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オーク肉と町への帰還

サーランを出発しカンドに向けて出発した一行は…

 昨日はあれから不思議な二人組に会う事もなく、残りを親子二人で観光を楽しんだ。


 今日はいよいよカンドへ戻る日だ。

 マチスさんも、マリアさんもお見合いが大変だったらしく、心なしかゲッソリしているように見える。


 お金持ち同士のお付き合いというのも大変なんだなと思ったが、口には出さずに心にしまっておく。

 依頼主の心証を損なう言動は慎まないといけない。


 護衛の3人とも合流し、マチスさんが贈答品だという荷物も積みこんでいざ出発となった。

 帰りは他の商人とは別行動となるので、例の場所には野営しなくても済むようになるべく早く移動しようという事になった。


 ゴブリンが出た例の野営所を通り掛かった時に、ギルドから派遣された調査員や冒険者が複数名いたので話を聞いたところ、野営地の近くにゴブリンの集落が出来上がってたようで、これから討伐依頼を出して駆除に当たるとの事だった。


 それまでは野営が禁止になるということだったので、早めに出て正解だったよとマチスさんも言っていた。

 

 それからマリアさんのお見合い相手の愚痴大会が始まり、苦笑いしながらもクレスがそれに付き合い、道中は和やかな雰囲気のまま、目的の野営地に到着。


 近場の野営地でゴブリンの襲撃なんてあったので、同じく野営している他の商人達と話をして警戒を強めてからキャンプを張ったおかげもあり、野性動物が食べ物を狙ってやってきたくらいで特に何事も無かった。


 翌朝も早くから出発。

 朝食をクレスが全員分用意したが、思いのほか好評で最初から頼めば良かったとマチスさんも言っていたくらいだ。


 俺が作った時よりもウケが良かったので嬉しいような複雑な気分ではあったけど。

 いや、拗ねてないよ?


 そこから次の休憩ポイントに設定してあった野営所に向かう道中にオークが1匹出てきた。

 どうやらこの辺をうろついている、はぐれ個体のようだ。


「被害が出る前にやってしまおう。オークはいい肉にもなるし」


 そう言って、ドリスは降りるとなぜかクレスを呼び寄せる。


「嬢ちゃん、今のうちに実戦積んどけ。この程度の相手なら俺がカバーすれば問題ない」


「はい、分かりました!」


「いや、ドリス!クレスは…」


「おいおい、過保護は子供を殺すぞウード?安全に戦えるうちに実戦を積ませておけ。それに…」


 クレスはすぐにオークと対峙する。

 その表情は普段の温和なものと違って、凛々しいものになっていた。


「見ろ、あの子は才能がある。よし、クレスそのまま相手の動きに合わせてけん制しろ、無理に突っ込むなよ?冷静に距離を取るんだ!」


 ドリスの正確な指示の元、クレスは危なげなくオークを相手取る。

 オークが手に持つこん棒が振り下ろされれば余裕を持って回避をし、がら空きになった上半身に数回剣で切り刻む。


「そうだ!無理をせず、相手にダメージを蓄積させろ!みろ、オークの動きが鈍って来たぞ?次のチャンスで仕留めろ!」


 ドリスにそう言われると、イラついて大振りでこん棒を振り下ろしたオークの攻撃を躱した後に、その頸に向って水平に剣を薙いだ。


 数舜してから、オークの胴から首がズレ落ちてそのままズズーーンと倒れ絶命した。


「よし、文句なしの合格だな」


「ありがとうございます!」


 額から玉粒の汗を流しながらクレスは笑顔でそう答えるのだった。

 その笑顔はまさに女神の微笑みに近いなと、思っていたら。


「ウードさん、顔がふやけてますよ」


 とマチスさんからツッコミを受ける結果となった。


 その後は、俺も手伝いオークの解体をする。

 オークは内臓以外は殆どが可食部位なので余すところが無いことで有名だ。


 高級レストランでは、高級食材として普通の豚よりも良く使われるほどだ。


「クレスは凄いね!あんなおっきな魔物をひとりで倒しちゃうんだから。あ、すごい汗だね。『洗浄』してあげるよ」


 マリアさんはそういうと、クレスに『洗浄』の魔法を掛けて綺麗にしてくれる。


「マリア、ありがとう!」


 二人は呼び捨てで名前を呼び合う程仲良くなっていた。

 今回を機にずっと仲良い友人となれればいいのにな。


 それよりも…。


「凄いな、その歳で『洗浄』の魔法を使えるのか」


「ええ、マリアは9歳で魔法の才能を発揮しまして、簡単な生活魔法なら使えるんです」


「そりゃまたすごい才能ですね」


「ええ、自慢の娘ですよ。ですが、そのおかげで今回の縁談が持ち込まれてしまって、娘自慢しすぎたのを少し後悔していますよ。ウードさんも気を付けた方がいいですよ?」


 どうやら、商業ギルドの会合で娘自慢をしたせいで今回の縁談が持ち上がったようだ。

 魔法が使える者は少なくないが、才能がある者はかなり優遇される。

 そのため優秀な魔法使いを見つけると囲いこむ傾向にある。


 今回は縁談と言う形を取っているが、そういう意味合いもあるんだとマチスさんは教えてくれた。


「ま、変な事を言い出したらどんなことしても破棄しますけどね」


 どうやら、今回の顔合わせで婚約したことになったらしく、適齢期となる18才になったら正式に結婚という事だそうだ。

 

 そんな話をしつつ、オーク肉を荷台に積み込み終わり再び帰路に就くのだった。



 そのあと野営所で一回休憩をとり、特にトラブルもなくカンドの町に戻って来た。


「ウードさん、今日はありがとうございました。おかげでマリアも退屈することなく無事に帰ってこれました。クレスちゃんもありがとう。今後はマリアの友達としてうちに遊び来るといい」


 報酬はすべてギルドから支払われるという事だった。

 今回のゴブリンの討伐分とオーク肉の分け前もそちらから支払われると言っていた。


 なお、今回支給された武器防具は最初の約束通りそのまま差し上げると言われた。

 最初は遠慮したが、また何かで依頼するかもしれないと言われ遠慮なく貰うことにした。


 ドリス達はその後もマチスさんからの仕事があるからということでそこで別れた。


「嬢ちゃん、何かあれば俺を頼ってくれていい。筋がいいからな、正式依頼を受けれるようになったらまた一緒に仕事しよう」


 ドリスからその才能を認められ、クレスは照れながらもありがとうございますと握手をしてから別れるのだった。


 そのあと、俺はギルドに向かった。

 既にマチスさんから使いの人が報告をあげていたらしく、言っていた通り護衛と討伐の報酬が支払われた。

 その金額、金貨3枚とかなりの破格であったが、それほど娘さんの事を感謝しているのだと感じたのだった。


 そこで一人のギルド職員から声を掛けられる。


「ウードさん、娘さんの事でお話があるのですが…」


 それは、登録の際に指導をしてくれたギルド職員のひとだった。


ご覧いただきありがとうございます。


これからやっと冒険者としてクレスが成長していく話に入っていきます。

まだまだこれからですので、これからもお付き合いいただければと思います。


もし面白いと感じましたら、ブックマークや広告したの評価を是非よろしくお願いします。

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