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探索開始

「相談と言うのは?」


「はい、他に生存者がいるか捜索をしたいのです。ですが、思った以上に魔物が多く捜索自体が困難な状況にあります」


 アルバートの話では、この島の魔物はやけに好戦的で中心に近づけば近づくほど狂暴化するということだった。

 生存者を捜索しようにも、地形的に中心部を抜けないといけない場所が多く、かといって戦える者を全員連れて行ってしまうと船を守る者が居なくなり、脱出が困難になるだろうという事だった。


「オルカが回復していない現状では、出航する事が出来ません。まして、船長がいない今はまともに航路を決める事すら難しく…」


 なるほど。

 ただ船を出すだけならオルカ達が復活すれば可能であろう。

 だが、まともな航路を把握している人員がいない状況で出航した場合は、今度こそ難破するかもしれない。


 そして、生存者がいた場合には必ずこの島の中心部を通る必要がある。

 俺らが漂着した場所以外は険しい岩山に隔たれており、常人には登る事すら出来ないだろう。

 唯一の望みであった場所には俺らしか漂着していなかったことを知り、危険を覚悟で捜索を申し出たようだ。


「せめて航路が分かれば、オルカの回復を待てば出航出来るのでしょうけど…」


「星を見て方角を確認する事が出来る航海士も、海に投げ出されてしまったようなのです…」


 状況は最悪である。

 アルバートの国に帰る事どころか、今どこにいてどの方向に大陸があるのか分からない。

 無暗に出航してしまえば、広い海の何処へ向かっているのかすらわからず、最悪は飢え死にするかもしれない。


「この島は特殊で、空には星が見えません。多少の知識があるぐらいでは、現在地すら分からない状況なのです。情けない話ですが、まずは中心地を抜けて島の反対側を確認しないといけません」


 中心地を抜ける為には、予想もつかない程の魔物を倒さないといけないかも知れない。

 それよりも…。


「魔物がまた来たぞー!」


「非戦闘員は、下がれ!騎士は前へ!魔導士は後衛から援護射撃!」


 こうして話をしている間にも、魔物達が襲い掛かってきている。

 これではキャンプを張るどころではない。

 というか、こんなに頻繁に現れるのになんで俺ら無事だったんだ!?


『それは、我らが居るからだ』

『いくら弱体化したと言っても、僕らの方が格上だからね~。ちょっと威嚇するだけで、警戒して近づかないんだよ~』


 えええっ、まじか!?

 んん??それなら、なんで今は襲ってくるんだ?


『僕らは襲われないけど、遠くにいるニンゲンまで狙われない訳じゃないよ?

 ひ弱なニンゲンは、彼等には久々のご馳走なんだ。

 僕らの周りにいないニンゲンは、狙われても仕方ないよ』


『魔物や魔獣は弱肉強食の世界。

 弱い者から狙われる。

 ましてや、ああも殺気立ってはな…。ここいるとアピールしているようなものだ。

 いっそ沈んでないのだから、あの船に隠れていれば良いものを…』


 なるほど、その手があったか。

 それなら島の中から出てくる魔物には襲われる心配はないだろうな。


「(だけど、海には魔物はいないのか?)」


『おらんな。何故かはわからぬが、この島は特殊な結界に覆われているせいで海に生息する魔獣は近づいてこないようだ。海には魚くらいしかおらぬようだぞ?』


「(それなら、海の方がまだ安全か。幸い近くの海は穏やかなようだし、船には生活に必要なものも揃っているし…)」


 ヘルメスと会話し思案していると、アルバートが尋ねてくる。

 

「どうかしましたか?

 もしや、何か良い案でもありましたか?」


「はい、私の従魔であるヘルメスからの提案なのですが、島の探索が終わるまで探索に参加されない方々は船に避難してはどうかと。

 食料面に不安はあると思いますが海には魚もいるようですし、海から調達すれば暫くは問題ないと思いますし」


「なるほど。でも、海は危ないのでは?」


「海に魔物はいない様です。このヘルメスは、かなり広範囲を探知できる『探索』のスキルを持っていていないのは確認済です」


「凄い従魔ですね。我が隊の魔導士でも、そこまでは分からないのに…」


 アルバートが連れている魔導士は、一流の魔導士ばかりだ。

 その一流の彼らが出来ないのに、なぜそんな事がと少しばかり疑っているようだ。

 ここは仕方ないか…。


「実は…、このヘルメスは山の神と言われた神獣の眷属らしいのです」


 流石に()()()()()()()()()()()大事になりそうなので、眷属だと言っておく。

 ちなみにフェーンも、神獣の眷属だという事にしておいた。


「ウードさん…。見かけは普通の村人なのに、やはり凄い方のようだ。

 オルカを従えた時にも思いましたが、貴方に依頼して良かったよ」


 神獣の眷属を従えるだけでも、かなり凄い事のようだ。

 この様子だと神獣なんですとか言っていたら、驚かれるどころか信じて貰えないだろうなぁ。


 しかし、素直に称賛されるとむず痒いものがあるが、悪い気はしないな。

 クレスも小声で『良かったねお父さん。私も嬉しいよ』と自分の事にように喜んでくれたし。


 ───目下の方針は決まった。

 島の反対側に生存者がいないか確認するため、まずは島の中心を目指す。

 その間、船の護衛のために最低限の戦力だけ残してあとは島の探索に向かう事になった。


 もちろん、俺達のパーティーは全員探索に参加する。

 全員が反対したが、アルバートも絶対に行くと言って譲らなかったので酒場で隣に立っていた騎士団長が護衛する事になった。


 凄い人だろうとは思っていたが、まさか騎士団長が直々に護衛についているとは、さすが王族である。

 たかが村人がこんな普通に接していいのか後が怖いが、本人や周りからも何も言われていないので今まで通りに接する事にした。

 そもそもどうしたら正しいのか俺はわからないしな。


 まずは、先ほど襲撃してきた魔物の駆除だ。

 ここら辺をうろつかれては困る。

 見た感じ、魔物図鑑に載っているようなD級くらいの魔物だ。

 これなら俺らでも駆除出来るだろう。


「クレス、レイラ、マリア。まずはあの魔物達の駆除だ。準備はいいか?」


「うん、いつでも行けるよお父さん!」

「もっちろん、わたしに任せてよ!」

「はい、いつでも行けますわ!」


「(ヘルメス、フェーンもサポート頼むな)」

『ふん、魔物の位置把握は任せておけ』

『うん、3人の心配はしてないけど、ウードがやられないように僕が守ってあげるよ』


 え、俺だけ心配されてるのかよ!


「ウォン!」


 うん、分かってたよ。

 俺が一番弱いってさ。

 慰めるように顔をすりすりしてくるエースがとっても可愛いよ!


「じゃあ、みんな行こう!

 お父さんは前に出過ぎないでね!」


「ああ、分かっているよ。

 みんな、頼んだぞ!」


「「はーい!」」


 言うか早いか、クレスとレイラが疾走して魔物の群れに飛び掛かる。

 マリアも二人の動きに合わせて、氷魔法で応戦を始めた。


 次々と数を減らす魔物を見て、防衛に当たっていた騎士や他の冒険者達も負けていられないとばかりに魔物達を押し返し始めた。


「あの娘たちは凄いな。私から見ても、部下に引けを取らないぞ。

 いや、下手するとそれ以上か?」


 騎士団長が部下である騎士に指示を出しつつ、呟く様にそう言った。

 おお、他国の騎士団長が褒めてくれるだなんて、うちの子達は凄いな!


 だが自分の親馬鹿を差し引いても、クレスとレイラの剣技は凄い。

 パーティーと同ランクの脅威度Dである魔物達を、ほぼ一撃で仕留めている。

 仕留めそこなっても、マリアが魔法で的確に急所を撃ち貫くので二人とも後ろを気にしないで次へ、また次へと標的を変えていく。


 二人の後には絶命して灰になった魔物達の残骸しか残っていない。

 他の冒険者の中には俺らよりもランクが高い人が多数いるが、そこまで綺麗に仕留めているのはいなかった。


『ほう、フェーンとの戦いでかなり腕をあげたようだぞ?』

『う…。僕だって、好きで暴れたわけじゃ無いんだからね?でも、あの時よりも強くなっているのは確かだね~』


 と2匹が呑気な会話をしているくらいだ。

 俺らが参加する事で、浜辺での戦闘はものの数分で方が付いてしまった。


「凄いな。これなら、中心部突破も心配なさそうだな」

「はい、アルバート様。油断は出来ないでしょうが、これならきっと行けるでしょう」


 アルバートと騎士団長は、俺らの活躍を見て希望を見出しているようだった。

 まさか、中心地にあんなものがあるとは知らないで…。

 

いつもお読みいただいてありがとうございます!


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