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水竜神との契約

 目が覚めると、心配そうにしているクレスの顔があった。

 周りを見るとマリアもレイラもいる。

 二人は俺が目を覚ましたのを見て、ほっと息をついていた。


「お父さんっ、良かった!

 また絶対無茶したんでしょっ!!」


 うっすらと涙を浮かべて、少し怒った顔しているクレス。

 はは、こんなんじゃさっきの女性にも怒られそうだな。

 もっとしっかりせねば。


「大丈夫だよ、ギリギリではあったけどヘルメスがセーブしてくれていたんだ。失敗するはずないさ」


『ふん、言ってくれるわ。しかし、本当にギリギリだったぞ?』


「そうよー、ここで倒れられても困るわー」


 そしてかなりの頭上から、俺を覗き見る顔があった。

 しかもそれはドラゴンの顔だ。


「うわっ!?…ってリーヴァか」


「人の顔みてうわっとか酷くなぁい?まー、人じゃないけどね」


 意識もハッキリとしたところで起き上がる。

 というか、クレスに膝枕されていたようだ。

 娘の膝枕とか嬉しいような恥ずかしい様な複雑な気分だ。


 何とも無い振りをして起き上がると、皆が集まっているのが分かった。

 どうやら、心配してくれていたようだ。


「ウードさん、意識が戻りましたか。

 良かった、貴方がいないと船を動かせなくなりますからね」


 なるほど、確かにこの島から出るならオルカ達がいないと沖にも出れない。

 それに、島の主であるリーヴァが俺以外に従うとは思わないだろう。

 なんせ、ここにいるビーストテイマーは俺だけだ。


「はは、心配掛けましたね。

 魔力が切れただけなので、しばらく休んでいれば大丈夫です。

 動けるようになったら、対岸を捜索しましょうか」


「そうだった、船長達がいるかもしれない。

 無事でいてくれればいいのだが」


 アルバートは、直ぐに騎士達に指示を飛ばす。

 先程の戦いでまだ疲弊しているだろうに、直ぐに準備に取り掛かる騎士達には頭が下がる思いだな。


 貴族に仕えるのはとても大変なんだろうな。

 そんな益体のない事をボヤっと考えていると、しびれを切らしたかのようにリーヴァが話しかけてきた。


「そろそろ、私と話せるかしら?」


「ああ、何かあったのか?」


 冷静に考えたら目の前にいるのはドラゴンで、その口をあければ俺なんかペロリと食べてしまえる相手だ。

 普通なら恐怖で縮こまってしまうだろうが、一度同化したせいか信頼する友人と話している感覚になる。

 これも『神降ろし』の影響なんだろうか?


「何かあったじゃないわよ!

 このままじゃ、私は魔力が枯渇しすぎて水の泡になりかねないのよ!

 何とかしてくれないかしら?」


「何とかって、俺に出来ることなんてないぞ?」


「嘘おっしゃい。ヘルメスに聞いたわよ?

 ヘルメスも、フェーンも魔力を貯める為にあなたと契約しているって!だから、私とも契約しなさい」


 なるほど、俺が意識を失っている間にそんな話をしていたのか。

 しかし、こちらとしても契約してくれるのは助かるな。

 なんせ相手は本物のドラゴンなのだ。

 ビーストテイマーとしては、最高峰の相棒である。


 契約は、テイム(手懐け)と違いこちらの意のままに操ることは出来ない。

 その代わりに、本人が自由に動けるため強い魔物を従える場合はその方が都合がいいのだそうだ。


そして、テイムよりも強力な絆で結ばれる為、以心伝心が可能になり、お互いに相手を裏切る事は出来なくなる。

 つまり一蓮托生の関係になるのだ。

「もし断ったら?」


「そんなのモチロン決まっているじゃない!

 あ~ん」


 楽しそうに口を開けるリーヴァ。

 やらないと分かっていても、流石に冷や汗が出る。

 しかし、なんとも人間くさい仕草をするドラゴンだな。


「ははは……、じょ、冗談だよ。

 俺としても、その申し出は大歓迎だよ。

 俺と契約しようリーヴァ」


「その言葉を待っていたわ!

 ───我は、海の神テティスの使い。我を遣いし神より授かりしその名はリーヴァ。我とウードは盟約を結び、ウードを主と認める!さぁ、私の絆の証を受け取りなさい!」


 次の瞬間、リーヴァが眩く光り辺りがその眩しさに視界が消える。

 光が収まると、そこには一回りも小さくなったリーヴァの姿があるのだった。


「あら、思ったよりは小さくならなかったわね」


 ふよふよと空を泳ぐように浮かぶリーヴァ。

 確かに先程よりも小さくはなったが、それでも俺よりも頭一個分くらい大きい。

 流石に丸呑みされるほどでは無いが、弱い魔獣ならひと噛みで倒せそうだ。

 さらに辺りには彼女を守るように水の球が浮かんでいた。

 それは、いつでも水魔法を繰り出せるという事に他ならない。


「確かにフェーンよりも大きいな。

 だが知恵の杖に君の魔力が流れ込んだから、契約は成功したということか?」


『それは問題ない。

 それに自由に動き回れる今ならば、補給にそれほど困ることはあるまいよ。

 なにせ、こやつは大食らいだからな』


 大食らいだと?!

 それだと逆に大変なんじゃないか?


「もう、私を穀潰しみたいな言い方辞めてよね!

 そこは安心していいわよ? 自分のご飯は自分で取るから」


 本当か?心配になってきたぞ……。

 と思っていたが、直ぐに大丈夫の意味が分かった。


「あ!あの鳥とか栄養ありそうね!

 えいっ、"ラピットショット"!」


 そうリーヴァが唱えると、水の球から鋭く水が発射されて大きな鳥を射抜いた。


 バシュッ、ドサッ。


 え?でっかい鳥が一撃かよ?!


 なんとそれは空の捕食者と言われる、ヘルコンドルであった。

 その大きさは、今のリーヴァに匹敵するほど大きい。

 そのヘルコンドルは、さっきの一撃で頭を射抜かれて絶命している。


「お前……、凄いなっ!!」


「あはははっ! もっと褒めていいのよ?」


『ふん、すぐに調子に乗る悪い癖も、昔のままらしいな』


「なによー!アンタこそ、小さくなったって言うのに口うるささと態度の大きさは変わってないじゃない!」


 二人(?)でシャーッとグァーオと威嚇して、お互いを貶しあっている。

 つか、お前たち実は仲良いよね?

 息もピッタリだし、熟年の夫婦の会話のようだぞ……。


「「コイツと一緒に(するな!)しないで!」」


「はい、スミマセンデシタ……」


 ヘルメスとリーヴァに凄まれて、感情のない返事で返す俺だった。


「お父さん、そろそろ行かない?」


「ああ、そうだったな!」


 すっかり二人の掛け合いにより次の目的を忘れるところだった。

 忘れているといえば、もうひとつあったな。


「なぁ、この杖って貰っていいのか?」


「ああっ!!忘れていたわ。

 ウードにはその杖があるし、…というか魔法の適性がないから持っていても意味が無いわね。

 うーん……。あら?そこのオレンジの髪の子は適性があるわよ」


「マリア事か?

 あの子は治癒と氷魔法が使えるぞ?」


「あら、それなら水魔法も大丈夫そうね?

 マリアちゃん、その杖持ってみなさいな」


「は、はい!」


 言葉を話すドラゴンにまだ慣れない様子のマリア。

 しかし、俺と契約しているのは分かっているので、素直に頷きその杖を握りしめる。


 すると持った瞬間に魔力がマリアから溢れ出した。

 その勢いは凄まじく、マリアの衣服が煽られてはためいている。


「うっ……ああっ!!」


 あまりの勢いに呻くマリア。

 すると、詠唱もしていないのに地面に魔法陣が浮かび上がった。


「一体何が起こってるんだ?」


「まぁ、マスターは黙って見ていなさい」


「マスター?」


「あら、嫌だったかしら?

 私と契約したご主人様なんだもの、貴方が私の主人マスターよ?」


「なるほど、そういう意味か。

 それで、あれは大丈夫なんだな?」


「もちろんよ!

 さぁ、マリアちゃんそのまましっかり集中するのよー!

 水を意のままに操るイメージを頭に浮かべて!」


 言われるままに、目を瞑り両手でしっかりと杖を持ち魔力を杖に集中させている。

 流石俺と違って魔法の才能があるだけあり、魔力のコントロールも段違いに上手いな、

 暴走していた魔力があっという間に収まった。


 そして。


「はい、そこで一気に空に向かって解放しなさい!」


「はい!!」


 マリアが魔力を解放すると、天に向かって一頭の竜が昇っていく。

 いや、あれは水なのか?

 物凄い勢いで現れた激流がうねり、まるで竜のようだ。


「うんうん、上手くいったわね~。

 それがその杖の固有魔法、『水龍牙』よ?

 どう、凄いでしょう?」


 まるで自分が作ったかのように自慢しているが、確か自分の神様が遺していったものだとか言ってなかったか?

 と疑問に思っていたが、マリアは違うことが気になったみたいだ。


「すいりゅうが? どういう意味なのですか?」


「ああっ!『水龍牙』っていうのはね、水のドラゴンの牙って意味なのよ~。

 本当はさっき魔法は、敵に向かって放つのだけど、当たった相手を水流で押し潰しつつ、体に穴を空ける程の高水圧で相手を貫くのよ」


「それは、なんとも凄い魔法ですわね。

 ただ、たった一回使っただけでかなり魔力が消費されますわ」


「しょうがないわ、なんせ神様が創った取っておきの魔法なのよ。

 そうだわ、その杖は魔力を貯めておく事が出来るのよ。

 だから普段からその杖に魔力を溜め込んでおきなさい。

 そうすれば、最大三回くらいまで使えるようになるはずよ」


「なるほど。分かりましたわ。

 今日から徐々に貯めておきますわ」


 こうして俺達は、新しい仲間のリーヴァと新しい神器を手に入れたのだった。

 

 




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