帰ってきたリーヴァ
日が経ち、夕方に差し掛かった頃リーヴァが戻ってきた。
まだクレス達は戻ってきていないが、そのうち戻ってくるだろう。
「ただいま戻りましたマスター」
「ご苦労様、リーヴァ。
それでアルバードにはちゃんと説明してくれたか?」
「ええ、それなんだけど……。
事情は分かったから、大々的にではなく極秘で謁見の場を設けるから必ず王都に来るように言われたわ」
「えええっ?!
なんでそんな話になったんだ?」
「それがね……」
そう話そうとした時、丁度クレス達が帰ってきた。
手には色々な荷物を持っていて、全員ほくほく顔だ。どうやら気に入った物を見付けて楽しい買い物が出来たようだな。
嬉しそうな三人の顔を見ると、俺の顔もついつい綻ぶ。
「ただいま、お父さん!
あ、リーヴァも帰ってきたのね」
「おかえりクレス、マリア、レイラ。
今、帰ってきたリーヴァから話を聞こうとしていたところなんだ。
皆も一緒に聞いてくれ」
全員が揃ったところで、リーヴァに話をするように促した。
マリアもレイラも何事だろうという顔をしていたが、大人しく荷物を置いて椅子に座った。
「まず、王都へ来て欲しい理由がいくつかあるみたいなの。
ひとつは、守護竜である私が現れた事。
もうひとつは、西大陸……、マスターたちが住んでいた大陸ね。
そこの中央都市にあるお願いをしに行っていたこと。
そして、ここ中央大陸で起こっている問題を解決するために私たちにも手伝って欲しいということなの。それで──」
リーヴァの話はこう続いた。
ひとつめの理由、リーヴァが復活したので国を挙げて祝祭を執り行わなければならないらしい。
それは長年、王家に言い伝えられていることであり、必ず行わなければならない。
ふたつめの理由、これは三つ目の理由と繋がっている話であるらしい。
今中央大陸では、未曽有の魔物災害に見舞われている。
数年前から急に増えた魔物が、大陸中の町を襲っていて冒険者や国の兵士だけでは対処出来なくなっている。
そのため、同盟を結んでいる西大陸の王家へ援軍の要請をしにいっていたらしい。
その背景には、『魔人』と言われている謎の魔族が関与しているらしく、襲われた村や町では多数目撃されていた。
『魔人』は、ことあるごとに現れては魔物を操り甚大な被害をもたらしている。
そのため、この魔物災害の元凶がこの『魔人』たちではないかと考えているらしい。
「魔人って、フェーンが暴走した時やクラーケンに襲われた時に現れた怪しいフードを被ったやつのことか?」
「うん、そうだよお父さん。
ヴァレリーさんやマレーさんが言っていたけど、私の血に流れている銀の一族にとって宿敵のような存在だと言っていたよ。
だから、これは私達も行かないといけないと思うの!」
う、このクレスの目は絶対に譲らない時のだ。滅多にわがままを言う子ではないんだけど、こうなったら止められない。
「あーあ、こういう時のクレスって頑として聞かないんだから」
「そうですわね。でも、間違ったことで頑固になったりしないもの。クレスの言う通り、困った人を助けるのも冒険者の役目じゃないかしら?」
「はー、分かった分かった。
そこまで言うなら、アルバート王子に協力しよう。
旅はまだ始まったばかりだし、急ぐ必要もないからな」
アルバートから多額の報酬を貰い結果的に世話になったし、困っているなら助けてあげるべきだろう。
それにこちらの事情を鑑みて公な場での謁見をしないで良いとか、たかが辺境の村人に対してこれ以上ないほど譲歩してくれている。
行かなければ不敬罪どころか、指名手配されかねない。
俺一人ならいいけど、この子達をそんな目にあわせる訳にはいかないからな。
『そもそも、王族の誘いを断る平民など聞いたことがないがな。クレスを取られたくない気持ちは分かるが、過保護すぎるのもどうかと思うぞ?』
ぐはっ、ヘルメスにまで言われては立つ瀬がないな。
もう腹は決まったし、すぐに準備に取り掛かるか……。
「ごめんねお父さん。でもね、何故か行った方がいい気がするんだ。私の中に流れる銀の一族の血がそう言っている気がして」
ふと見ると、無意識なのかクレスが銀の魔力を纏っていた。
まるで何かに引き出されているかのように。
「ごめんね、マスター。
一応、主役は私だからその契約者としてマスターの名前は出ちゃうから、一緒にパレードに出てもらうわ。
クレス達三人とフェーンはどこかで待たせて貰えるみたいだから、安心していいわ」
「おいおい、俺もパレードに参加するのか?
そんな大層な式典に出るだなんて、聞いてないぞ?!」
「仕方ないじゃない?
そうしないと、この先一緒に行動出来なくなるわ」
理由は簡単だ。守護竜として崇められているリーヴァが現れて、そのままさようならとはいかない。
理由がなければ、王家の敷地に居所を与えられてそのまま崇め奉られるに違いない。
理由なく離れれば王家は見捨てられたと言われ、国中から非難を浴びることになる。
しかし、俺がいれば新しい使命を授かったなど、適当な理由を付けて旅に出られるのだ。
それを狙っての話らしい。
「なるほどな。そのために俺が一緒じゃないと駄目なのか。
はぁ、他国の王都で凱旋パレードやるとか想像もしなかったよ」
「ふふ、マスター何事も経験よ?
それに、過去の『神の生贄』は、本人が英雄として崇められていたのだから。
それから比べたら、軽いものなのよ?」
え、それは初耳なのだけど。
どういうことですかヘルメスさん?
って、すっごい知らんぷりしているし!
お前、知っていたな?くそう、いつも肝心なことは全く教えてくれないんだから。
『まぁ、なんだ。
我も忘れていたのだ、遥昔の話だからな。
それよりも、早く準備をするといい』
くっそー、覚えておけよ!
とは言っても仕返しのしようがないけど。
まぁ、決まったことは仕方ないしさっさと準備を済まして王都へと向かうか。
半分呆れたような困った顔して俺らを見守るクレス達三人に手伝って貰いながら、次の旅路の準備をする俺たちであった。




