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たった一ヶ月で初心者女子高生が格闘ゲームを極める話  作者: 葉月 優奈
六話:間合いの時間
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杏那は道着を渡されて、更衣室に向かっていた。

俺は道場の隅で練習の邪魔にならないように、見学させてもらっていた。

相変わらず、子供でも空手の型に迫力があった。

時間は、朝十一時を過ぎていた。


「由人、昨日の今日でわざわざ頼んで悪かったな」

「まあ、暇だし。一応俺が講師役ということで、じーちゃんは忙しそうだから」

俺の親友である由人は、空手初段の強者だ。

小学校の時、市内の空手大会で小学生の部だけど優勝の実績があった。

そして、由人のおじいちゃんは長野県内でも有名な空手家らしい。

祖父は、長野県警にも空手の指導をしているほどだ。


「ああ、それでいい。ビシビシやってくれ。

あいつは、結構運動も得意らしいから」

「それは知っている、中学の時にテニス部だったんだろ。

知り合いの女子が、磯貝さんに憧れていたテニスの子もいたぐらいだからな」

「お前、相変わらず女子とは交友関係が広いな。まるでエロゲーの友人みたいだ」

「なんだ?その例えは?まあ俺は女子となら、いくらでもオッケー。

男子となら、三千円で手を打つけどな」

「金取るのかよ」俺は、由人に突っ込んだ。

由人は、冗談とばかりに爽やかに笑っていた。


「でも、本当に和成はゲームの師匠なんだな」

「ああ、ゲーム……『リアルファイター』の師匠だ」

「お前はゲーム、得意だからな」

「体も弱いしな、憧れていたのかもしれない」

「誰に?」

「由人……とか」

由人とは、小学校からの付き合いだ。

俺の学習机に封印してあるアルバムの中には、俺の写真はほとんどないが由人の写真は多い。

自分の体の弱さは、自分が一番よく知っていた。

それでも、自分の体の弱さを恨まなかった。


「そんな俺は、お前を憧れているけどな」

「え?」

「だって、磯貝さん、日曜なのに制服を着ていたし。

お前が自転車に乗せてこっちに来たってことは、お前、磯貝さんと一緒に寝ただろ?」

「寝ていないわよ」

そう言いながら、険しい顔で杏那が出てきた。

白い道着は、少し窮屈そうにぴちぴちだ。

特に胸元あたりが、張っていた道着を着ながら俺の方に向かっていた。



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