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マチスの難題

「本当にこの先4人でやっていけるかは、実戦でないと証明できないでしょう?なので、明日クエストをこの4人で受けて、無事に帰ってこれたら認めましょう。…正直、あの商人のドラ息子に渡すくらいなら、冒険者になって出ていった事にした方が万倍マシですからね!でも、誰かが一人でも大怪我をしたら認めません。それだけは譲れませんからね?」


 マチスさんがそう言って差し出したクエストの内容は、なんとも厳しい内容でした。


 どうやらギルドから発行されているクエスト書を、わざわざ持ってきてたみたいです。


 えーとこれは、討伐クエストね。

 で、その討伐内容はというと…、討伐対象がジャイアントウーズ。

 討伐場所は、地下水道の奥。

 そして、討伐数は1体となっている。


 ちなみにジャイアントウーズは、俗にいうスライムの一緒です。

 スライムより、すこし厚い膜に覆われていて半球状の体を持っているのが特徴的です。


 打撃攻撃は殆ど効かないし、弓矢は刺さってもダメージはほぼ無いの。

 剣や槍で核となる部分を貫くか、炎で燃やして体を溶かしていくかしないといけない。


 そして、一番厄介なのがその巨大な体です。

 普通のウーズが大体子供の頭くらいの大きさしかないのに、ジャイアントウーズになると大人の背丈を超す大きさになるものがいるらしいのです。


 今回の討伐依頼の場所は、カンドの町の地下水道になっている。

 地下水道にいるジャイアントウーズを討伐…ね。

 という事は、どういう状態かと言うと…想像出来てしまう。


 ───

 クレスの卒業パーティーが終わり、マリアを冒険者の仲間に加える条件でマチスさんからクエストを渡された。

 その内容を見た瞬間、少女3人が顔を引き攣らせたので何事かと見せて貰うと、なるほどこりゃ嫌がるよなぁ。


 ウーズは体液が酸で出来ていて、触れると腐食して溶けてしまう。

 地下で死んだ動物などの死骸を溶かして吸収するので、そのあと掃除が楽になる。

 そのため、ある程度の数をわざと放つらしいのだが、餌となる死骸が増えすぎると一気に増殖してしまう。


 そんなウーズは、ある一定数以上に増えると仲間同士融合して大きな個体に進化する。

 それがジャイアントウーズというわけだ。


 倒したら倒したで破裂して酸を飛び散らせるので、装備が痛むだけでなく服や髪の毛を溶かしてしまう。

 しかもとてもベトベトするので、好ましく思う女子はこの世にいるわけが無いだろうな。


 でも、俺と同じく娘を大事にしているマチスさんがこんな依頼を持ってくるだなんてなぁ…。

 もしや、冒険者にさせない為か?

 いやいや、ドラ息子(見知らぬ青年よ、すまない)にあげるくらいなら、冒険者の方がマシって言っていたから何か意図があるんだろうな。


 そう思っているとマチスさんが、一言付け加えた。


「内容は全員見ましたね?今、その魔物が現れたせいで多くの人が困っているんだ。冒険者とは、人を救う職業であるべきだと私は思うんだよ」


 なるほど、そういう事か。

 お金稼ぎのためだけに冒険者になるのではなく、そういう冒険者になって欲しいという意味もあるんだな。


 3人を見ると、先ほどまでの嫌そうな顔つきから真剣な表情に変わった。

 クエスト書に書かれている内容をもう一度真剣に読んでいるようだ。


「マチスさん、私達やります!」


「そうだね、そんな話聞いたら断る理由が無いわね。やってやろうじゃない!」


「お父様、私も行きます。多くの困っている人を助ける事が出来るのであれば、貢献したいですわ」


「そうですか、みんな立派に成長したんですね。良かった、ではこのクエストを無事に達成する事を祈ってますよ」


 こうして、俺達はマチスさんから差し出されたクエストをそのまま受ける事になったのだった。

 一応正式にクエストを受諾するために、冒険者ギルドに受ける事を報告しに行った。


 本来ならば、駆け出しの俺達が受けるような内容ではないらしい。

 ただ、クレス達3人は既にギルド職員で知らない者が居ない程有名らしく、『でも、貴女達なら大丈夫ね。受ける人が居なくて困っていたのよ、とても助かるわ。頑張ってね!』と逆に応援される結果となった。


 初依頼から期待されるって、どんだけすごい成績だったんだ?


 そんな事を考えながら、次の日の朝に皆でマチス商会前で待ち合わせをした。

 みな装備をしっかり整えてきていて、かなり様になっている。


 俺は前にマチスさんから貰った皮装備と上等な弓矢を装備しているので代わり映えはない。


 クレスは成長して背が伸びてより可愛くなった…じゃなくて、装備の大きさが合わなくなっていたのでマチスさんから貰ったものを再調整してある。


 ちなみに養成学校の時は、装備で優劣が付かないように訓練や演習の際は、皆学校から支給されたものを使っている。

 その間は使っていなかったので、かなり時間かけて直してもらっていた。


 15歳にもなるとより女性らしく成長していくため、体に合わせていろんな所が調整が必要になっていく。

 なので、体形にあわせて半分オーダーメイドしているようなものだ。


 大切な娘を守る為の防具であるため、お金をケチらずに作り直して貰った。


「わぁ、クレスの革鎧カッコいいね。それ、結構したんじゃない?」


「ありがとう。元はマチスさんから頂いた防具なんだけど、今の体形に合わせて作り直して貰ったみたい。ただ、どのくらい掛かったかをお父さんに聞いても教えてくれないの」


「さすがウードさんね。クレスへの惜しみない愛情が、そこに現れている気がするわ…」


 レイラが若干引いた目でこちらを見ているが、気にはしない。

 自分としては当然の事だと思っているからだ。


 かく言うレイラも、なかなかいい防具を与えて貰ったようだ。

 彼女の家もそこそこ裕福な商家なので、到底新人冒険者では揃えられない装備に見える。


 マリアに関しては、言わずもがなである。

 あのマチスさんが、俺らに与えたものよりもランクが低い装備を自分の娘に与えるはずがない。

 ただし分厚い革鎧とかではなく、丈夫で質の良いローブのようだが。


 4人と2匹で目的地である地下水道に入った。

 討伐対象のジャイアントウーズが居るのは、ここからかなり奥に入ったところになる。


 カンドの町は辺境の町にしては珍しく、下水と浄水が通っている。

 生活排水がこの地下水道へ流れ込み、放されたウーズ達によってゴミが取り除かれた後に、特殊な貯水池に戻される。


 そして、湧き水と綺麗になったその池の水を混合して、町の水くみ場に送られているのだそうだ。

 (すべて昨日マチスさんに教わった話なんだけどね)


 学の無い自分では、話が半分しか理解出来ないが、この地下水道が重要な施設だと言うのだけは辛うじて理解出来た。


 なのでとても重要な仕事なのだという。


「さて、そろそろジャイアントウーズがいる場所に着くはずだけど…」


 渡された地図を頼りにここまで進んできた。

 丁寧に描かれた地図はかなり正確で、ここまで迷う事も無かった。


 次の角を曲がれば、指定されたポイントなんだけど…。


「うわー・・・・、あれが今回の討伐対象ね…」


 レイラが嫌そうな声で、そう呟いた。


 そこには、通路一杯に詰まって身動きが取れなくなったジャイアントウーズが待ち構えていたのであった。

 ああ、やっぱりね。


 ──


 やっぱり、想像していた通りでした。

 指定されたポイントに辿り着くと、通路を塞ぐようにというか、詰まってしまったウーズがいました。


 あたりには餌となったのであろう、ネズミや野犬などの骨らしきものが散らばっていて、中には、小さな子供くらいの人型の骨もあって、一瞬血の気が引いたけど、よく目を凝らして見ると頭蓋骨に角のようなものがあったので、多分あれはゴブリンね。


 ふう、人じゃなくて良かったぁ。

 さて気を取り直して、戦闘準備をします。


 ウーズ系の魔物と戦うのは初めてだけど、魔物図鑑で討伐の仕方は覚えていました。

 弱点は炎か、槍のように深く刺すことが出来る武器。


 でも、あいにく4人の中に炎の魔法を使える人はいないし、槍を使う人もいない。

 炎に弱いからって、こんな狭い所で火事を起こすわけにもいかないので、今回は違う方法で倒さないといけないよね。


 ちなみにジャイアントウーズの脅威度は、Dランク。

 なんとあのワーエイプと同格です。


 今でも、あの時の事を思い出すと震えが来るけど、怖がっている場合じゃない。

 このクエストが成功するかしないかで、マリアと一緒に冒険が出来るかが決まってくるんだから。

 それに、今回はひとりじゃない。

 頼りになる仲間と、お父さんがいるんだから。


 自分を奮い立たせて、前に出ようとしたその時だった。


「クレス、まずは俺に任せてくれないか?」


 なんと、お父さんが試したいことがあると言ってきた。


 え、お父さん大丈夫?

 いくら最近魔物の狩りが出来るようになったからって、一人で相手するのは無茶だと思うよ!?


 でも、お父さんの顔を見ると無茶をする時の顔はしていなかった。

 長年、娘をやっているから顔を見たら分かるのよね。

 こういう時のお父さんは、自信があるから言っている時だ、とね。


「分かったよ、お父さん。でも、絶対に無茶な事はしないでね?」


「娘にそんな事いわれたら立つ瀬がないけど、まぁ、実際クレスの方が強いもんなぁ。でも、ちょっとまかせてみろ」


 そう言うと、お父さんは一人でジャイアントウーズに近づいていくのでした。

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