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脱出準備

 リーヴァを仲間に迎え入れた事により、脱出の目処が立った。

 彼女の話では、この島から北に向えば大陸があり、そこがアルバートが目指す王国になるらしい。

 俺たちが漂流して辿り着いたのが島の南側なのでどちらにしろ一度船を北側に持ってきた方がいいだろうという事になった。


 ただ、流暢な事を言ってると船長ならびに他の全員達が魔物に食べられてしまう可能性がある為、二手に分かれて行動する事にした。


 まず、船に戻るのは俺らとアルバートだ。

 船を動かすためには俺と彼がいないと無理だからだ。


 そして、北の沿岸に向かうのは騎士団達に行ってもらう。

 彼らであれば到達出来るだろうという事で、先行してもらう。

 道案内にリーヴァも同行するが、到着したら飛んで南側に来る予定だ。


「まさか食べられたりしないよな?」

「失礼ね、人間は食べるところが少ないから食べたりしないわ。そんな悪食じゃないのよ?」


 と、竜の顔でニコッとしていたが、怖いだけだ。

 本人は冗談のつもりだろうが、そう聞こえないので騎士団長すら顔が引き攣っていた。


『リーヴァよ、お主のその悪趣味な冗談は笑えないのだ』

「あら、場を和ませようとしただけじゃない。貴方こそもう少しユーモアを磨いた方がいいんじゃない?」


 やっと冗談だと分かった騎士団の方々はほっとした表情になったが、流石にこのままだとギクシャクしそうだな。


「リーヴァ、皆さんに危害が及ばないようにちゃんと守ってくれよ?」

「もちろんよ、マスター。ちゃんと皆を無事に送り届けてあげるわ! まぁ、私がいれば魔物たちも近づけないから何も起こらないと思うわよ」


 流石この島の守護者だけあるな。

 二回りくらい小さくなったとはいえ、ドラゴンなのだ。

 わざわざ襲いかかる魔物なんて、命知らずな魔物はいないだろう。

 うん、これなら安心して任せられるだろう。


 それに俺との契約があるから、命令に反する行動は基本しないらしいし。

 『絶対出来ない』じゃないところが怖いけどね。


 俺たちはアルバートを守りつつ、南側の海岸まで戻ってきた。

 道中はかなり急いでいたので、ほぼダッシュで森を駆け抜ける。

 それなりの数の魔物が集まって来ていたが、クレス達がサクサク片付けてしまったので、それほど時間もかからずに退治出来た。

 王族貴族のアルバートはかなりきつそうにしていたが、それなりに鍛えているらしくなんとか着いてきていた。


「ウードさんのパーティは本当にCランクなのですか?

 我らの騎士団でもここまで早く処理できないですよ?」

「貴方に褒められたと知れば娘も喜ぶと思います。後でお伝えします、ありがとうございます」


 言われてみれば、戦う度に倒す速さが早くなっているな。

 特にクレスはほとんど一撃で倒している。

 あ、よく見たら剣がうっすら銀色に光っているから、銀の魔力を剣に纏わせつつ戦っているのか。


『クレスの才能は凄まじいな。戦えば戦うほど魔力の扱いが上手くなっている。まるで戦女神のようだ』

「戦女神?」

『うむ、遥か昔にいた銀の女神の眷属をそう呼んでいたのだ』

「へぇー、もしかしたらその末裔だったりしてな」

『……なるほど、その可能性があるか』

「え、まじで?」

『さて、全て片付いたようだぞ?船を動かす準備をするのではないのか?』

「ああ、そうだったな。よし、オルカ達を船に結びつけよう!」


 クレスの事は気になるが、まずはやる事をやらないとだ。

 そのうちリーヴァが戻ってくるだろうが、それまでに船にオルカ達を船と魔法の鎖で繋げて船を動かそうか。


 俺が準備している間に、アルバートが船員達に北に移動することを伝えていた。

 みな、準備を急ぐため慌ただしく動き回る。

 クレス達は出発まで魔物に邪魔されないように、浜辺に近づく魔物の駆除にあたった。


「無理して怪我しないようにな!」

「うん、分かっているよ! お父さんも頑張ってね!」

「ウードさーん、しっかりねー!」

「ウードさん、二人の治療は私がしっかりやりますので、安心して準備してください」

「ああ、三人とも任せたからな!」


 船の上から三人に手を振り見送ると、自分の仕事に戻る。

 幸いオルカ達は回復していて、動けるようになっていた。

 ギュイギュイ鳴いて懐いてくるので可愛いのだが、巨体の為あまり擦り寄ると船がギシギシいうのでちょっと船が壊れないか心配になるよ。


 そうそう船の損傷に関しては、応急処置がされていて動かす分には問題無いとのこと。

 船長がいない中、船員達が頑張って修復していたらしい。

 さすが王宮御用達の船だ、船員の練度もかなり高いらしい。


 しかし、航海士と船長がいないと目的地に着くのは大変らしいので彼等が無事にいてくれる事を祈るほかない。


「まーすーたーーー!」


 ある程度準備が終わりそうな頃、リーヴァが空を浮いてやってきた。

 羽ばたいてないのに空を浮いているのは、水を魔力で操っているかららしい。

 よく見ると、うっすらと水の膜が見える。

 ふよふよとゆっくりと空から降りてくるリーヴァ。


「リーヴァ、ご苦労だったな。無事に送り届けたか?」

「ええ、もちろんよ。目的の船長と航海士も生存していたわ。 漂流中に犠牲者はそれなりに出たらしいけど、なんとか頑張ったみたいね」


「そうですか!船長と航海士さえいれば国に帰れますね。なんとお礼を言ったらいいか」


 そこで丁度アルバートが戻ってきた。

 彼にとっては朗報だったみたいで、表情に希望が浮かんでいる。

 

「亡くなった者がいるのは痛ましいが、あれだけの嵐に巻き込まれて生存者がいたのは奇跡に近いでしょう。

 だからこそ、亡くなった彼らの家族には十分な補償を出す事にしましょう」


 確かに、あんな渦に飲み込まれて生きていたのは今考えたら信じられんな。

 色々あり過ぎて感覚がおかしくなっていたみたいだな。

 しかしこんな緊急時に、亡くなった人の事を考えられるとは王族とは民の事を常に考えているんだな。


「さて、マスター出発する?」

「ああ、もうすぐ準備が完了する。クレス達を呼び戻して船を出そうか」

「では、私が呼んできてあげるわ」


 そう言うと、またふよふよと浮いて船を降りていった。

 ドラゴンの一種だというのに、威厳が感じられないのはあの移動の仕方のせいだな。

 丸みのある体に、小さめの翼に愛嬌を感じるようになってきた。


「ドラゴンって、もっと凄まじい勢いで飛ぶと聞いていたのですが……」

「アルバートさん、あれはただ浮いているだけらしいですよ」

「なるほど、だからあんなにゆっくりなのですね」


 感心したように呟くアルバートを余所に、「そもそも翼で飛べるのか?」と疑問を浮かべる俺であった。


「お父さーん!!」


 気がつくと、リーヴァの背中に乗ったクレス達が大きく手を振っていた。

 その姿にほっこりしながらも、ちょっと羨ましくおもう俺であった。 

 

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