水神の竜リーヴァ
「解放しろって?
でも、どうやってだ?」
普通の人なら、びっくりして飛び上がるところだが、なんせこれで3回目だ。
慣れた…訳じゃないけど、驚きはしない。
それにヘルメスの知り合いと聞いた時に、そんな事になるかもと思っていたからな。
「話が早くて助かるわー。私の封印を解くのは、ヘルメスなら分かるはずよ。
ただ、それをやろうとするとガーディアンが現れるかも知れないわ」
「ガーディアン?なんだそれ」
「私を封印した邪悪な神が、置いていった氷の悪魔よ」
「悪魔だって?!」
「そう、悪魔よ。そこにある宝杖が人間の手に渡るのを恐れたみたいね。
ただ、私を滅ぼす事が出来ないのが分かって私をここに封印した後にその杖が人間の手に渡らないように悪魔に護らせているのよ」
「悪魔って強いのか?」
文献に名称が出てくるだけで、実際の強さが分からない魔物である悪魔。
存在すらお伽噺くらい疑わしいのでイマイチ実感がわかない。
「とっても強いわよ。そうね、今まで出て来たのを見る限りオーガロードくらいかしら?
魔法を使ってくるし、タフだから倒すのが面倒なのよね困ったわ~」
困ったわ~とぼやいているが、言う割には口調が軽いぞ!
随分とフランクな話し方をするが、相手は神の遣いである神獣だ。
下手な態度を取る訳にはいかないが、突っ込まずにはいられない!
「いやっ、困ったわ〜じゃないよ!
なんとかならないのか?」
「どちらにせよ倒さないといけないんだし、ヘルメスと協力して倒しなさいな。
なんせ、智慧の神様なんだから、ね?」
『ふん、お主は相変わらず勝手な事ばかり言うのだな。
だが、このままでは島を出るのも難しいという事なんだな?』
「あら、分かっちゃった?」
「なんだ?話が見えないぞ。
ヘルメス、それはどういう事なんだ?」
何故島から出る事と、ガーディアンを倒す事が繋がるんだ?
俺にはサッパリ分からなかった。
しかし、意外な所から回答が導き出された。
「もしかして、そのガーディアンが関係してるの?」
「あら、良くわかったわね。
そう、ガーディアンがいる限り余程の運がない限りは出る事が出来ないのよ。
この島は悪神によって封印されているのよ」
「そこまでしてこの宝杖を封印しておきたいって事か?」
「あなた達人間は知らないでしょうけどね、この世界には神々が遺したアーティファクトがいくつかあるの。
それを手にすれば、神のチカラを使えると言われているわ。
だから、人の手に渡って自分達を脅かす存在を封じておきたかったのでしょうね」
神のチカラか。
まるでクレスの銀のチカラのようだな。
「あれはそんな凄い物なのか…」
「当たり前じゃない!私のような神獣と言われる神の眷属が守っているのよ?
それにこの神殿は、この宝杖を守るために私が仕える神様が作ったんだから!」
『本来なら、神に選ばれた人間が訪れた時に授ける事になっていたのにその前に別の神に封印されちゃうとか酷いと思わない?』とかぶつくさ言っていたが、俺らの耳には入ってこなかった。
今目の前にある物は、正真正銘のアーティファクトだと分かったからだ。
「そんな凄い物なのかあれは。でも、それと島から出るのにどう関係しているんだ?」
「あの宝杖を取る事が出来たなら、その役目は終わり。この島に掛けられた結界が解かれるわ。
でも、あの宝杖がある限りは島の結界が解かれない」
「つまりは、安全に島を出るにはあの宝杖を手に入れないと駄目という事か」
「そう言う事よ!」
「でも、そんな事を俺らに話しちゃっていいのか?」
「あら、この話はこの神殿に来た人間全員に話をしているわ。
ここに辿り着いた時点で、あれを手にする資格はあるからね。
ただ残念な事に、あのガーディアンを倒せたものはいないのよね…」
俺らにはガーディアンに勝つか、またあの嵐を抜けて脱出するかの二択しかない事になる。
それって、つまりは島に入った時点で人生詰んでる!?
『ふん、安心するがいい。我とフェーンがいればガーディアンを一時的に抑える事は可能であろう。
前よりも魔力は溜まっている今ならば、あの宝杖を手にする事も可能だろうよ…多分な』
そこは言い切ってくれよ!?
「お父さん、なんとか私達で抑えて見せるよ!」
「そうそう、これでも修行で前よりは強くなったんだ!
わたし達に任せなって!」
「もうレイラはいつも楽観的なんだから!
でも、やらないと島から出れないならやるしかないですよウードさん」
娘たちはウインドで新しい魔法を覚えてやる気に満ちているようだな。
ガーディアンがどのくらい強いのかイマイチ分からないけど、ヘルメスやフェーンもいるんだしなんとかなるだろう。
それよりも、気になるのは…。
「で、ヘルメス。リーヴァの封印はどうやったら解けるんだ?」
『リーヴァの封印を解くには、あの宝杖を使ってあの魔法陣を解除すればよい。
ただ、気になるのはあの杭だな…』
「あっ、気が付いてくれた?コレがあるせいでどんどん魔力が抜けていくのよね。
人間なんかが触ったら、一瞬で魔力が失われて干物になっちゃうかも?」
おいおい、随分なものだな。
そんなものどうやって外せばいいんだ?
「それにしても、そんなものを打ち込まれても死なないとか、良く生きているな」
「あー、それに関しては…。ほら、たまーに近くの魔物も近づいて来るから…」
ここに棲みついている魔物達も、元々は善良な動物だったらしい。
しかし、悪神がすべてを魔物に作り変えたのだとリーヴァから聞く事が出来た。
但し、この場所にはリーヴァが居る為、本能的に恐れて近づかないのだという。
そして稀に迷い込んできた魔物はパクリといただいて魔力に変換しているらしい・・・。
「え、動けるのか?」
「え、そりゃあ首くらいは動かせるわよ?」
にゅうっと首を伸ばし、目の前に顔を寄せるリーヴァ。
ガバっと開ける口の中は、鋭い牙がずらりと並んでいた。
「お、俺を食べる気か!?」
「おバカさんねぇ。食べる気ならとっくに食べているわよ。
逆に、簡単に貴方達を食べれるのに襲わなかったというのが敵意がない証拠だと受け取って欲しいわぁ」
確かに、いくらヘルメスと旧知の仲とはいえ相手はドラゴンだ。
すっかり油断していた俺らの方がおかしいのだ。
『悪ふざけはやめよリーヴァよ。お主の悪い癖だぞ?』
「そういう貴方も、相変わらずの頭でっかちのようね~。
ちっちゃくなったのはその体だけかしら、智慧の大蛇ヘ・ル・メ・ス・さ・ま?」
『貴様!』
『もう、二人とも止めなよー。本当、相変わらずなんだから。
それよりも、その杭どうするの?』
「フェーンは、相変わらずおりこうさんね。
これに関しては、わたしに考えがあるわ。
そこにいる『神の贄』の協力があれば、破壊出来ると思うの」
そう言ってこちらを見るリーヴァの目が怪しく光ったように見えた。
え、俺を餌にするつもりか!?




