009
同じゲームでも、ゲーム機には二種類ある。
格闘ゲームは、通常に乱入できる台『乱入台』と乱入できない台『初心者台』と分かれていた。
一般的にゲーム機の背中が、ゲーム機の背中とあっているのが乱入台。
そしてゲーム機の背中が、壁になっているのが初心者台。
まあ無線LANもあるので、壁にあっても初心者台のことがあるわけだが。
そういえば、俺は杏那の手を引っ張ったな。しなやかな手だけど、指が長い。
「ここでやるの?」
「ああ、しかも金はまだ入れるなよ」
初心者台に、俺と磯貝は一緒に座っていた。
一応二人用プレーができるので、乱入できないことはないのだが。
「その前に、レバーあるだろ」
「うん、これ?」
ゲーム機にはレバーと三つのボタンがある。レバーの隣に、赤、黄色、緑色の三色のボタン。
真ん中に、黄色のボタンも見えた。
「一応このレバーの握り方が、いくつかあるけど……」
「握り方?」
「ああ、このレバー。真ん中が小さく丸い玉が、先端についているだろ」
「そうね、なんでこの丸い玉がついているのかしら?」
「レバーを握やすくするためだ。
俺は、指を人差し指と中指で丸っこいのを丸めて握る『かぶせ持ち』って言うけど……」
「持ち方とかなんか関係あるの?」
「まあ、フォームかな。どういう持ち方でも問題ないが、大体は玉に被せるか、レバーを指で挟むかな?
あとは親指で添えて、一本持ちなんていうのもあるかな。
やっていてどれがいいか、手が疲れないやり方でいいと思うけど」
「和成のやり方に、あたしは合わせるわよ」
「そうか。あとはボタンか」
「このボタンって、攻撃するボタンでしょ」
「一個だけ違うよ、この緑色のはね……」
俺の言葉に、杏那は首をひねった。
「ええっ、殴ったり蹴ったりするんじゃないの?」
「殴るのは赤、パンチ。蹴るのは黄色、キック。じゃあこれは?」
「うーん、なんだろ?頭突きとか?」
「違うよ」
「あっ、わかった。投げたりするんじゃない?」
「投げは……あとで教えるけど赤と黄色の同時押し。レバーの向きで投げも違うから」
「じゃあなんなの?噛み付き?肘打ち?」
「違うだろ、これ」
そう言いながら、俺は肘を立てて顔につけた。
「ほら、やっぱり肘打ちじゃない」
「だから、ガードだって。相手の攻撃を防ぐのに使う」
「ねえ……そんなことよりここに、カードを入れるところがあるわね。これは?」
「それか……カードを入れるところであっているよ。
プレイヤーの情報データを入れるカードで、あそこにある自販機で買うんだけど。
まあ、いらないよ。初めのうちは。
それより、杏那。そろそろお金を入れようか」
俺はそう言いながら、1P側に座っている杏那に百円を促した。
懐が潤う俺は、最初に師匠らしく奢ってあげた。




