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たった一ヶ月で初心者女子高生が格闘ゲームを極める話  作者: 葉月 優奈
八話:カウンター
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夜の街で、杏那は悔しさを前面に出していた。

こういう人間的な表情は、学校ではあまり見せない。

普段は女子たちに好かれていて、人気者の杏那。

杏那にとって、『リアルファイター』はすでに大事なものになっていた。


「負けるのが悔しいよな」

「うん」

杏那の見せるその感情は、俺が忘れていた感情。

春の全国大会、俺は行って初戦負けをした。

ステージの大きさと、圧倒感。デモンストレーションでの練習も、みんなは強かった。


だからあの日、初戦で負けた時は仕方ないと思っていた。

悔しかった感情より、周りの圧倒的な強さを見て諦めがあった。

だけど杏那は、あの時の俺とは全然違う。

心の底から悔しがり、感情を表に出していた。


「そうだよな、悔しいよな」

杏那が負けたことで俺も、次第に悔しさが湧き上がった。

杏那のその表情が、あの時の俺に思い出させたのだ。


俺も負けた、前に竜二と負けたとき悔しさがそれほどなかった。

でも、負けると悔しんだよな。それは本当のことで、当たり前のこと。

俺は悔しがる杏那を、優しく抱きしめた。


「和成……」

「俺も悔しがらせてくれ、弟子である杏那が負けたのは……」

「違う、あたしがいけないの。負けたのはあたしで……」

「そうじゃない、これは俺の負けでもある。

歩美の研究をちゃんとしていなかった、歩美のコーチである竜二は研究していた。

俺のやり方が、間違っていた。だから、俺も負けたのと同じだ」

「和成……」

いつの間にか、俺も顔を歪めていた。泣き出しそうな顔で杏那を抱きしめた。


「絶対勝とう、四日後の店舗大会」

「うん、歩美も参加するし。本当は明日もゲーセン行きたいけど……バイト」

「まだ、時間あるか?」

「え?」杏那と離れた俺が、声をかけた。


「ちょっと、今から俺の家に来ないか?」

「うん」杏那は理由も聞かずに、俺に同意していた。



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