閑話 私の初恋
私はこの国の第2王女として生まれた時からずっと決められた人生を歩んできました。王女だからこうしなさい。王女だからこうなりなさい。王女だから……とその言葉と一緒に育てられてきました。そのせいなのか自分の本心を隠して周りが望むように生きてきました。そんな私でも決して譲れないことがありました。それは自分が将来結婚する相手だけは絶対に自分で決めようと思っていたのです。もちろん初めは反対されました。
「そんなことが許されるはずないでしょう?
だってあなたは王――」
「まぁまぁ、少しはテレシアの意見も聞こうじゃないか。テレシアさっきのはどういう意味かな?」
「はい、私はこの国の王女として周りが望むように生きてきました。ああしろこうしろと言われたことを全て言われた通りにやってきました。このままいくと私は婚約者まで決められてしまうでしょう。それだけは嫌なんです!せめて…せめて好きな人くらいは自分で決めさせてください。」
「なるほど、テレシアの言いたいことはわかった。だが、テレシアは王女だ。王族だ。王族の血縁というのは大切なんだ。だから誰でもという訳には行かないんだよ。それでもさっきと意見は変わらないかい?」
「はい。変わりません。」
「はぁ〜、わかった。認めよう。ただし7歳の時に受ける洗礼の日までだ。それまでにテレシアが本当に愛する人に出会えなかったら諦めなさい。いいね?」
「分かりました。それで構いません。お父様ありがとうございます。」
私は絶対に愛する人と結婚するんだ!!
とは言ったもののあれから男の人に会う機会もなくついにこの日がやってきてしまった……ここで見つけなければ私にもうチャンスはない。絶対に見つけ出しやりますわ!!
「王女様、私の息子はとても賢いんですよ!どうでしょうか?聞くところによると王女様はまだ婚約なさってないだとか……」
「あはは、そうなんですね。」
はぁ〜、挨拶してくる人全員が婚約のことだらけでしんどいわ……私はもう決められた人生でしか生きられないのかしら……
「お初にお目にかかります。テオバルト・ノア・シルバスです……」
あ、この人は今までの人と違う、私に婚約を迫ってこない……ちょっと気になるな。
私は今までの人と違うテオバルト様の事が気になり、1人でブラブラしていたところに話しかけてみました。するとテオバルト様は少々困っていました。それでも話しているうちに段々と楽しくなり時間も忘れてしまいました。しかし楽しく話していたのにテオバルト様と同じ公爵家のレオナント様が来てからちょっと怖くなりました。王女として仲裁に入った方が良かったのでしょうが私には無理でした。そこであたふたとしていたら爆発音と共に急に部屋が真っ暗になりました。私は今まで守られて生きてきましたから周りに誰もいないという状況のせいで酷く不安になりました。しかしそんな中でテオバルト様は私のことを気にかけてくださいました。お優しい方だと思っていたら騎士の方が来てくれて安心しましたが私は連れ去られてしまったのです。
私は連れ去られて馬車に乗っている間ずっと泣き出しそうでした。正直今まで守られている生活が嫌に感じていました。けど、実際にこのような事が起こってからありがたさが分かるものですね。私は袋に入れられていたので外の状況が見えず泣きそうになっていました。
私は袋から出されると今度は目隠しをされました。話を聞く限り私は帝国の奴隷商人に売られるらしいです。恋愛とか言っている場合ではなく私はもう諦めていました。1度でいいから本気に好きな人に会ってみたかった、自由に過ごしてみたかった。けど、もうそんなことも叶わないのですね……
連れていかれている途中馬車が急に止まりました。外では戦っている音がします。夜ですからもしかしたら魔物達が襲ってきたかもしれません。私は怯えていました。
「テレシア王女殿下!いますか?大丈夫ですか!?」
聞き覚えのある声がしました。
「……私ならここにいますわ。」
そう答えると誰かが私に近寄ってきます。私はもう帝国に着いたのかなと思いましたがその人は私の目隠しを取ってくださいました。その人はパーティーで唯一話したテオバルト様でした。
「王女殿下を助けに参りました。」
私はその言葉とテオバルト様の笑顔を見て全ての緊張が解けて泣き出してしまいました。その間もテオバルト様は優しく撫でながら慰めてくださいました。そのせいかテオバルト様のお顔を見ることが出来ませんでした。
「はしたない所を見せてしまいましたわ。」
「いえいえ、王女殿下はお辛かったでしょうから気にしなくて大丈夫ですよ。」
なんだかテオバルト様と距離を感じますわ。なぜでしょう。そうだ!テオバルト様に愛称で呼んでもらいましょう!
「シアとお呼びください。」
テオバルト様は少し照れくさそうにシアと呼んでくださいました。私は嬉しすぎて飛び跳ねそうになりましたがなんとか耐えました。その後テオバルトは私に微笑みかけてくださいました。その笑顔を見て私は気づいてしまったのです。
あぁ、テオ様のことが好きだなぁ
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