『黒の消滅』『白の侵食』
これで今回の投稿は終わり。書きたくなったらまた書く。
《それじゃあ、飛ばす前に、一つ注意事項を言っておくね》
……感傷に耽る時間ぐらいもっと取っとけ。
《まず、この世界のNPCは、人間的思考性AIを使用してます。つまり、人間と大差ないということです。かくいう私も人間的思考性AIです。ですので、この世界の住人は人間と大差ありません。やられたらやな事、嫌な事はなるべくしないように。ま、それ以外は自由です。気ままにお過ごしください。次に各々の能力ですが、知りたいと思えば説明文が書きれたウィンドウが出てきますのでそれを確認ください》
試してみた。
【『黒の消滅』系統:現象支配系統
本来ならば黒の概念は侵食であるが、そんな概念は【無価値】である。従って、真逆の概念である『白』の消滅が黒の概念となった。黒の波動が全てを消し去る】
【『白の侵食』系統:現象支配系統
本来ならば白の概念は消滅であるが、そんな概念は【無価値】である。従って、真逆の概念である『黒』の侵食が白の概念となった。白の波動が全てを侵犯する】
確か現象支配系統って、その現象に対する絶対的支配権限だったはずで、生み出すのは苦手だと思うんだけど、こういうのも現象支配系統に入るのか……。
まあ、才能だけしか取得の無い僕にはお似合いの能力かな?
《あ、確認されましたね?では、皆々様方、行ってらっしゃいませ!》
その言葉とともに、世界が光で塗りつぶされた。
ので。
「『白の侵食』、及び『黒の消滅』、発動」
瞬間、僕の体から白い同心円状の波紋が周囲の光を塗りつぶし、黒の波動が白く染まった視界を消し去る。
ゴッソリと魔力が抜ける感覚。
結構リアルだ。特にこの脱力感とか。
そんなことよりも……
「上手くいった……いや、失敗?どっちでもいいか」
僕の視界に映るのは、見渡す限りの土石の壁と通路。つまり、説明書にもあったダンジョンだろう。これは当たりを引いた。
「上手くやれば、目的が達成できる」
僕に不足しているもの。それは実戦だ。確かに、戦争が一切ない平和な世界になってはや数十年。日常的に戦闘を繰り返すこともないし、古武術だってもうほとんど存在しない。
だからこそのダンジョンでの実践である。
と、僕の鍛え上げた聴覚に微かな反応。
対象は二足歩行、歩幅はおよそ20センチ、小型の人型生物と予想。距離前方200m、こちらに背を向けている。
気を目に集め……やっぱり。気には肉体活性化の力があるらしい。元々少しの明かりさえあれば闇夜を見通せる視覚を持ってはいるが、流石に真っ暗だと何も見えない。だけど、気を使えばほんの少し、僅かに光がなくても周囲を見ることが出来る。その僅かな光景から周囲を判断。その位なら僕の頭脳を持ってすれば寝ていてもできる。
そして目の前にある薄汚い緑の背中に、気づかれることがないよう、忍術の消音技能と武術の縮地技能の合わせ技で一気に近づき、手刀に気と魔力を纏い、一気に首を刎ねる。
魔力には、願いの具現性があることが説明書に書かれていたからもしやと思ったが、正解だったらしい。
僕はさっき、首を刎ねたい、と願った。その願いを込めた魔力を手刀に集めて纏ったから、刎ねることが出来た。
気の肉体強化術も相まって、結構硬めの木を一撃できることすらできるだろう。
と、そんなことよりも……
「臭いが……凄いな、嗅いだことない匂いもできるなんて」
そして僕には生物を切った感触がなまなまと残っている。けど、そんなのがどうしたの?
そんなの、疫病神が軽く乗り越えさせる。……僕には、普通の感性すら備わることを許さないのか……。
まあ、いい。
今は、取り敢えず斬って斬って斬りまくる。それだけだ。
「……ん?」
と、ここでさっき斬った仮称ゴブリンの体に変化が起こった。
紫色の煙がその体から吹き出たと思ったら、その後には一つの紫色の石が残っていた。
というか……
「この煙も、この石も、魔力と気の混合物……?いや、でもなんか不純物が……『白の侵食』、『黒の消滅』発動」
周囲に漂ってる煙と石に含まれてる何かの不純物を侵犯し、消滅させる。すると……
「うん、綺麗にッ!ッグ!」
不純物が無くなって透明になった煙の混合物が、僕の体の中に入ってこようとする。
それを避けられず、侵入を許してしまった。
だけど、この煙は魔力と気の混合物。
それならば、制御できない謂れはない。
まずは分離させる。
僕の魔力と気で混合物を包み込み、押し固めることで圧力を上げて分離しやすい状態を作る。そして、エネルギーが限界近くなったら低エネルギーになろうとするのを利用して、僕の魔力と気に混合物内の魔力と気を付着させる。
そして数分立つ頃には、全ての煙を吸収することが出来た。それと同時に魔力と気が増えた感覚がある。それはとても喜ばしい。
「ふ、ふふ……」
だけど何故だろう?
「ハはははは……」
なんでこんな笑い声が出てるんだろう?
「フははハはハ!」
ああ、そうか。
「いイ!実にいい!僕の知識ヲ総動員しなければならない事象!!詰まりハ、僕の才能を超えたというこト!!!」
気づけバ僕は両手を広ゲ天を仰ぎながら叫ぶ。こレでモンすターを呼ぼうトも、関係ない。
「あァ、最高ダよ『Life of Raison d'etre』!!もッと僕を超えテくれ!!!もッと、僕を苦しメてくれ!!!!アハ、アハハハハハ!!!!!」
僕の声ニ反応シて近づいテクる気配がスる。
デも、関係なイ。
僕ハ目の前ニある紫色ノ石をさっキと同じ手順デ分解し、少シ小さくナッたそレを飲み込ンデ吸収スル。
魔力ト気ガ増エル感覚。
「アハ!モットダ!モットモット!!ボクヲ!!クルシメテクレ!!!」
リセイノタガガハズレル。
オサエラレテキタサイノウガボウソウスル。
セイギョガキカナクナル。
アァ、デモ………………
………………………………楽しい………………………………
気づけば周囲には敵影が見えず、気配すらなくなっていた。
そして周囲には大量の紫の煙と、石。
それを少しずつ僕は吸収し、強くなっていく。
理性が外れた天才という名のバケモノが、誕生した。
アハハハハハ、自分では面白いと思ってるよ!