褒美
洗礼をするために王都まで来たがそれも今日で最後だ。最初はたった1週間だと思っていたが思い返してみるととても内容の濃い1週間だった。まず初日に精霊界に行き、精霊王に会って大精霊たちを託されたし、そのあと王都の屋台でお肉を食べたがこれがまた絶品だった。高級な料理も美味しいがたまにはあの濃厚ダレも悪くは無い。2日目は洗礼を受けたらまさかの神様に再開出来たからな。それで神様をいつかはこの世界に呼ぶと約束をしてバイバイしたな。そのあとのパーティーで王女様が連れ去られて救助しに行ったなぁ〜。まぁ、そのせいで3日目は寝込んじゃったけど……4日目の昼くらいに目が覚めてそのまま王城に行って陛下と宰相と魔法師団長と騎士団長が来てびっくりしたけど褒美とかの話を沢山したな。そして父様と家庭教師の話をしたっけ?5、6日目は一日中書庫にこもって魔法のことについて勉強してたな……ってあれ?もしかしておれ、王都満喫できてない!?!?そう思えば王都を回ったのって初日だけだよな!くそ!せっかくの王都なのに……まだ大丈夫!今からでも間に合――
「テオ、もうそろそろ準備しなさい。王城へ行くぞ。」
そうだった…今日は正式に褒美を貰う日だったんだ……せっかくの王都が……
俺は不貞腐れながらも王城へと向かった。
王城へ着くと俺はメイドたちに連れられて正装へと着替えさせられた。そこで最低限の作法なども教えてもらった。
準備が整ったと伝えられたので俺は緊張した面持ちで玉座の間へと入っていった。そこには100人以上の貴族が参列していた。入ってきたのが幼い子供だったからか全員がこっちを見て驚いていた。壇上には陛下と宰相がいて、ちょっと横にシアが座っていた。そのまままっすぐ進み定位置まで着くと俺はすぐに膝まづいてお辞儀した。
「面をあげよ、テオバルト・ノア・シルバス。」
「この度テレシア第2王女殿下が洗礼の後のパーティーに参加した際に盗賊に誘拐された。」
……ざわざわざわざわ
「そんなことが!?」
「騎士団は何をしていたのだ。」
「最後まで聞け!!」
おぉ、陛下ってあんなに声が出たんだ……
「誘拐された時パーティー会場は停電しており誰も王女殿下の誘拐に気づかなかった。そんな時ここにいるテオバルト・ノア・シルバスはいち早く気づき盗賊を追って行った。そして見事王女殿下を助け出したのだ。」
「嘘だろ……」
「こんな子供が!?」
「そこでテオバルトに陛下より褒美の授与がある。皆心して聞くように。」
「テオバルト、この度の活躍見事であった。そなたの助けがなければ我が娘は今ごろ他国へと売られていただろう。感謝する。」
「も、もったいなきお言葉。」
「そこでそなたに褒美をやろう。そなたはいったい何を望む。」
「は、陛下にものを望むなど恐れ多くございます。なので陛下の仰せのままに。」
「そうか、ならテオバルトの父ルフレント・ノア・シルバス・クレンティアがおさめる地の税を5年間無償とする。それに加え我が秘蔵のワインを20樽分贈ろう。」
「ありがたき幸せ。」
よし、ここまでは予定通りだな。あとは適当に話を合わせてさっさと帰ろう。
「それともう1つ……」
え?まだ何かあるの?
「テオバルトが学園に入学するのと同時期に男爵位をさずける。だからそれに見合うように成長するのだ!!」
……え?陛下今すごいこと言わなかった?
さすがにこれには黙っていない貴族たちがいた。
「未成年で叙爵するなど有り得ん!」
「そんなことがあっていいのか!?」
周りがざわつき始め俺も陛下に直訴しようとした瞬間……
「陛下!いくらなんでも10歳で叙爵など有り得ません!考え直してください!」
名前は知らないが俺もあなたと同感だよ。確か未成年での叙爵は親が亡くなった時にしか認められなかったと思うが……
「なんだ、キャベッチ我の取り決めに不満でもあるのか?」
「いえいえ!そんなことは……ですが今回の褒美としてはあまりにも度がすぎているのではないでしょうか。」
「何を言うか!お主もあのパーティーに参加しておったであろう。爆発音と一緒に停電した時お主は何をしておった?まず第一に自分の安全を確保するために騎士団員を無理やり自分のそばに置いたそうでは無いか、それにお主の息子もそうだ。あの時第2王女殿下の近くにおったそうだな、それにもかかわらず王女殿下を守ろうともせず自分の取り巻きたちに自分を守らせようとしたでは無いか、そんなお主に陛下の決定に対して文句を言う資格など無い!」
「……っく!」
めっちゃ睨んでくるじゃん!ってかこの人レオナントの父親だったのかよ!しかしさすが宰相さんだなぁ。なんでも宰相のエドリックさんは口が達者で主に他国との話し合いなどに参加して全てこちらが有利になるように仕向けているらしい。そんな人に丸め込まれるのも無理はないな。
「何も無いようだな、それではこの以上3つを此度の褒美とする。解散!」
やっと終わったよ。これでやっと帰れる〜。まだ王都を出るまでに時間があるからちょっと王都を見て回ろうかな?
「テオバルト様、陛下が別室にてお待ちです。ルフレント様といっしょにお連れ致しますので少々お待ちください。」
どうやら俺はまだ帰れないらしい。
「失礼します。テオバルト様とルフレント様をお連れ致しました。」
「うむ、入るが良い。」
うわぁ〜なんかこの光景デジャブだなぁ〜。
そこには陛下とエドリックさんと騎士団長のロガートさんと魔法師団長のアレクさんが揃っていた。
「陛下、あの顔を見てください。サプライズは成功しましたね。」
「あぁ、そうみたいだな。この前はこちらが驚かされたからのぉ、今回は驚かす方だったのだ。」
いや、そんなに勝ち誇った顔をされましても……
「陛下、本当にテオバルトなんかに叙爵してもよろしいのですか?」
「よいよい、テオバルトは悪いやつではないとわかっておるからな。自分の過ぎる力に対しても悪用する訳でもなく人助けのために使いおった。そんなテオバルトを信じてみようと思ってな。まぁ、万が一この国に仇なすというのなら容赦はせんがな。」
「そんなことする訳ないじゃないですか!」
「はっはっは!そうか!なら安心だ!」
え、陛下の目付きめっちゃ怖かったんですけど!!普通そんな目付きで子供を睨むか!?泣くぞ!
「さて、今回テオバルトを呼んだのには理由があるんだ。」
「その理由を聞かせてもらっても良いでしょうか?」
「あぁ、お主テレシアと婚約する気はないか?」
・・・は?
「申し訳ございません、陛下。どうやら僕には婚約というように間違って聞こえたみたいです。お手数ですがもう一度言ってもらってもよろしいでしょうか?」
「何も間違ってないぞ。テレシアと婚約する気はないか?」
どうしよう聞き間違いじゃなかった。俺が王女殿下と婚約?なんで?どうして?僕わかんない……
「陛下、息子がパニックになっております。その、理由を聞いても良いでしょうか。」
「あぁ、この前お主たちが王城へ来ただろう?それでお主たちが帰ったあとテレシアがやって来てのぅ、テオバルトと結婚したいと言ってきたんじゃ。」
「そうだったのですか……しかし王女殿下ならもっと他に結婚する相手がいると思うのですが。」
「実はテレシアとある約束をしていてな、それがこの間のパーティーまでに結婚相手を自分で見つけなければ見合いをしてもらうというものだったのだ。そしてパーティーまでいい人が見つからず諦めていたのだがピンチの所を助けてもらっては誰だって惚れるであろう。」
「そういうことなのですね。テオ、お前はどうしたい。」
「……僕はまだ良くテレシア王女殿下のことを知りません。なのでそんな状態で婚約というのも……」
「なに?お主我が娘では不満だというのか!?」
「と、思っていたのですが、僕もテレシア王女殿下と結婚したいです!婚約させてください!」
無理だよ!あんなの断れるわけないじゃん!さっきより怖かったよ!?勢いに負けて婚約しちゃったけどもう引き返せないし……
「で、あるらしいぞ。テレシア、良かったな。」
「はい、お父様ありがとうございます。テオ様、婚約していただきありがとうございます!!」
扉からテレシア王女殿下が入ってきた。この話を聞いていたらしい。
「もう婚約をしたのですからちゃんとシアと呼んでくださいね?それと敬語も禁止ですよ!」
「はぁ〜、分かったよ。シアこれからよろしくね。」
「はい!よろしくお願いしますわ!」
こうして俺とシアの婚約が結ばれた。
その後は大人たちだけで話していたのでその間はシアと別室で紅茶を飲みながら色々話していた。
大人たちの話し合いで王女殿下の婚約は国を左右することだからまだ発表しないこと、成人するのと同時に発表すること。それまでにテオバルトには伯爵以上にはなってもらうことが決められた。さすがに伯爵以上でなければ王女殿下を降嫁させられないらしい。
そんなこんなで解散した後はもちろん王都を回る時間なんて無く、俺たちは自領へと帰るのであった。
読んでいただきありがとうございます!
一応この話で1章終了です!次回から2章に入っていきます。
これからもよろしくお願いします!




