神獣と神器
「マスターは神獣についてどのくらい知っているのかしら?」
「どのくらいって……、なんか凄い魔獣ってくらい?」
アララと小さいため息をついて、俺の隣に浮かぶヘルメスを見てさらにため息をついた。
「ヘルメス。マスターに何も伝えてないの?」
『ふん、こやつに伝えてもわかるまい。それよりも、戦闘で役に立つ情報を教えた方が効率が良いだろうよ』
つまり、俺では理解出来ないから言うだけ無駄って言っているのか?いくら教養が無いからって、それは酷くないか!?
『ふん、事実であろう? クレスやマリアなら少しは理解出来るであろうがな』
「ちょっと、遠回しに私も分からないって言ってる?!」
レイラも俺と同じ扱いを受けたのがショックらしく、ヘルメスに抗議するが軽く流された。
二人から比べれば勉強は出来ない方みたいだが、流石に俺と一緒にされるのは心外のようだな。
「はいはい、レイラも落ち着いてね。まずは話を聞こう?
リーヴァ続けてくれる?」
怒り心頭のレイラを宥めつつ、クレスが話を促す。
俺も落ち着いて話を聞くことにした。
「そうね、まずは神獣とは何かを話しましょう。
私達神獣は、それぞれ神様に創られた魔獣なのよ。
魔力が宿って生まれた魔獣とは、まずそこが違うの」
一般的に魔獣は、動物が沢山魔力を溜め込んで変化したものだと言われている。だから殆どの魔獣は、元の動物の姿に近いものが多い。
しかし、神獣は神様に創られた存在のため、どれとして同じ姿は存在しない。
たまにケイトスのように子供を生み出したり、眷属を次の神獣としてチカラを継承することもあるが、寿命が無い神獣は唯一の存在というわけだ。
かつては神様もこの大地住んでいたらしいが、ある兄妹の神様が戦争を起こしてしまった結果、傷ついた神様達は天にあるという神様の世界へ帰ってしまった。
その時に神獣達をこの地に神器と一緒に残し、その守護を任せているのだと。
リーヴァは『水神の宝杖アクアブランド』
フェーンは『炎槍レーヴァンティン』
そして、ヘルメスは…。
「ヘルメスの神器はね、今あなたの隣で浮いている杖よ。
それは『叡智の杖ケーリュケイオン』というのよ。かつては、知識と医学の神ヘルメス様が持っていたアーティファクトなのよ」
「これは、そんなに凄い物だったのかっ?!」
「そうよマスター。今は本来のチカラを失っているみたいだけど、紛れもない神器。だいたい、常に浮いてる杖なんか見たことないでしょう?」
「確かに……」
周りも何も言わないから、特に感じていなかったけどどうやって浮いているのか分からないよな。
ヘルメスや、他の神獣の本体がこの中に入っているらしいけど、どこにどうやって入っているのか。
考えれば考えるほど不思議な杖だ。
一瞬でも売ろうとしたのを反省しないとだね。
「そして、今地上にいる神獣は七体。
この七体は神様に作られた、原始の神獣と言われていたわ。どうやら、今の人間達は忘れてしまっているみたいだけど」
『既に千年の時が経っているのだ。あの頃とは何もかもが違うのだよ』
「それなのに、まだ『神の贄』がいるだなんて、運命の神様は相変わらず気まぐれなのね」
『ふん、あの方はあまり好かぬ』
運命の神様って、本当にいるんだな。
話のスケールが大きすぎて、もはやついていけないわ。
「それでね、マスター。神獣と呼ばれる魔獣は他にもいるけど、大抵は私達七体の眷属か神の戦争で命が尽きた神獣の生まれ変わりなのよ」
「ほうほう、それはお前達とどう違うんだ?」
「私達は、もっとも古くから生きている分そのチカラの格も上なのよ。だから、ケイトスの子供のオリバーよりも、上位の存在ってわけ」
「つまり、古くからいるから偉いっていうのか?」
「それだけではないわ、より神様に近い存在だからなのよ。
そして、そんな神獣を三体も契約しているのよ、マスターは。どういうことか分かってる?」
「え、なに。なんかまずいのか?」
急に自分の話になり、思わず焦ってしまう。
しかし、よくよく考えたら凄いのと契約しているんだな。
今まではなんとか誤魔化してきたけど、流石にドラゴンは隠しようがないぞ。
いくら小型になれるとはいえ、それでもかなり大きいのだ。
フェーンやヘルメスみたいには隠していられないだろうな。
「まずいどころか、私達を従えていればマスターテイマーと言われる日も夢ではないわ」
「マスターテイマー?」
今の俺はビーストテイマーとして登録しているが、それよりも上の職業なんだろうか?
「そう、全ての魔獣を従えた英雄に与えれる称号よ。
でもまぁ、今もあるのか知らないのだけどね」
分からないのかよ!って、それもそうか。
遥か前に封印されたんだ、分かるわけがないか。
『うーん、数百年前に現れて以来、そう呼ばれる人間はいないんじゃないかな?
そもそも、ドラゴンを従えれる人間は殆どいないからね』
「やっぱりいないのね。マスター、次の町に入ったら冒険者ギルドだったかしら?そこで正式に登録すると良いわ」
そこでずっと話を聞いていたらしいアルバートが声をかけてきた。
「失礼とは思いましたが、話は聞かせていただきました。
リーヴァ様は、あの伝説の神獣様だったのですね。
それにそこにいらっしゃる、二体の魔獣も神獣とは……。そうだとするなら、王国に着き次第あなた達を国賓として招きます」
「んん??」
「へ、えええええっ!?」
「やっばいね、マリア」
「ど、どどどどうしましょうかっ?!」
突然の話に、混乱する俺たち。
そんな俺達を差し置いて、リーヴァが勝手に返答する。
「ふふ、よろしく頼むわね。アルバート王子?」
「はっ、この血にかけましても!
おいっ騎士団長、話がある!ついて参れ」
「?! はっ、殿下。仰せのままに!」
いつもの人の良さそうな表情から一変し、凛々しい気品のある佇まいに変わるアルバート。
王族とは知っていたが、まさか本物の王子様とは。
こうして、陸に降り立つ前に大変な事になってしまうのだった。




