。


「おおーい!

 お前たち、無事なのかー!?」


「ああ、こちらは問題なく全て処理が終わったところだ!」


 相手を安心させるために、素直に伝えたつもりだが何故かギルドマスターの頭にハテナが浮かんでいるように見えた。あれ、なんか伝え方間違ったか?


「おい、これはどういう事だ?」


 合流してそうそうにギルドマスターが言った言葉はこれである。なんだ、何か俺らがやらかしたのか??


「どういう事とは?」


「いや、俺らは魔物の大群が押し載せるかもしれない。その先行部隊を抑えるために来た訳だが、その相手がいないように見えるんだが?」


「ああ! それなら、さっき全て片付けたところだよ。いやー、娘たちが思った以上に活躍して半日もしないうちに全部倒せたんだよ」


「ああっ?! そんな馬鹿な話があるかよ。

 報告では、先行部隊だけでも数百はいるってなしだったんじゃ」


「ああ、だからここにいる数百の魔物は全て倒したんだ。

 ほら、あそこの篝火に倒れている数を確認すれば分かるだろ?」


 なんだ?

 俺が虚偽の報告をしていたと言いたいのだろうか?

 しかし、予測した数と実際倒した数は大きくは変わらない。実際それを倒すのはかなり大変だったし、ヘルメスたちの助言がなければこうも上手く倒せなかったほど大変だったはずだ。


「確かに・・・・・・、数はおおよそあっているな。

 本当にその人数で全て倒したというのか。

 なるほど、護国竜の伝説は本当だったというわけだ」


「あらー、ギルドマスターちゃんじゃない」


 そこで念の為打ち漏らしがないか確認しにいってたリーヴァが戻ってきた。

 ほんの数分でこの辺りを見て回れるあたり、さすがはドラゴンだな。その顔を見る限り、問題はなかったようだ。


「リーヴァ様!

 さすがに御座います。こちらの被害なく全ての魔物を倒すだなんて!」


「え? ここの敵は殆どあの子たちが狩ったから私の力ではないわよ。

 この先は私たちも戦わないといけないし、温存させて貰ったわ~」


「はぁーーーー?!」


 夜空に星が輝く日に、ギルドマスターたちの声だけが辺りに響き渡るのであった。


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