リーヴァのお使い
昨日は慌ただしかった。
あの後、ギルドマスターから根掘り葉掘り聞かれて、かなり疲れたよ。
取り敢えず、アルバートからの依頼は達成されて正式にお金をもらった。
本来の船で中央大陸に送り届けるという依頼の他に、途中の護衛や遭難者の探索、更には守護竜の解放などが追加されて支払いされた報酬額は、なんと金貨二百枚。
さすがに軽く眩暈がしたよ。
俺達は紹介された宿屋へ向かい、皆を部屋に呼んで話をしていた。これから何処へ向かうかなどを決めないといけない。
「はは、ウードさん。もう冒険者辞めても食べていけると思うよ?」
「そうですわね。これだけあれば、例え四人で旅をしてもお金に困らないですわね」
「うーん、それってなんかずっと遊んでいる感じにならないかなぁ。
やっぱり、しっかり働きつつ旅しないとね!
それに冒険者として、色んな人の手助けもしたいから」
「クレスは、本当にいい子に育ったなぁ。父さんの心が濯がれるようだよ」
一瞬、俺ももう冒険者なんて危険な仕事を辞めて、二人…いや四人でのんびり旅をするのもいいかもとか思っていたんだけど、クレスから遠回しに却下されたら諦めるしかない。
そもそもクレスの為に出た旅だし、冒険者になりたくてなったのだから、仕事をしないという選択肢もないわけだ。
しかし、困ったことになった。
リーヴァを仲間にした事で、町では英雄扱いになってしまった。さらに第二王子のアルバートを助けた功績もあって、その評判がうなぎ登りだ。
更にアルバートは王城へ招待するとか言っているし、このままだと自由に旅をするのが難しくなるかもしれない。
しかし一番の心配はクレスだ。ここまで色々な話を聞いてきて、クレスが普通の子ではないと分かったきた。
フォーレンの騎士だというヴァレスが恭しく接するあたり、かなり上級貴族のお嬢様なんじゃないかと感じていた。
もし本当にそうだった場合、クレスを連れ戻そうと考える人が現れるかもしれないぞ。俺達の知名度が上がりクレスの顔が知れ渡れば可能性が高くなる。
もしかしたら俺の杞憂かもしれないが、それでもその可能性を高めるような真似はしたくないと考えていた。
「アルバートから城に招待されている話なんだが……」
「あー、あったねそんな話。ウードさんどうするの?
万が一クレスが何処かの貴族に見初められたら、クレスを取られちゃうかもよ?」
レイラが冗談交じりにそんな話しを振ってくる。そうか、そんな可能性もあるのか!それでクレスが幸せになるならいいが、平民育ちのクレスにそんな世界で幸せになる想像がつかない。いや、それ以前に俺とは会えなくなる可能性が高い。それは、無理だ!主に俺が!!
「それは断じて許さん!!」
「いやいや、冗談だから!
ウードさん、本気に取らないでよ!」
「本当にウードさんは、クレスが好きですわよね。
うちの父もそうですが、まだまだ子離れ出来そうにないですわね」
ふふふ、と笑いながらマリアがそう言って茶化す。仕方ないなぁと言うような顔は、同じ子離れ出来ない親を持つ自分と重ねているみたいだ。
「その話は置いといてだ、このまま国賓扱いで招待されると今後の旅が自由に出来なくなると思ってな。だからそれを避けるために断ろうと思っているんだ」
「でもそんなことして大丈夫なの?
仮にも王子様からのお誘いを断るだなんて、逆にまずいんじゃない?」
「確かにレイラの言うことは、もっともですわね。
断るにしても納得のいく理由がないといけませんわ」
確かにそうだよな。しかし、もしクレスが有名になって親族が現れて引き取りたいと言われたら困るとか。言ったら、俺がクレスを攫ったみたいに思われかねない。
『ウードよ、それこそ魔人のせいにすれば良かろう?
奴らをヴァレス達が追っているが、色々なところで暗躍しているようだ。奴らに見つからずに行動するのには大々的な催しは避けたい』
ヘルメスの言う通りだな。あの魔人とかいうのは、クレスの銀色の魔力を見ると驚いた反応をする。
何かしらの因果関係が有りそうだよな。
「マスター。そういうことなら、私が話をしておいてあげるわ」
「リーヴァが? 大丈夫なのか?」
「ええ、もう私の存在はギルドを通して大陸中に通達されたらしいわ。姿見をつけて、間違って討伐しようとしないようにだって。だから、私が行けば理解されるはずよ?」
「そうか! それなら頼んでいいか?」
「ええ、任してマスター。きっとうまくいくわ」
そう言うと、すぃーっと飛んでいくのが見えた。
外では、守護竜様だと騒ぐ声が上がっている。確かにいつの間にか知れ渡っているみたいだ。
この分なら、俺のこともギルドに通知されているだろうしリーヴァを連れていても問題は起こらないだろう。
あとは、クレスが目立ちすぎないように俺がもっと活躍しないとだな。
とは言っても、結局戦うのはフェーンやリーヴァになるだろうけどな。
「ウォンッ!!」
「そうだな、エースもいるな」
最近魔物相手ばかりだから狩りもさせてないな。どこかで獲物になりそうなやつを見つけて、狩りをさせないとだな。
狩猟は彼らの本能に依存するから、働かせないとストレスになる。
まぁ、こうやってもふもふするだけでも楽しいのだけどね。
おや、毛が寝てる場所があるな、どれどれ。
「ウードさーん、エースの毛繕いしている場合じゃないでしょ?
リーヴァが戻ってきたら出発するんだよね?」
「ああ、そうだな。
逆に言えば、戻ってくるまではゆっくりしてていい。
三人で買い物でも行ってきたらどうだ?」
そう言って、買い物に使いやすいように銀貨をジャラジャラと渡す。
「お父さんいいのこんなに?」
「いつまたこの町に来るのか分からないからな。たまには三人でゆっくり買い物でもしておいで」
「わー!ウードさんありがとう!」
「では、早速出かけましょう!
さぁ、早くっ!」
「うん、行ってきまーす!」
「ああ、気をつけてなー。
暗くなったらご飯食べに行くからそれまでに戻ってこいよー」
「はーい!」
三人はわいわいとしながら出掛けて行くのだった。
俺は一人になったので、エースの毛繕いをしつつ旅の準備をひとり始めるのだった。




