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合流

 準備が整い、リーヴァに船を引いてもらい出航した。

 既に夜になっていたので普通なら座礁の心配があるので出航しないのだが、リーヴァの水魔法で船を保護したので問題が解決した。

 船全部を包み込める膜を張れるとか、流石は水竜だよ。

 マリアなんか、凄すぎますとか言って尊敬の眼差しで見ていたな。


 しかもこの魔法の効果は、船を守るだけじゃない。

 なんと船の移動速度が格段に上がるのだ。

 しかも風がなくとも自由自在に針路をとるのが可能だ。


 だから、普通ではありえない最短ルートで北の海岸に着いたのだった。


「リーヴァ様は、流石はドラゴンですね。魔獣を使った操船ですらここまでの速度は出せないですよ。島の主というのも納得です」


 アルバートも絶賛するほど凄いらしい。

 もちろんオルカ達も頑張ってくれていたのだけど、いつもより自由に泳げたらしく上機嫌にギュッギュと鳴いている。


「まだ魔力がほんの少ししか回復してないけど、予定通りに着いてよかったわ。途中大漁だったのが幸いしたわね」


 甲板にはここに来るまでにうちあげられた海の魔魚や、魔獣が大量に転がっている。

 今も忙しなく船員たちが解体作業に勤しんでいる。

 全てリーヴァが仕留めた獲物だ。

 獲物を見つけると、魔法を使い一撃でしとめてしまう。

 しかも魔力だけ抜き取り肉は食べなくて良いらしく、大量の肉が確保されたのだ。


「しばらくは食べ物には困らなさそうだな」

「うんうん、これから大陸までかなりかかるみたいだから、良かったよね!でも、リーヴァがあっという間に倒しちゃうから……私たちの出番が本当にないね」


 困った顔をしながら、そう言っていたが移動中くらいは暇な方がいいだろうさ。

 そう考えていたのも束の間、錨を降ろして着岸すると、近くで争うような声が聞こえてくる。

 どうやら、騎士団が魔物と交戦中のようだ。


「クレス、どうやら出番があるみたいだよ?」

「うん、レイラ援護しに行こう!」

「私も行きますわ!」


 三人は直ぐに岸に飛び降り、騎士達の援護に向かう。

 俺も彼女たちに続く為に船から飛び降りた。

 船長と航海士を守るように陣を展開する騎士たちを、黒い大きなトカゲのような魔獣達が取り囲んでいる。


 かなり頑丈な鱗で守られているのか、騎士達の剣が弾かれて火花を散らしている。

 剣が駄目なら魔法でと、魔道士達も魔法で応援しているけど、魔力が枯渇しているのか強い魔法が使えず決定打にかけるようだ。


「そこどいて! 『高速剣』!」

「みんな伏せて! 『雷撃』!」


 レイラとクレスの息のあったコンビネーションが上手くはまり、魔物達を一掃する。


「大丈夫ですか? 今治療しますね」


 そしてマリアが怪我人に駆けより、魔法でその傷を癒した。

 突然現れた援軍に呆気を取られた騎士達だったが、俺達だとわかると口々に感謝を述べて安堵の表情を浮かべた。


「助かったぞ、感謝する。しかし、一撃であの魔物達を倒すとは中々やるな」


 騎士団長が皆を代表してクレス達に感謝を伝えに来た。

 流石に夜通し戦っていたせいで、その顔には疲労が濃く出ている。


「いやいや、私達なんかまだまだだよ!」

「そうだね、さっきまでリーヴァの狩りを見せつけられていたから、これくらいじゃ自慢出来ないよね」


 なんの事か分からない騎士団長は、不思議そうな顔をしつつも、それでも俺達を救ってくれたのは君達だからと言って去っていく。


「おお、ウード君。君達も無事だったか」

「はい船長、あなたこそ無事で何よりです」


 満身創痍の船長と再開の握手を交し、お互いの生存を喜ぶ。

 やはり何人かは海に落ちたまま帰らぬ人となったようだが、あれだけの嵐と大渦に巻き込まれて生存者がこれだけいるなら奇跡と言えるだろう。


 安全を確保する為にすぐに船長や航海士など遭難者たちを船に乗せた。


「よく無事だった船長!」

「アルバート様も良くご無事で! 聞いてはおりましたが、この目で見るまで心配しておりました」


 船長と航海士の無事を喜ぶアルバート。

 そのまま海に放り出された後の報告をしていた。


 あの後、北の海岸に漂着し生き残った船員を集めて身を潜めていたらしい。

 戦闘員はいなかったが、それでも屈強な海の男達ばかりなので、たまに現れる魔物からなんとか身を守ることが出来たみたいだ。

 だがそれも限界が近づいていたところに、騎士団長達が現れて合流出来たようだ。

 一緒に来たリーヴァが近くにいる魔物を一掃してくれたおかげで暫くは安全だったみたいだが、先程の魔物達が現れて再び窮地に陥ったが俺達の救援が間に合い助かったというわけだ。


 ピンチの連続だったわけだが、なんとか間に合って良かったと思うよ。

 緊張の糸が切れたせいか、殆どの船員は船に乗船すると倒れてしまい救護室に運ばれたほどだ。

 そう考えると船長と航海士の二人は凄い精神力の持ち主だな。

 ただ流石にすぐに出発するのは厳しいので、沖に出てから夜が明けるまで休憩にするとアルバートより指示があった。


 朝まではリーヴァとフェーンが見張りにつき、船員たちも交代で見回りをしてくれた。

 それにより少し余裕が出来たので、俺達も交代で休憩を取れたのは良かった。流石にクレスたちも連戦だったからな。


 朝になり、平和を告げる鳥が鳴く。

 

 必要な人材は揃ったから、これで魔の島ともお別れだ。

 それぞれの配置につき、出航の準備をする。

 オルカ達も、リーヴァの獲った肉のお陰で元気いっぱいだ。

 すっかり傷も癒えて、嬉しそうに泳ぎ回っている。


「よし、出発しよう! 頼むぞオルカ、リーヴァ!」


 オルカ達は嬉しそうにギュイギュイ鳴いて応えてくれる。

 リーヴァも「ふふ、任せて主様」と言いながら、器用にウインクをしてきた。

 どこで覚えてくるんだそういう仕草。

 いや、千年以上生きているんだから不思議ではないのか?

 なにか釈然としないものを感じながらも、船を出すのだった。


 島を囲む結界が無くなり、すんなりと外洋に出ると嵐はもう消えていた。

 見渡す限り晴れ空で、遠くにある島もはっきりと見える。


「うむ、これなら問題なく国に帰れそうですな殿下」

「そうか、その言葉を聞いて安心したぞ。では、船長、ウードさん頼んだよ」


 アルバートはその言葉を聞いてやっと安心したのか、少し休むと言って自分の部屋に戻っていく。

 トラブルの連続で張り詰めていた気持ちが、やっと解放されたようだ。


 さて、任されたからにはきっちり仕事しないとだな。

 目的地は行ったこともない大陸だ。

 そこでは色んなものが見れるに違いない。


「お父さん、いよいよだね」

「ああ、俺らの冒険の旅がやっと始まるんだな」


 晴れた海原に一際高いオルカの鳴き声が響く。

 親子で肩を並べて、これからの新しい旅路に胸を躍らせるのだった。

 

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