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次の日の昼休みになった。この日は、朝からあいにくの雨模様。
大雨というわけではないが、黒い雲から雨が降っていた。
ご飯を食べ終えた杏那と、合流した俺。
そして教室から、特別教室棟の方に歩いていく。
このあたりだと、人が余りにもいないから杏那は不安そうだけど構わず向かう。
そして、ある教室の前に止まった。それは普通の教室ではない。
ドアを開けた中には、パソコンがいっぱい置いてある部屋だ。
「これって、パソコン室?」
「ああ、パソコン室」
パソコン室は、パソコン実習で使う部屋。
ただ、授業以外にも生徒が休み時間使うことが認められていた。
一応アダルトサイトに繋がらないよう、学校側でプロテクトが掛かっているが。
俺と杏那は、空いているパソコンデスクに座った。
そのまま慣れた手つきで俺が、パソコンを立ち上げていた。
「パソコンで、一体なにをするの?」
「ネットに繋ぐ」
「ネット?」
「ああ、まあ見ていろ」
学校のパソコンは、アドレスとパスワードがあった。
授業で習ったアドレスとパスワードを入れて、ネットを繋いだ。
器用にマウスを使いながら、動画サービスのページにジャンプする。
「動画サービス?」
「たまにここに、来るんだよね」
「なにが?」
「この画面、見てくれ」
「これは……『リアルファイター6』?」
「そう、ゲーセンのモノと同じ動画。学校ですること無かったり、対戦で負けたりしたらここで画像を見る。
そこで、俺は自分の戦い方の見直しや、リーチや技のモーションを見る」
「へえ」杏那が感心して見ていた。
「これなんか、いいんじゃない?」
そして、次に見せたのが『ユズ』使いの動画。
相手は『デス・ストロング』と戦っている動画だ。
だけど、杏那はそれを見ながら首をひねっていた。
「あれ?あそこのコンボ……あんなの使うのより、最後『ユズスペシャル』使ったほうが良くない?」
「うんうん!」
その動画ではコマンドミスが、随所に目立つ。
「これって……」
「そう、でも乱入台で戦っている子だ。画面の奥の称号が『三段』だし、勝率も70勝93敗」
「結構長いことやっているのね、でも、なんだか勝てそう」
「そう、意外と画像で見ると強く感じないんだ。
だから、もっと自信を持って。自信なくなりそうなら、他のダメな人の動画を見て自信をつけて」
「そうね、ありがとう和成!」
だが、そんな杏那の声に反応してか一人の人間が近づいてきた。
ゆっくりと厳かに現れた、制服を着た背の高い女。
「あら、静かにしてくれません事?」
そう言いながら、俺の前にはロングカールで、眼鏡をかけて広いデコの女が現れた。
腕を組んで睨んでいる女は、冷たいオーラを放っていた。




