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始まり

5月6日

読みづらかったので、地の文と会話文を分けました。


『4月1日。今日から僕は中学生。初めての場所、初めて会う人達。不安はあるけれど、凛花が同じクラスだとわかって少し安心した。考えてみると、僕と彼女は小さな時からずっと一緒だ。凛花は僕がいないと何にも出来ないから、神様が僕達を引き繋いでくれているのかも笑』




僕は目を覚ました。辺り一面草っ原だ。

ここはどこだろう。

辺りを見渡してみるが、人も建物も見つからない。

早く家に帰らないと。

僕はとにかく歩き始める。

しかし、僕はすぐに歩みを止めた。

分からなかったからだ。

僕の家ってどんなだった?

ここに来る前僕は何をしてた?

僕の家族は何をしている?

そもそも僕は…誰だ?

これまで何をしていたのかの記憶がまるでない。

途方に暮れた僕は、一面に広がる草っ原の上で寝転んだ。



「よかった。やっと目を覚ました」


突然男の声が聞こえ、僕はハッとその場で起き上がった。

どうやら僕はあのまま眠ってしまったらしい。

目を覚ますと、僕はふかふかのふとんの上だった。

急いで周りを確認する。

どこかの小さな民家の中のようだ。

ふらふらと部屋から出て行こうとする僕を、先程の男の声が引き止める。


「ちょっと。黙ってないで訳くらい話してくれよ。あんなところで倒れてるなんてただ事じゃないだろ」


「君は?」


「俺はマルコ。この街で住んでるんだ。君の名前は?」


マルコと名乗る彼。彼に僕は少し違和感を覚えた。

この違和感は僕の奥底に眠る記憶によるものだろう。

以前何をしていたのか、自分が何者なのか詳しいことは全く思い出せないが、基本的で大まかな記憶は脳に焼き付いているみたいだ。


例えば、今の状況。

木でできた和風の家には黒い髪をした人が住んでいるはず。それくらいの基本的な事は、なんとなく分かる。

今僕がいるこの部屋は、畳で敷き詰められた和風の部屋だ。対して、マルコの髪は金髪で目も青い。

和と洋が混ざったこの空間に僕は少しの違和感を抱いたのだ。


しかしこの直後、僕が今抱いた違和感などほんの些細なものに過ぎなかったことを痛感する。


「僕は…名前が分からないんだ」


頭を抱えながら、僕は正直にマルコに打ち明ける。

名前が分からないといった僕の言葉に、彼は非常に驚いた様子だ。


「君もあの子と同じなのか…」


「あの子?」


「後で会わせるよ。君と同じ不思議な子だ」


首を傾げる僕。

そんな僕の顔をマルコは指差した。


「ステータスに君の名前が載っているはずだ」


その瞬間僕は腰を抜かした。

マルコが指差した場所から、ゲームでよく見るホログラムのような画面が展開したからだ。


「なっなんだよこれ」


訳もわからず震える声でマルコに尋ねる。

そんな僕に御構い無しで、マルコは僕の前に現れた画面の内容を調べる。


「リ…ュ…ウ。そうか、君の名前はリュウか」


リュウ、それが僕の名前?

しかし今はそれどころではない。



「マルコ答えてよ。これは一体なんなんだ。そもそもここはどこなんだ!」


僕は頭が混乱し、すがる形でマルコの手を引っ張る。


「落ち着いてリュウ。まずは俺の話を聞いてくれ」


そう諭すように優しく語りかけるマルコのおかげで、僕は少し冷静さを取り戻し、静かに頷いた。


「実は二週間前、俺の幼馴染のアリサって娘も君と同じような境遇の女の子を一人家に連れてきたんだ。さっき俺が言ってた子だよ」


「僕と…同じ?」


「そう。彼女も君と同じような反応だったよ。俺達がやることにひどく驚いてた。彼女に会えば君も何かわかるかもしれない」


よかった。僕と同じ状況の人がいる。

それを聞いて僕はひとまず安心した。

そして、冷静さを取り戻した僕は必死で頭を回転させ、僕の置かれたこの状況について考える。

先程のマルコがやって見せたことは、到底僕達の世界では考えられない。

少なくとも僕の今の記憶では、あんなことをやってのける人間を思い返すことはできない。


となるとこれは…夢?

いや違う。この感触、この匂い。夢にしてはあまりにもリアル過ぎる。

となると、ここは僕達の住む世界とは別の世界?

まるでありえない話だが、そうとしか考えられない。

そして僕と同じ境遇の女の子。

状況からして、僕と同じ世界からやって来たということだろう。

しかしどうして?この世界に来る直前、僕は元の世界で何をしていたんだ?

考えても考えても分からない。

考え込んでうずくまる僕の肩をマルコは軽くポンと叩き、


「まあ、難しいことは後で考えよう。それよりお腹空いただろう?ご飯にしよう」


そう言って明るい表情をしながら彼は部屋を出て行った。

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