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たった一ヶ月で初心者女子高生が格闘ゲームを極める話  作者: 葉月 優奈
七話:自信のつけかた
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乱入台、夕方だけどちょうど一セット空いていた。

杏那は奥に座り、歩美は俺のいる手前側。

一応杏那の情けもあるが、初めてやる歩美にやり方の説明をした。

歩美は、意外にも2D格闘ゲームをやったことがあるという話をしていた。


ゲーセンには慣れていないものの、それでも格闘ゲームをしている経験のある女子だ。

歩美にボタン操作と、おすすめキャラを教えて俺は離れた。

俺の立場的に今回は、どちらの味方もしないスタンスで見守ることにした。


(さて、杏那は勝てるだろうが……)

杏那がやっているところに、すぐさま歩美が乱入した。

歩美は俺の指示どおりに、『ユウト』を選んだ。初心者用のキャラで、性能もいい。

一方の杏那も『ユズ』で、メインキャラを使う。

そして、杏那と歩美の代理戦争?が始まった。


結果は予想通り、五分後に勝利の名乗りを上げたのは、

「あたしの勝ちね!」

乱入台の奥から、杏那の勝ちを喜ぶ声が聞こえた。

最初の一本目から杏那のペースで、歩美はぎこちない。

終始、杏那のペースで圧勝だった。

そして、俺の前では歩美が悔しそうな顔で椅子に座ったままだ。


「歩美……負けたら椅子をドくんだ」

「なぜですの?」

歩美は、信じられない落ち込みようだ。


「まあ、気持ちはわかる」クラスメイトが落ち込んでいるので、なんとか慰めようとしていた。

だけどライバルとして自分が認めている杏那に、完璧に負けたのはショックでしかない。

そんな歩美の表情が、今にも泣き出しそうな顔になっていた。なんだ、歩美は。


「お、おい、泣くな!」

「だって、だって、あんなに完敗するなんて……」

「まあ、杏那の挑発だ。あいつは結構練習もしていたし」

「でも、でも……」

だけどそんな歩美を慰める俺の傍らで、席に着いた奴がいた。

その姿を見て、俺は驚いた。

その椅子には、竜二が座っていた。もちろんカードを入れて、杏那に乱入していた。


赤く染めたヤンキーは、鋭い眼光でキャラを選ぶ。

もちろん得意のキャラの『カムチャット』ではなく、なぜかボクサーの『ジョニー』を選んでいた。


竜二の強さは、得意キャラではないが、杏那と比べ物にならない。

いきなり最強クラスの竜二に乱入されれば、杏那では歯がたたない。


そして、竜二は華麗に杏那のユズに、ポイント一つも渡さずに勝利を収めた。

それを、半泣きしている歩美はじーっと目に焼き付けるように見ていた。

泣き出しそうな涙を、拭いながら。



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