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出航と魔の海域

 空は晴天、雲一つない出航日和だ。


 俺はアルバートから依頼を受けて魔獣オルカ達を再度手懐けしたあと、数日の間は小舟を借りて操船の訓練をしていた。

 操船と言っても舵を握ったりはしない。

 基本的な操舵は、当然この船の船長や船員が行うからだ。


 俺が主に行うのは、直進時に魔獣オルカを操り超高速で引っ張る事。

 また、風の無い時に旋回する手助けをさせる事だ。


 魔獣オルカ達には魔法印が刻まれており、そこからこの船に魔法の鎖でつながれている。

 この魔法の鎖は、この船と繋がっているが他の船や障害物なんかはすり抜けるようになっている。

 不思議な魔法があったものだと思ったが、魔法に詳しくない俺には原理とかは分からない。


 一応クレスとマリアがこの魔法について詳しく説明をしてくれたが、とうとう俺には理解出来なかった。

 いやね、この刻印のこの紋様は意識を繋げる…とか、この魔法の鎖には引き付ける力があって…とか言われても、何を言っているのか全くわからんよ…。


 取り敢えず、この魔法の鎖に繋がっている限りオルカ達は遠くにはいけないし、この鎖が繋がっているから動かせるという事だけ理解した。


 俺は、そのオルカ達に指示を出すだけである。

 普通に考えると大声を上げたとしても、船のかなり前を泳ぐオルカ達には届かないだろう。

 だが、『手懐け』した魔獣には俺の声が届くのだ。


 これは『手懐け』の際に、契約状態となりお互いの意識が繋がるのだとヘルメスが言っていた。

 ヘルメス達と会話出来るのと同じ原理らしい。

 高度な言語は扱えないが、オルカ達の単純な気持ちや意識が言葉になって届くので、結構楽しい。


『お腹減った!』

『遊ぼう!』

『早くいこう!』

『あの肉美味そう』


 といった具合だ。

 ちょっと物騒な事考えている奴がいる気がするが…、気のせいだと思いたい。


 エースも魔力を持つ魔獣であったなら、簡単な会話が出来たのに、普通の動物とはそれが出来ないのでとても残念だ。

 賢い子だし、色んなことを教えてくれたかもしれないなぁ。

 ま、もふもふ出来るから今のままで充分だけどね。

 よしよし、いい子いい子。


「では、ウードさん。宜しく頼みますね」


「ええ、初めての経験ですが、上手くやって見せますよ」


 この数日で、練習はバッチリだ。

 その間に船長とも顔見知りになった。

 歳が近い事もあり、打ち解けるのは早かった。


 彼の名前は、カロンというらしい。

 クレスと歳の近い子供がいるらしく、二人で話している時はもっぱらお互いの子供自慢をして盛り上がっていた。

 この航海が終わればしばらく休みになるらしいので、目的地である中央大陸の港町スサに着いたら酒をご馳走してやると言われた。

 そう言うお誘いは大歓迎なので、是非にと約束をした。

 また一つ、楽しみが増えたな。 


 今日は、本番とあって緊張するがそれでもオルカ達がやる気を見せているので大丈夫だろう。

 最初は恐ろしいと感じていたが、今で少しやんちゃな可愛い子達。

 やる気に合わせて俺も頑張らないと。


「では、出航するぞー!」


 船長の声に船員が一斉に反応し、「おー!」とときの声を上げ帆を開く。

 すぐさま空砲を空に打ち上げて出航の合図とした。

 ギシギシと木が軋む音を立てて、ゆっくりと船が動き出す。


 町の人々がいつの間にか集まってきて、こちらに向かって手を振っていた。

 それに応えるように甲板に集まっていたクレス達やアルバート達が手を振り返す事で応える。

 まるで声援のように、人々から声を掛けられ、見送られついに港から出航するのだった。


 オルカ達は船が港から出るまでは、ゆっくりと泳いでいたが、沖に出るとスピードを徐々に上げていく。

 巨大なガレオン船が、4頭のオルカに引かれて海を走り出す。

 そのスピードは想像以上であった。


「追い風であれば、更に早くなります。完全に向かい風にならないように進路を取りますので、オルカ達に指示をお願いします」


 カロン船長からそう言われて、地図や海を見ながらオルカ達に説明していく。

 もう少し、のんびりした海の旅になると思ったいただけに、こんなに忙しいとは思わなかったよ。


『ウードよ、ぼやッとしていると航路から外れてしまうぞ。操舵は自分ではないとはいえ、しっかりとオルカ達を操るのだぞ』


(はいはい、分かっているよ。ただ、俺よりもオルカ達の方が詳しいみたいで、一回指示したら殆どずれないで進んでくれているぞ)


『ほう、さすが海の魔獣。まさに奴らの領域という事だな』


『ついでに、お魚でも獲ってくれればうれしいのになぁ~』


(何を呑気な事言っているんだフェーン。彼らは働いているんだぞ?)


 そんな遣り取りをしていたのがオルカ達にも伝わっていたらしい。

 急にオルカ達の意識が飛んでくる。


『おっけー、わかったよー』

『君と僕で打ち上げよう~』


 先頭を泳ぐ2頭が、丁度魚群を探知していたようだ。

 航路から外れないようにしながら、船を引っ張らないように海に潜り、その魚群を挟み込んだと思ったら下から突き上げるように急浮上。

 そして、船の近くで海上に一気に飛び上がりすぐに海の中に戻っていった。


 次の瞬間。

 ボトボトボトボトッ!!

 と大量の魚が海水の雨と一緒となり空から降って来た。

 なんと、あの魚群を海水ごと打ち上げたようだ。


「「「なんだこりゃー!!?」」」


 と船員たちは目を丸くして驚いたが、降って来たのが魚だと知るとすぐに回収に動き出した。

 甲板に打ち上げられた魚たちは魔法で氷漬けにして、すぐに貯蔵庫に運ばれていった。


「はい、これはフェーンの分だってさ」

『わぁっ!ありがとうクレス!』


 クレスは、拾った魚の何匹かをフェーンにあげたようだ。

 いつの間に甲板に移動していたのか、エースもそのおこぼれに与かったようだな。

 尻尾を振って喜んでいるのが遠目でも良く分かる。

 おー、生でバリバリ食ってるな。

 うーん、あの状態で顔ぺろぺろはして欲しくないな…。


「お嬢ちゃん、凄い氷魔法だな。こんな一気に凍らせる事が出来る奴はなかなかみないぜ?」


「いえ、私なんてまだまだ未熟者です。でも、そう言っていただけるのは嬉しいですわ」


 大量の魚を貯蔵するのに、氷魔法を使えるマリアが大活躍したみたいだ。

 この船にも魔法使いは乗り込んでいる。

 ただ、殆どはアルバートとこの船の護衛の為に雇われた者達だ。

 こんな雑事に魔力を割いてくれる魔法使いは少ないのだ。


 それなのに同乗者とはいえ惜しげもなく氷魔法で協力してくれたマリアをみな感謝していた。

 しかも、あのお嬢様のような品のある笑顔で対応してくれるのだ、好感を持たない方がおかしい。

 下っ端であろう若い船員さんなんかは、顔を赤くするものがいたくらいだ。


「今夜は魚料理になりそうですな」


「ははっ、そのようですね」


 カロン船長と俺は、それらの様子を眺めながら苦笑いする。

 オルカ達の行動にも驚かされたようだが、それ以上にあんな風に狩りをしてくれる姿は初めて見るらしい。

 だから、すごい興味深いのだとか。


「ウードさん、あなたはいいテイマーになりそうですな」


「はははっ、そうだといいのですが…」


「ふふ、きっとなりますよ。

 …なんせ、魔獣オルカをあのように扱える者など少なくとも私は見た事ありませんから。

 その変った従魔を連れている事といい、あなたは不思議な何かをお持ちのようだ」


「何かとは?」


「さあ、それはただの船乗りには分かりませんよ。そんな気がする、だけかもしれませんし」


「はは、そうかもしれないですね」


 笑って誤魔化してはいるが、色々と心当たりがありすぎて正直心臓が跳ねるかと思ったよ。

 でもまさか、神獣を2頭も連れていますとか言っても、誰も信じてくれないだろう。

 町では『幸運の蛇様』扱いだったし、すべてヘルメスのお陰だという事にしておこう。


『・・・・』


 何か無言で抗議された気がしたが、気のせいに違いない。

 半分は事実なので、仕方ないのだ。



 順調に航海は進み、夜になる頃だった。

 遠くに海から深い霧が出ているのが見えてきた。

 今は快晴で空には雲がなく、風は気持ちいいと思えるほどは吹いている。

 それなのに晴れない黒い霧。


「あれが、そうだ。あれはね…」


 カロン船長の話では、あの黒い霧掛かった海域は『魔の海域』と言うらしく、中に入って戻ってきたものはいないと言う。

 凶悪な魔物や海獣がいるのかもしれない。

 海のど真ん中で襲われれば、どんな船だろうとひとたまりも無い。

 だから、普通はその海域を大きく迂回して『魔の海域』を避けるが普通らしい。


「本来なら避けるべきルートなのですが、急いで王都へ向かえと王子様のお達しなんです。だから、ギリギリの場所を通ります」


 そう言うと、カロン船長は船員に舵を切るように指示を出す。

 しかし、次の瞬間…。


 ドゴオオオオオオオオオオオンッ!!

 轟音と共に、船が大きく揺れる。

 外を見ると、マストが一本炎上している。


「な、何事だ!?」


「船長っ!敵襲です!あの、黒いマント野郎です!」


「「な、なんだとー!!」」


 おっさん二人が思わず声を揃えて驚くような事態が、巻き起こってしまったのだった。

いつもお読みいただいてありがとうございます!


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ブックマークもとっても嬉しいです、ありがとうございます!


これからまだまだ続きますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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