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街だ!喧騒だ!!ロボットだ!!!

 そうだ、街に行こう!


 幸い、ここの座標はもう覚えた。

 だから意識して『黒の消滅』を使って、距離と空間の隔たりを消せばいつでもここに来れるってことだ。

 まあ、いつかは帰ってくるさ。階段も見つけたし。


 でも、多分帰ってくることはそんなにない。

 だって、気づいたんだ。


 僕の【存在意義(レゾンデートル)】は【無価値】。で、その固有能力が『黒の消滅』と『白の侵食』という強力無比なモノ。


 だったら、さ。


 若しかしたら他の【存在意義(レゾンデートル)】は、僕の才能を超えることが出来るんじゃないか……?


 っていうことに。


 だから、僕は期待する。


 僕を倒す敵を。


「……グッバイ、ダンジョン」


 そして『絶空Mk.1』を僕の体に突き刺し、デスる。


 そして目の前が真っ暗になったあと、機械的な声が聞こえてくる。


 《プレイヤー名『フィィア』の死亡を確認》


 《初期リスポーン地点へと復活》


 《デスペナルティとして持ち物をランダムで数種類失います》


 《『絶空Mk.1』を失いました》


 《自死ペナルティとして【存在意義(レゾンデートル)】派生能力を一時的に弱体ーー》


「おっと、それは許可できないかな。『黒の消滅』限定解放」


 《error、弱体化処理に失敗》


 《再試行》


 《error、error、error、error……》


 《……error、error》


 《弱体化に失敗》


 《代替案として、特殊罰則の申請……許可》


 《特殊罰則名『感覚深化』の入力……完了》


 《プレイヤー名『フィィア』の五感再現率110パーセント閾値到達を確認》


 《ペナルティ適応時間はゲーム内時間で3時間です》


 その声が終わると、今度は僕の目に光が侵入してくる。


 と、同時に街の中特有の喧騒が耳に入ってくる。


 ちょっと五月蝿いかな?


「出力最低限解放『黒の消滅』っと。これでよし」


 耳に『黒の消滅』を制御しながら纏わせれば、簡単に消音できる


 ビー!ビー!ビー!


 んだけど……


「おいおい、今頃街中で能力使うとか、どんな馬鹿だ?」

「さあな?まあ、よっぽどの馬鹿か、あるいはアホか、はたまた状況を理解してねえただの無知やろうか……」

「ちげぇねえ」


 そんな会話がそこかしこから聞こえる。どうやら、街中で能力の使用はご法度だったみたいだ。


「違法能力使用者発見、排除シマス」


 で、多分お仕置き用のキャラクターが僕の前に来て臨戦態勢をとっている。

 ていうか


「うん、完全にロボットですねどうもありがとうございます」


 その言葉に反応したのか、お仕置き用ロボット……めんどいしロボットでいいか。

 まあ、ロボットが、猛スピードで迫りながら、その右腕をチェーンソーに作り替えて振り下ろしてくる。


「っと、危ないね、『黒の消滅』、制御、波動盾」


 それを避けながら僕は『黒の消滅』の波動を制御して黒い盾を形成。斬撃を受け止めると同時にチェーンソーを破壊、いや、消滅させる。


「ピピッ!ガガッ!ザザッ!第一武装ノ崩壊ヲ確認。修復不可能ト判断。対象ノ危険度ヲlevel3ヘ格上ゲ。第四武装ヲ展開」

「へぇ、あのチェーンソーが第一武装だったんだね、って、ちょっと待って、その第四武装って光速振動剣じゃない?!第一種禁装じゃないか!」


 光速振動剣。

 過去に存在した音波振動剣を参考に、光子(フォトン)の移動によって起こる極わずかな振動を極大増幅、その光速振動波によって絶対に切断する剣。

 しかも光速になることで起こる質量のエネルギー変換を、分子結合処理と同時に併用することで解決。しかも余剰エネルギーは剣に纏わりつかせるように調整。

 開発時にはその過程で幾つかの新発見の鉄だったりが見つかってはいるんだけど、それはおいおい。


 で、そのあまりの破壊力ゆえ、使用には世界149カ国首脳陣の過半数の許可がなければ使用どころか持つことすら許されない戦略級兵器、第一種禁装。


 僕も現実ではチラッとしか見たことは無かったが、まさかここで見られるとは!


 圧倒的物理!圧倒的科学力!その力は、僕の疫病神(才能)を超えることが出来るのかな?


「ック、ハハハハハ!いいぞ、来い!第一種禁装!」

「展開完了、第二第三第四リミッター解除、level3(対都市級)殲滅モード、all clear」


 僕の宣言とあいつのシステム音。

 互いが言い終わると同時に動き出す。


「『白の侵食』対象指定解放、『黒の消滅』対象指定解放」


 僕は気を纏うことで身体能力を底上げし、『白の侵食』で光を侵犯することで光を操り、その姿を消滅させる。また、それだけでは隠しきれない体温や空気の揺らぎを『黒の消滅』を纏って消す。

 その状態のままあいつに《重縮地・連》と《絶音》を使って近づく。


「対象ノ消失ヲ確認。【存在意義(レゾンデートル)】ニヨルモノダト推測。警戒続行」


 高速で流れる視界の中、『絶空Mk.2』を作成。


 選択する技は、多重流派複合技《斬鉄首》、首狩りと斬鉄の複合…………!


()っ!」


 斬!


 半ば居合のように振り抜いた『絶空Mk.2』は、あいつの頭部と胴体の間を見事に切り裂く。


「っガァ!」


 しかし、刃が触れた瞬間、光速振動剣は正確に僕の足首から先を焼き切る。

 でも、これで多分お仕置きロボットも……



第三演算機(・・・・・)ノ損失ヲ確認。対象ヲlevel4……国家危機級ト認定。第二種禁装(・・・・・)デハ役不足ト判断。第一種禁装ノ使用ヲ申請…………条件付キデ許可。第五武装ヲ展開……」


 倒せていない!いい!実にいい!


「しかも、もっと強くなるんだね!あは!そうだよ!もっと強くなって!僕の想像を超えてくれ!」




「……完了。最終武装、人類死滅兵器《怨毒》」




 その宣言とともに突如としてそいつの機会の体から黒い風が発生して、広がる。


 その風に触れた観戦中のプレイヤーは、体を黒く染めながら死亡。残らないはずの真っ黒く変色した死体が残り、その死体からも黒い風が吹き出て被害はネズミ算式に上がっていく。逸早く逃げ出した者もその速度には抗えずに死亡。

 僅か数秒で周囲は地獄絵図になった。


 で、こう観察してる僕はといえば……


「あ、自分この混合物効かないんで。美味しくいただかせていただきます」


 この黒い風を吸収していた。

 実はこの風、ゴブリンを倒した後に出る紫の霧の、不純物だけが矢鱈と多いだけのものだったんだよね。

 だから、既に対処法がわかってる僕にとっては単なるご馳走以外のなんでもない。

 っていうか、不純物が多すぎると真っ黒くなっていくのか、吸収できる魔力と気の量が少ない。ゴブリンよりも少ないってどういうことよ……。


「……未知ノ事案ガ発生。《怨毒》ガ無効化サレタ」



 ん?もしかして、これを吸収できるのって、実はすごいこと……?


「対象ノ【存在意義レゾンデートル】ガ神聖属性ニ偏ッテイルト推測……否定、戦闘経験ヨリ測定サレタ対象ノ魔力染色体カラハ神聖属性ガ検出サレナイ」


 そりゃあね、属性なんて持ってないし…


「母機ヨリ再検証ノ申請……許可。ヨリ怨念ヲ凝縮サセタ瘴気ヲ精製……完了」


 周りから黒い風が消え去り、代わりに元々純白だった機体が所々に黒い斑点を付着させた、俗に言うマーブル模様になったマシンが現れた。


「精製物質名ヲ変更……命名、《死煙》。《死煙》ヘト魔力ニヨル指向性付与ヲ完了、fire(穿テ)


  で、どうやら僕が混合物だと言っていたものは瘴気って名前で、不純物が怨念ってものだった。


 その怨念が凝縮されたものがさっきの《怨毒》で、いま、真正面で見るからにやばそうな雰囲気を醸し出している黒よりも黒いとしか言えないモヤが《死煙》、らしい。


 そのモヤ、《死煙》が近づいてくると、どんどんと何かが終わっては修復される気配を感じる。


 多分、あれに触れたらダメだ。


 本能よりも優れた疫病神(才能)が自身に近づく死を教えてくれる。


「『白の侵食』全力指向性解放、『黒の消滅』全力指向性開放……!」


 《死煙》へと指向性を与えることで密度を増した『白の侵食』と『黒の消滅』を全力で放つ。


 モヤに当たった部分は侵食し消滅させることは出来てはいるが、すぐ後続のモヤにあたって勢いが薄れていく。

 それを黙って見るほどにお気楽じゃない。


 魔力の減少を実感しながら、更に2種の波動を増やしていく。


 《死煙》がなくなるのが先か。


 僕の魔力が尽きる方が先か。









おーわり

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