087
夜、俺はまだゲーセンにいた。
だいぶ客も減り、そして俺は杏那の後ろに居た。
バイト終わりの杏那は、今日は私服だ。
白いオーバーウォールの杏那は、ズボンだ。
スニーカーを履いていて、カジュアルな格好で現れた。
「その格好でバイト……」
「違うわ、ちゃんと制服があるのよ。バイト先には」
杏那は『ユズ』を使っていた。私服でゲームをしていた。
「パン屋だっけ?」
「うん」
「大変だな」
「これぐらい、なんてことないわ」
杏那は疲れているだろうが、そんな表情を見せない。
そのまま杏那が操るユズは、楽にステージ7をクリアしていた。
「あー、最後か」
アーケードのラスボス、サイクロプス・改が出てきていた。
青い巨人は出てくるが、今の杏那では敵でもないだろう。
「でも、来週を空けるの?バイトのシフトはできそうだけど」
「そうか、来週はいよいよあの日だ!」
「あ、あの日って?」
「店舗大会」
「え?あれのエントリーは?」
「俺が代わりにしておいた」
「そうね……もうそんな時期なのね」
杏那は喋りながらも、サイクロプス・改を倒していた。
片手間でも充分倒せる杏那に、プレイヤースキルの成長を見せていた。




