083
夕方、日課のゲーセンに行く。
今日は、杏那のバイトがない金曜日だ。
それはつまるところ、たっぷり練習ができるということでもあることだ。
だが、その出会いは最悪だった。
ゲーセンに入って、UFOキャッチャーエリアでそれは遭遇した。
「なんでいるのよ」
「あら、偶然ここに来ましてよ」
そこには、なぜか眼鏡姿の女である歩美がいた。
俺と杏那が一緒にいるときに、なんだかわざわざ歩美が待ち伏せているかのようだ。
「偶然じゃないでしょ、デコちゃん」
「あら、何をおっしゃっているのです?優等生のあんこ餅!」
「うるさいわね、デコちゃん、黙りなさいよ、デコちゃん!」
「あんただって、男嫌いのあんこ餅でしょ!」
傍から見ると、女同士がただ喚いているだけにしか見えない。
女同士の喧嘩は面倒で、うまく処理できそうもない。
俺は、適当にフェイドアウトしようとした。
「ちょっとあんた」そんな時、逃げようとした俺が歩美に呼び出された。
「なんだよ?」
「昼間見ていたの、あれ?何かしら?」
「あれ?『リアルファイター6』だけど」
「もしかして、このゲームセンターにそれがあるのかしら?」
「ああ、あるよ」
俺がちょっと言おうとしたとき、杏那が俺のそばで軽く肘打ちをした。
「ちょっと、和成っ!あいつに、つき合う必要ないわよ」
「え、でも……」
「あんこ餅、あんたは黙っていて。それより三下、案内してくれるかしら?
案内してくれたら、この千円あげるわよ」
やっぱり上からモノを言ってくるタイプだ。千円札をちらつかせてくる、俺は苦手だな。
「まあ、そこにあるんだけど」俺は、すぐ見えるビデオゲームのエリアの方を指さした。
「まあ、そうでしたの。ではごきげん遊ばせ」
「ちょっと、デコちゃん逃げる気?」
そんな時、歩美の腕を取ったのは杏那だ。
「ねえ、『リアルファイター6』は対戦ゲームだから勝負しない?」
「い、いいですわよ。歩美は、何をやってもあなたより格上だということを思い知りなさい」
杏那の挑発に、まんまと歩美は乗っかっていた。
杏那は悪そうな笑顔を見せていた。




