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たった一ヶ月で初心者女子高生が格闘ゲームを極める話  作者: 葉月 優奈
六話:間合いの時間
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母親が戻り、俺と杏那は出かけた。

昼間は、やはり暑い。制服に着替えた杏那を荷台に乗せ、俺と一緒に秋の道を進む。

それでも木々は、まだ青い。日も高くて暑い。


「九月というのに、クソ暑いな」

「どこに行くの?」

「いい場所、今のお前に必要な場所」

「あたしに必要な場所?」

「もう始まっているけど、そういえば杏那」

「何?あっ!」

杏那はそう言いながら荷台の上で、ある看板を指差していた。


「ああ、三浦会病院の看板か。

この道を左に行くと国道があって、その手前に昨日言ったショッピングセンターがある」

「そうなのね、でも今はないでしょ」

「うん、ない。だからあそこの学校近くのゲーセンに行くわけだし」

「結構遠くない?」

「上田の方もゲーセンあるけど、あっちは『リアルファイター6』なくなったからな。

というかビデオゲームは全滅で、プリ機はまだかろうじて残っていたけど」

「そっか、いろいろ大変なのね」

「でも、学校近くのゲーセンは優秀だよな。

あそこは広いし、大きいし、入りやすいし、学校にも近い」

「それ、関係なくない?」

「あの辺、駅も近いからよくほかの学校の生徒も来ているし。

あっ、そういえば杏那!」

「なに?」

「お前って、運動得意だよな」

「そうよ、あたしはこれでも中学の時はテニス部だったし」

久しぶりに自分の得意分野の話が来て、胸を張って自慢げに話す。


「成績はどうだったんだ?」

「これでも、県大会優勝したわよ。二年のダブルスだけどね」

「すげえな、テニスって見た目以上に体力使うって本当か?」

「当たり前でしょ!」

「でも、高校ではテニスは……やらないのか?」

「バイトしないといけないし、部活はやらないの。先輩に、誘ってもらってもいたんだけど」

「いいな、俺は体が弱いしな。ちゃんと運動できるようになったのは、中学だからな」

「体が弱いのなら、オーバーワークは絶対にダメよ!」

その割には俺が自転車をこいでいる、小学校時代の自分では考えられないことだ。

大通りから、細い路地に入っていく。そして、俺たちはある家の前についた。

家の前には、たくさんの自転車が止まっていた。


「わかっているって、着いた」

「ここって?」

「ああ、見ての通りだ」

それは、どこにでもある一軒家。

ただそこには、普通の一軒家にはない看板『雪樵(せっしょう)流空手道場』と書かれていた。



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