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俺が先頭で、道場の玄関に入った。
木目の靴箱に、石を敷き詰めた玄関。
日本家屋で、大きな石が積まれた庭園も見える。
「よく来てくれた、和成」
そして、俺らを出迎えたのは白い道着の男。俺がアポイントを取った由人だ。
サラサラの金髪だけど、汗を少しかいていた。
だけど俺が連れてきたもう一人を見ると、道着を着た由人が驚いていた。
「えっ、本当に磯貝さん?」
「よ、よろしくお願いするわね」
杏那は少し照れくさそうに、由人に小さく頭を下げた。
「まあ、上がって上がって。靴はそこに置いていいから」由人が、案内役をしてくれた。
俺と杏那は靴を脱いで、そのまま靴下のまま上がっていた。
由人が道場の中を案内する、爽やかな汗をかいていた。白い道着の首元には、タオルもかけていた。
そんな奥の部屋では、子供のかけ声が聞こえていた。
「おっ、やっているな」
そこは畳の部屋だ。白い道着を来た子供たちが、声を出しながら正拳突きをしていた。
「ここって、空手道場?」杏那が不思議そうに聞いてきた。
「見ればわかるだろ、そうだよ」
「なんで空手道場なの?」
「磯貝さん、ほんとうに体験入学するの?」
「え、ええ?」杏那は驚いていたが、俺は杏那の前に立っていた。
「ああ、杏那はバイトあるから……昼三時までしかできないけど、頼めるか?」
「うん、いいよ。女子の道着を、ちゃんと用意してもらったから」
「ええ!」杏那はやっぱり戸惑っていた。




