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たった一ヶ月で初心者女子高生が格闘ゲームを極める話  作者: 葉月 優奈
六話:間合いの時間
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『ドラツー』とは橋上 竜二のプレイヤー名。

称号は『覇王』。つまり『超絶神』の一つ下の称号。一見すると、単なる格下と思いがちだ。

だけど『超絶神』の称号は全国で三百人ぐらい、『覇王』は七百人しかいない。

つまりこれは、ある意味頂上決戦でもある。2280勝94敗の戦績は流石だ。


(そして、『カムチャット』か。この前は戦ったけど、修行したのかな?)

俺の『ファン・ジャンチー』と竜二(ドラツー)の『カムチャット』が戦いを始めた。


だが、その戦いは思わぬ苦戦を強いられた。

(くそっ、強くなっているのか)

最初の一本目は俺が奪ったが、カムチャットにペースを握られてしまう。

なんというか、カムチャットのキックが今日はよく当たるな。


ポイントは二対四、対戦は五本制だから王手をかけられていた。

(やばいな、強い!)

竜二相手に、俺が手を抜くことは絶対ない。

俺もガチでやっているが、カムチャットの先手先手の攻撃が決まって行く。

そして、最後に五ポイント目も抵抗むなしく取られてしまった。


(負けた……久しぶりに)

乱入台で負けると、俺のゲームは終わっていた。

カードを入れていたら、カードが出てきた。

その時に情報が書き換えられる戦績が、80敗を記録していた。


カードを手に、俺は速やかに裏に行く。

裏には予想通りというか、当然の如く竜二がいた。

ゲームをやったまま、自キャラのカムチャットを操っていた。


「竜二、強くなったな。久しぶりに負けた」はにかみながら俺が言う。

「いや、和成が弱くなったな」ゲームをやりながら口を開く竜二。

「弱くなった?」

「ああ、弟子なんかとったからじゃないのか?」

ゲーム画面を見ながら、竜二は厳しく言い放ってきた。

その言葉に、俺は眉をひそめた。


「それは違う!」

「いいや、お前の全体的な攻撃の間合いが悪い。

あんなに簡単な空振りはしない。わかっているんだよな」

「なんだ、分かっていたのか」

俺は、僅かな違和感があった。それは微妙な間合いのズレ。

ずっとユズを練習している杏那に、自然と合わせていた。

杏那に見本を見せるために、ユズの間合いがいつの間にかプレーに染みついていた。


「今までのままなら、俺は今度こそ勝つ」

ストーリーモードで、三人目の『ユウト』を簡単に撃破する。

「俺は、大会にエントリーしたからな」

そう言いながら、竜二はある一箇所を指差していた。

それは店のほぼ中央にあるカウンターの方だ。いや、カウンターの下に貼ってあるポスターを指差していた。



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