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たった一ヶ月で初心者女子高生が格闘ゲームを極める話  作者: 葉月 優奈
八話:カウンター
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093

夜の道を歩く、今日は夜七時でゲーセンを出ていた。

街灯の明かりが、パチパチと点滅していた。

車道は通行規制がかかって車が連なり、駅に向かう通行人もいた。

自転車を押して歩く俺と、肩を落として元気のない杏那だ。

悔しさがこみ上げ、通学カバンを持つ手を強く握った。


「負けた……」

「杏那、あれは仕方ない」

「あんな、デコちゃんに負けた」

悔しそうに顔を歪めた。杏那にとって、歩美はライバルだ。

一ヶ月近くやって覚え、優位に進めていたゲームで、ライバルである彼女に無残に負けたのだ。


「気持ちはわかるよ」

「あたしのやっていたことは、間違っていたの?」

「歩美のジョニーとは、相性が悪い。相手は『待ちジョニー』だからな」

「待ちジョニー、なにそれ?」

「竜二もコーチとしてついているし、しかも歩美は金に物を言わせて筐体を買ったらしい。

全く金持ちというか、あのお嬢様は何を考えているのだか……」

「それでも負けるのは、絶対にイヤ」

負けた杏那のプライドは、ズタズタだ。

悔しそうな顔で、俺をじっと見ていた。


歩美に乱入され、負けたあとも乱入し返した。

だけど歩美に勝てず、三連敗。四度目の戦いをする杏那を、俺は腕を引いて止めていた。


「負けには、ちゃんと理由がある。相性と研究、それと金による練習だ」

「金……ねえ。あたしにもっとお金を……」

「ダメだ」

俺は、それをさせられなかった。

杏那の家庭の事情がある、ただでさえお金に苦労しているのにこれ以上無理はさせられない。

そんな俺と杏那は、線路が見える橋の上に差し掛かっていた。

辛そうな顔の杏那は、橋の手すりに手を乗せた。


「杏那?」

「あーっ!チョー悔しいっ!」

大声で叫んだ。橋の上から、思い切り。

顔を赤くして叫んだあとに、深くため息を吐く。

反対側車線の通行人が、二人ほどこちらをチラリと見ていた。


「杏那……」

「だって、勝ちたかったから」

そして杏那は、俺の方に振り返り悔しそうな顔を見せていた。



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