国を護った竜
「まさか、伝説は本当だったのか?!
全員、武器を収めろ! 絶対に手を出すんじゃないっ!」
ギルドマスターと言われた男は、指示を出しつつ冒険者たちをかき分けて前る。
冒険者達は困惑しつつも、言う通りに武器を収めつつことの成り行きを見守った。
「あんたが、守護竜様の使いか?」
「へっ? 守護竜?」
「ふふっ、マスター。はるか昔に私がそう言われていたのよ」
俺の疑問にリーヴァが答えた。
どうやら、この国ではリーヴァはそう言われているみたいだな。この国とリーヴァはどんな関係があるだろうか?
「やはり本物なのか! まさか、俺の代で本物に会えるだなんて夢を見ているようだ」
すると、ギルドマスターはその場に跪いてリーヴァに挨拶をした。
「お初にお目にかかります守護竜様。
私はこの町の冒険者ギルドを任されていますミドラと申します。
我々は貴方様がこの国にお帰りになるのをお持ちしておりました!」
「ふふ、大袈裟ね。でも、覚えている人間がまだいて良かったわ。
私は海神竜リーヴァ。今の主である、ウードにより封印が解かれてこの地に再び来れて嬉しいわ。
ギルドマスターさん、よろしく頼むわね」
「はっ、お任せください!」
それを見た周りの冒険者達もその場に跪いていく。
凄い光景だな。こんなに沢山の人が跪くのを目の前で初めてみたよ。
その中を通って中に入るのはちょっと気まずい。
「リーヴァ様、裏手に広い場所がありますのでそちらに案内させます。
ウード殿はこちらにどうぞ」
「分かったわ。では、マスター後でね」
部屋に入る前に、一度身分証を確認された。本当に冒険者なのか確認するのだという。
確認が終わり職員に案内された俺達は、奥にある応接室に案内された。
ふと視界に違和感を感じ、右肩を見る。いつも通りヘルメスが浮いているだけかと思ったら、その隣にはなんか見慣れた水の球が浮いていた。あれ、これって……。
「ね、お父さん。これって何?」
「ああ、これはリーヴァじゃないか?
ほら、いつも周りに浮いているだろ?」
「あー、そうだね!なるほど、これでお父さんを護っているのかな?」
「んー、どうだろ。それだけじゃない気がする」
暫らく応接室で待っていると、先ほどの冒険者ギルドマスターが中に入ってきた。
彼の隣には、なんだか偉そうな人が一緒にいる。
「待たせたなウード殿。こちらはこの町の町長のメネル殿だ。
この周辺を統治する領主の弟殿でもあるんだ」
「君がウード君か。……どうみても普通の冒険者だが、見かけには寄らぬものだな」
そう言ってから、俺に近づいて握手を求められたので、握り返して挨拶する。
「初めまして、ウードと言います。
東の大陸にある、カンドの町の冒険者で『ラ・ステラ』のリーダーです。
ある方より依頼の受けてここまで船でやってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします」
とりあえず、偉い人らしいからきちんと挨拶をしたつもりだ。
これでもカンドの町長には挨拶をしたことがあるからな。
「私は、娘のクレスです。
一緒に冒険者として旅をしております、よろしくお願いいたします!」
「マリアと申します。
ウードさんと同じパーティーのメンバーです。
どうぞよろしくお願いいたしますわ」
「レイラです。
同じく、パーティーメンバーです。
よろしくお願いいたします」
握手を求められたのは俺だけなので、三人はその場でお辞儀しながら挨拶した。クレスは相変わらず元気で可愛く挨拶している。うん、うちの娘はいつでも可愛い。
マリアは相変わらず気品があるし、レイラはさっぱりとした挨拶だが不快感は与えていないだろう。
「どうぞ、座ってくれたまえ」
町長に挨拶が終わると、この町の冒険者ギルドマスターのミドラに座るように促されて四人とも座った。足元にエースが寝そべり、寛いでいる。フェーンは、大きいので俺達が座るソファーの後ろで丸くなっていた。
「では、早速だが外にいるドラゴンについて話を聞きたい」
「リーヴァについてですね?」
「ああ、リーヴァ様はこの大陸にある、クルポセイド国の建国に関わっていると言われているドラゴンなのだ。初代王である、クルポセイド様はリーヴァ様の力を借りて魔族を撃ち滅ぼし、この地を治めたのだと伝わっている」
「そうなんですか?!
リーヴァって凄い竜だったんだな」
「それで、そのリーヴァ様とどこで出会ったんだ?」
「ああ、それはですね──」
それから、リーヴァとの出会いについて話をした。
船で移動中にクラーケンに襲われて撃退したが、海に飲まれて漂流して着いた島に封印されていたリーヴァがいた。
その封印を解くために契約を行い、今は自分の従魔としてついて来ていると伝えた。
「なるほど、そんなことがあったんだな。
大変だったな……。しかし、そこで契約者となれるとは貴殿は稀代の幸運の持ち主ですな!」
がっはっはと笑うミドラ。ちょっと自由都市のグランドマスターのガルバドに似ているな。
「お前の冒険者ギルドの情報を確認したが、リーヴァ様は自身の従魔には登録されていないみたいだな」
「ああ、なんせまだ契約したばかりだからな。
だから、冒険者ギルドに登録をしておきたいんだよ」
先ほど冒険者ギルドに連絡を入れて、俺達『ラ・ステラ』についても確認したという。
「なるほどな。だったらすぐに手続きをしよう。
規定だから、金は貰うけど大丈夫か?」
「え、何か問題あるのか?」
「ウード、登録料がいくらか知っているよな?」
「ああ、金貨一枚だろ?」
「うーん、お前たちのランクだと金貨一枚ってかなりの高額なんだが、余裕あるな」
そういやそうだったな。
俺の感覚がおかしくなったわけじゃないぞ?
ちゃんと覚えていたし、今までの報酬をちゃんと残してあるから問題ないだけだ。
でも良くよく考えたら、結構お金持っているな。
「足りなかったら特別立替えるつもりだったが、必要ないみたいだな。じゃあ、すぐに用意しよう」
そう言って、秘書らしき人に持ってくるように指示を出すミドラ。数分後には高級そうな箱に入った金属のリングを持ってきた。
「これをリーヴァ様に付けるといい。
リーヴァ様は裏庭で待って貰っているので、そちらに向かおう」
ミドラに案内されて、裏庭に行く。
リーヴァにしては珍しく、地面に丸く蹲って寛いでいた。
「待たせたなリーヴァ」
「ふふ、ずっとそちらの様子を見ていたから退屈はしなかったわよ、マスター」
俺たちを見つけると、ふわりと浮かび上がる。
最初に会った時よりも一回り小さくなっているとはいえ、こうやって見ると大きいんだな。
ヘルメスのように小さくなればいいのに。
『リーヴァの場合、今の状態で限界なのだ。
あれより小さくなった場合は、大きさを戻すのにかなりの魔力を使ってしまうのだ』
なるほど、そんな理由もあったのか。
リーヴァの場合は、砂漠のような乾ききった場所じゃない限りはそれほど消費しないみたいだ。
神獣はそれぞれで特性が違うんだと教えられたのだった。
「それで、こらからどうするんだ?」
「まずは、アルバートの護衛任務の報酬を貰いたい。それからは、彼らについて行くことになった」
「アルバートって、今日この港町に入られたアルバート殿下のことか?」
「ああ、やっぱ有名な人なの?」
「馬鹿かっ!あの方はこの国の第二王子だぞ?
本来気安く話しかけることすら出来ぬお方だ。まさか、失礼を働いてないだろうな?」
「ないない!そんなことしないさ。
なんか、お礼がしたいから城に呼ばれただけだよ」
それを聞いてミドラが口をぽかんと開ける。
そして、少し溜め込んでから叫ぶ。
「なんだってぇっ?!」




