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【◼◼◼】

まあ、すぐ投稿すると言っても同時投稿なんですけどw

 手元にある液晶パレルに触れ、最高級フルダイブ用ベッドに横たわる。


 今日は《Life of Raison d'etre》、《人生の存在意義》と銘打たれたゲームのサービス開始日だ。

 そもそもこのゲームは、脳内チップにアクセスすることで成り立っているため、今更古臭い、と言っても数年前までは最新鋭だったヘッドギア型ダイブ用マシンを被らなければいけない。


 まあ、僕の場合、金の力で特注品を作らせたけど。


 始まるまでの時間はあと1分。その間に、しばらく見ることがなくなる部屋をぐるっと見渡す。

 このゲームは脳内チップにアクセスする関係上、常時現実時間の6倍速で稼働することになる。これでも最低限まで時間差を縮めてはいるって話らしい。というか、僕が少しだけ技術提供したから、間違いない。だから、現実の4時間で、ゲーム内の一日が過ぎる。


 加えて、僕の特注品ダイブマシンにも理由がある。

 僕のマシンには、金の力でまだ世間には出ていない技術をテンテコモリで使わせてもらっている。

 例えば、筋肉が衰えなくなるよう、こまめにアームが伸びてきて振動させる機能とか。


 死なないよう、脳内チップからの必要栄養分通信を解析し、その栄養分を大気中に存在する二酸化炭素と炭素、酸素、水素、窒素、果ては老廃物から生成。自動的に点滴してくれる機能。


 安眠効果を高めるため、超低周波音を発生して即落ち二コマみたいに眠らせる機能。


 外敵を自動的に判別して、無傷で野外に放り出す外部付属機械。


 などなどの機能が充実している。


 そして僕は、その恩恵を十分に受けるわけで、死ぬ心配も過労する心配もないから、まずは連続で1週間ぐらいダイブする予定だ。老廃物もこの機会で処理してくれる。


 と、見渡し終えて改めて有用性を感じさせてくれるベッドを見てたら、すぐに残り10秒になっていた。


 すぐに横になり、脳内カウントでスグにでもログインできるように準備をする。


 3……2……1……0


 眠気がすぐに押し寄せ、抗う間もなく、僕の意識は、電子の世界へと誘われる。












 目を覚ますと、地平線まで見える草原が広がっていた。

 少しばかりその風景を楽しんでいると、突然、世界に声が響いてきた。


 《これより、《Life of Raison d'etre》、正式サービスを開始いたします》


「始まった、か……」


 《まず初めに、名前を目の前のウィンドウに入力してください。重複は致しかねますので、早い者勝ちとなります》


 名前は、もう決めてある。


『フィィア』


 それがこの世界での僕の名前だ。語源はギリシャ語の天才である『メガロフィィア』。


 で、大体数分たったら次の声が聞こえてきた。



 《只今より、順次、脳内チップからデータを取得、及び再解析を致します。なお、このデータはこのゲームで使用する以外の悪用などは決して致しません》


 そりゃそうか。というか、流出したらこれまでの信用なんかがなくなる上に、永年精神牢獄行きだから、メリットなんかがないよね。


 《つきましては、再解析の時間を潰すために、一時的に皆様にとある能力を付与してあります》


 へえ、粋なサプライズを……


 《能力名は『創造』、効果は望んだものを、現象、物体、法則関わらず、一切のコストを無視して顕現させる能力となります》


 ほうほう、つまり……


 《若干ながら勘で分かった皆様もいるようですが、お知らせ致します。一言で言ってしまえば、この世界に慣れる為、各自で練習してください。説明書にも書いてあった通り、このゲームはほかのゲームと若干仕様が違います。ですので、解析までにかかるゲーム内時間で2時間程度をこの練習に当ててください》


 そう言えばそんなことも書いてあったよね。ああ、そうそう、例えば……


 《例えば、魔法はコマンドや音声認識式ではなく、魔力操作をしなければならず、これは凡庸スキルが無いためスキル化などしません。つまり、すべて自身の力しだいだということです。何名かは『何このクソゲー』と思いになっているかと存じますが、説明書にも書いてあることですので、文句などは言わないよう、気をつけてください。全て、自身が悪いのですから》


 うわ、毒舌キャラだ……ていうか、いまどきそんなに需要はないよ?毒舌キャラって。


 《ああ、そうそう。これは説明書にも書いていない事柄ですが、【存在意義(レゾンデートル)】の派生能力を使用するためには魔力が必要であり、これには例外はありません。つまり、魔力操作が出来なければ、能力は使えないという事にほかなりません》


 此処は個別空間だからいいけど、もしほかのプレイヤーと一緒だったら「ふざけんなクソ野郎!」とか何とか聞こえてきたに違いない。


 《そこでこの『創造』です。この『創造』は、なんでも作り出すことができます。そう、例えば、溢れんばかりの魔力とか》


 何故かニヤリと擬音語が付きそうなセリフが聞こえてきた。


 《もう分かりましたね?分からない?仕方ないですね、教えてあげましょう。『創造』で溢れんばかりの魔力を作り、その魔力を操る感覚を身につけることで、魔力操作能力を得ることができるというわけです》


 と、何とも甘美な声音で、まるで悪魔の誘惑のように言ってきた。

 僕ぐらいの才能後無くとも、多分わかるやつにはすぐ分かる。

 これは罠だ、と。

 多分、溢れんばかりの魔力を操作できたとしても、それは大量の魔力を操作できるのであって、初期の少量の魔力を操作する感覚を養うわけじゃないだろう。


 《では、また2時間後に会いましょう》


 その言葉とともに、ふっ、と声が聞こえなくなり、当たりが静寂に包まれる。


 さあ、始めようか。


 まずは魔力操作、なんだけど。多分、これだというものには目星をつけている。それも、2つ(・・)

 一つは心臓の中心部から、もう一つは丹田の所から。

 なぜわかるのかといえば、太極拳とか何とか諸々の武術を鍛える過程で体内を正確に把握する術を身につけたんだ。

 殴られたところを正確に把握するために。場合によっては、鎧通しとかするやつもいたから。


 で、恐らく心臓部の方が魔力、丹田の方が気だと思う。テンプレ的には。

 だから、それぞれを動かす。心臓の方は体の外側を循環させるように。丹田の方は体の内側を魔力とは逆方向に回転させるように。


「……はぁ……」


 結論からいえば、上手くいった。それも、簡単すぎるくらいに。多分、疫病神(才能)のせい。

 はっきり言って、僕の才能は異常だ。こんなゲーム的なモノにも対応するくらいなんだから。

 しかも、多分これで一般人レベル。ゲームを続けていけば、もっと上手くなる。僕の感情なんかを諸々差し置いて。



 ……暗い気分を頭を降ることで追い出して、取り敢えず次のことを考える。


 ……


「……『創造』、鋼の長剣、刃渡り100センチ、柄20センチ、幅15センチ」


 目の前にリクエスト通りの剣が現れて、地面に突き刺さる。どうやら、『創造』は結構細かく注文を聞いてくれるみたいだ。


 今から試すのは、現実での武術を持ち込めるか。


 その為に分かりやすい剣を作った。


「『創造』、麦わら人形、高さ2メートル」


 人形が現れる。


 それに向かって、適度に精神統一。本当ならこんなこと必要ないんだけど、もし現実での技術が持ち込めなかったら、これを切ることが出来ない。だからこその精神統一。



「……()ッ」




 単純な袈裟斬り。

 ただそれだけで、藁人形は綺麗に二つに切れた。


「……ふぅ……実験、終了」


 どうやら、持ち込めるようだ。


 だったら、後は何もしなくてもいいかな。


 いくら練習しても、無駄だってことが分かったし。


 僕はその場で座禅を組み、魔力と気へと意識を向ける。

 そして時には体全体へと、時には1点へと集めたりすることを繰り返す。


 そんなこんなで時間は進んでいき…………











 《ピンポンパンポーン!やあやあ、2時間ぶりですね》


 その声を聞いた僕は、集中は途切れさせず、聴く体制をとる。


 《やっと解析が完了したので、皆さんの【存在意義(レゾンデートル)】を解放していきたいと思います》


 ……なんか喋り方が結構フランクになってるような……


 ま、いいか。


 《それじゃあ、解放されたら初期地点に飛ばすから、座ったり寝たりしてる人は立ってね~。》


 静かに立ち上がるが、魔力と気の循環はやめない。なぜなら、魔力と気は使用したり循環さたりすればするほど、保有料は増えていくからだ。魔力については説明書に書いてあったので確定だが、気については二時間前よりも僅かに増えていたので間違いないだろう。


 《それじゃあ、一斉に解放するよ?せ~の!》



 ―――プレイヤー名『フィィア』の【存在意義(レゾンデートル)】を解放します



 ―――解析結果から、新たな【存在意義(レゾンデートル)】を開花


























 ―――【無価値】






























 ―――それこそが、あなたの【存在意義(レゾンデートル)】です



 ―――続けて、派生能力が紐解かれます



 ―――『黒の消滅』が解放されました。系統は現象支配系統です



 ―――『白の侵食』が解放されました。系統は現象支配系統です





「【無価値】、ね」


 ……全くもって、僕に素晴らしい名前じゃないか。






ちなみに投稿してるのが1時6分って言うね。

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